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使命の槍と宿命の刀  作者: 里見レイ
坂本

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52/153

守るべき人

お待たせしました。

「だあ......!」


 銃弾は、既にダメージを受けていた秀介の右肩に直撃した。


「誰だ? 背後から銃撃するという卑怯者は!?」


 リョウが射撃者を問いただす。


「信長様をお守りしろー!!!」


「浅井長政を討ち取れー!!!」


 次々と現れる織田の鉄砲足軽。


「待てお前ら! 今僕は彼と和睦交渉を終わらせたところだ。銃撃をやめろ」


「信長様、それは甘うございます。敵大将をみすみす逃しては、織田の名が汚れますぞ!」


「責任はわしらがとる! お主らは構わず撃てー!!!」


 二人の足軽大賞の指示に従い、次々と銃弾が撃ち込まれていく。


「な、成川......」


 致命傷は今のところないが、確実に秀介の命は刻限に迫っていた。


「やめろ! このままでは信長包囲網と和睦できなくなる! お前らが死ぬ確率も上がるんだぞ!」


「信長様のためならば、この命何回でも捨てましょうぞ!!!」


「我らは信長様のためにある存在じゃー!!!」


「おー!!!」


 彼らの忠誠心は主の感情を超えて未来の主を見据えていた。銃声の数が時を追うごとに増えていく。


「......成川、さすがのカリスマぶりだな」


 遂に、秀介は地面に倒れこんだ。


「井田! くそ、僕はどうすれば......」


 歯ぎしりをするリョウ。家臣と友、どちらを優先するべきか決めかねているのだ。


「今だ! 奴の首を掻きとれ!!」


「ウオー!!!」


 足軽大将の掛け声に従い、兵は刀に持ち替えて突撃を開始する。

 もはや、秀介の命運は尽きたと思われた。

 しかし。



「父上は死なせない!!!」


 突如、いくつもの矢が織田兵に突き刺っていく。傷は深くないはずなのに、バタバタと倒れていく織田の足軽たち。


「父上、発が来たからもう大丈夫」


 叶と行動をしていたはずの発が一人で救援に駆け付けたのだ。


「は・つ? お前、その矢は......?」


「母上に教えてもらった毒草を作った弓矢に仕込んだ。父上が危ないって母上が言っていたから」


「ここにいると、わかったのは?」


「銃声と父上のうめき声を発が聞いた。父上の場所くらいすぐにわかる」


 発は秀介の問いに答えながらも、絶えず矢を放っていき織田の兵を倒していく。 


「鉄砲に持ち替えろ! まずあの小娘をハチの巣にしてしまえ!!!」


 足軽大将は、まだリョウの指示に従わず戦いを続けている。


「逃げろ、発。お前は、まだ、助かるはずだ......」


「父上を小谷に返すまでそばから離れない。娘としての意地」


 発は秀介の提案を受け入れずに堂々と鉄砲に立ち向かう構えを見せる。


「けど、鉄砲相手じゃ敵わないだろ!」


「それでも、父上を見捨てられない。娘の情。目の前の織田兵、一人残らず殺す」


「......」


 秀介にリョウと否応なく戦う発を止めることはできない。かといって、このまま織田と戦えば和睦の道は消え失せる。当主として、父として、友として、秀介の思いは揺れ続ける。


「くっ!!!」


 不意に聞こえるのは発のうめき声。彼が顔を上げてみると、胸元から血を垂らしている娘がいる。


「発!!!」


「ち・ち・う・え......」


 発は秀介をかばうように倒れこむ。このままでは彼女のほうが先に息絶えるだろう。


「ま、待ってろ。すぐ助けるからな! お前を絶対に死なせはしない!!!」


 娘の危機を認識した秀介は、最後の力を振り絞って立ち上がり、槍を手に取る。


「ははははは! この体で我ら魔王織田軍と戦おうとするとは! 浅井長政は本物の愚か者よな!」


「せめて少しだけ相手してやろう。奴も武士として最低限の体裁を保たねばならんからのう!!」


 完全に侮蔑の表情を浮かべる二人の足軽大将。形勢は火を見るより明らかだ。


「貴様ら、ぶちのめしてやる......うああ!!!」


 気合いの声を上げ、槍を振り上げる秀介。その時、変化が起こった。


「い、井田? 腕が、青白く光ってるよ!?」


 リョウは秀介の体の変化にいち早く気付く。


「お前ら全員、地獄に落としてやらぁ!!!」


 秀介が槍を地面に突き刺した直後。


「あ......」


「な......」


「え? 僕の部下たちが全員......」


 リョウのすぐ隣で、織田の兵たちが一瞬にして氷漬けの躯へとなり果てた。

ペースは落ち続けると思いますが、その中でも意地で進めていこうと思います。

里見レイ

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