再出陣 秀介サイド
どんどん行きます。
「心配をかけたな、皆の衆!」
小谷城城門前、秀介は、約一か月ぶりに兵たちの前に姿を現す。
「先の戦では、我は魔物により命を落としかけた。しかし、今は違う! 我はこの一か月の昏睡の果てに魔力に対抗しうる体質を得たのだ! これにより、我らはもう邪悪な魔物を使う織田軍には負けはしない! 我とともに、勝利を掴もうではないか!!!」
『おーーー!!!』
空気がひび割れるかのような歓声が城内外にこだまする。
「目指すは信長の首だ! さあ、歴史に我らの名を刻もうではないか! いざ出陣!!!」
姉川の戦いから約一月後、浅井軍は総勢四万の大軍勢を連れて小谷を出立。その半分近くは、地元の義勇兵たちである。
「秀介様」
突然、秀介の後ろから声がする。振り向くと、妻の叶がいた。
「......何用だ? まさかまだ織田に降伏しろと言ってるんじゃないだろうな?」
二人は、初めて会った時にこの件で大揉めした。以来、本来は夫婦であるにもかかわらず、仲が悪くなっている。
しかし、続く言葉は思いもよらないものだった。
「この戦、私たちにも同行させてください」
「わ、私たち!? 同行!? 何言ってんだ!!?」
何から何まで言っている意味が分からない。
妻を戦に連れていくなど完全に常識外れ。それに、あと誰がついて来ようとしているのだ。
「長男、満腹! 父上と生死を共に!」
「長女、茶々子! 父上と出陣しまーす!」
「次女、発。発の作った武器使ってほしいです」
先日、未来の重臣に育てるべく引き取った三人の幼子たちだ。彼らもこの戦について来るつもりらしい。
「お前ら! 遊びに行くのではないんだぞ!! おーい、高虎!」
秀介、慌てて連れ戻そうとするべく、側近の高虎を呼ぶ。
「長政様、義勇兵の中には女子供も混ざっているそうです。奥方様を連れていけば、士気はさらに上がると思いますよ」
どこからともなく現れるや否や、叶たちの意見を採用すべしと発言する高虎。
「長政様......」
叶が秀介の手を取り見つめる。
鼓動が急に跳ね上がるも、急いで平常心に戻す秀介。
「これは私の戦いでもあります。私なりの答えを、この戦で見つけ等存じます」
叶の眼はあくまで真剣である。
私なりの答えとは、秀介に言った「私なりのやり方」に関することなのだろう。つまり、これで叶が秀介の敵になるか否かが決まるということだ。場合によっては、まだ聞いていない叶の名字を聞くことができるかもしれない。
「分かった。ただ、無理はするなよ。お前らに死なれるわけにはいかないのだからな」
叶の提案を受ける秀介。おまけとして子供たちがついて来るのが心配だが、まあ仕方がない。
(お前のその表情、どことなくあいつに似ているな......)
さあ、戦がまた始まろうとしている。
ボチボチ叶の伏線を回収し、秀介に叶の名字、成川を伝えたいです。お楽しみに。
里見レイ




