01話 はじまりの日
山と主張するには些か小ぢんまりとした、田舎ではよく見かける私有地の小山。
その見渡す限り杉が植え尽くされた人工林の中を、ひたすら分け入る少年の姿があった。
彼は、腰の高さまで伸びる藪を掻き分け、視界を遮る小枝をナタで打ち払いながら、年齢に相応しい軽快な足取りで山道を奥へと進んでいる。
服装はTシャツに長袖の上着、そしてジーンズにスニーカーという、大よそ登山には似つかわしくない格好だった。
しかし彼にとって、この杉山は庭にも等しい慣れ親しんだ場所だった。
ただ唯一の誤算は、この杉山が造園技師の造った庭では無く、自然の山だった事だろう。
早朝に騒いでいたカッコウが完全に鳴き止んでから、既に数時間。
木漏れ日が地上をじわじわと温め続けた結果、少年にとっては上着一着分ほど、気温の見積もりに誤差が生じていた。
「あーつーい」
彼の目的は、小木を一本伐採して持ち帰る事だ。
今更引き返すのは遅きに失しており、上着を脱いで片手を塞ぐ事も得策ではない。
結果として少年は我慢する事を選択し、暑さを嘆く声が静寂の杉山に虚しく響いた。
この杉山は、かつて日本で電柱が木製だった時代に『お上のお達し』で大規模に植えられた、田舎に数多ある人工杉山の一つだ。
当時の日本では、電柱が杉だった。そして国中に電柱を立てて定期交換するためには、膨大な杉の需要が見込まれていた。
杉を電柱用に育てるためには、数十年の時間が必要となる。そこで当時のお上は、長期的な視点から杉山を増やすようにと指示を出した。
現代でも行政の指導には強い力があるが、戦前は現代よりも遥かに大きな強制力が働き、多くの人々が国の指示に従った。
しかし、コンクリート製の電柱が登場した事で、従った人々は頭を抱える事になる。
電柱という最大の需要が消失した結果、使い道の無くなった杉が国中で大量に溢れ返ったのだ。これほど大規模に需要と供給が逆転した例は、当時の日本で他に類を見ない。
土地は所有するだけでも税金が掛かる。かといって土地を活用するために杉を売ろうにも、足元を見られて伐採だけでも大赤字だ。
そのように無価値どころか、関係者が押し付け合うようになった田舎の杉山に、人の寄り付こうはずもない。
そして少年は、誰も寄り付かなくなった杉山では、絶滅危惧種に等しい希少な入山者だった。
なお絶滅危惧種の個体名は、堂下次郎という。
いくつかの杉山と同時に頭も抱える、現所有者の内孫だ。
「イノシシでも良いから、獣道でも作ってくれよなぁ」
杉しか植えられていない人工林では、イノシシすらも寄り付かない。
彼は野生動物が縦横無尽に杉山を駆け巡ると言う、可能性の皆無な妄想で気を紛らわせながら、目的物を探して山奥へと分け入った。
彼が住む七村市は、自他共に認める田舎の山中県でもさらにど田舎の市だ。
人口は、市を名乗るために必要な五万人を割り込んで久しい。
市民生活を支える主要産業が存在せず、市民の大半は片道一時間から二時間ほど掛けて、隣市や県庁所在地のある市まで出稼ぎに行っている。
市民病院も赤字経営が続き、民営化された。急患は救急車で隣市に搬送されるようになったが、職員の大半は市役所へ異動して人件費が削減されず、市民の不信を買っている。
七村市の電車も、山中県に新幹線が来て普通電車が各市へ移管される流れになった時、維持できないため電車はいらないと七村市は拒否した。それを聞いたJR側が、我々には社会的使命があると維持を決断してくれた結果、辛うじて動いている有様だ。
人が減り続け、主要産業が無く、患者は隣市へ丸投げされ、社会的使命も放り投げる。それが次郎の暮らす七村市だ。
そんな七村市の凋落を顧みるたびに、次郎は居た堪れない気持ちになる。
彼は未だに中学二年生だが、彼の実家である堂下家は、七村市が七つの村だった時の村長家の一つで、明治時代に七つの村が合併して七村町になった時は初代町長も務めた。
そして堂下家は、結果として市に何も残していない。それどころか足を引っ張ったのではないかとすら疑っている。
その酷評には、彼なりの根拠もある。
それは、彼の実家が所有する大きな三つの山だ。七村市三山町という地名の由来にもなった三つの大山は、お上のお達し通り残らず杉山と化し、現在も子孫たちの足を引っ張っている。
不良債権どころか赤字物件である事が明白にも拘らず、代々の堂下家当主たちは杉山を無為無策のままに放置し続けてきた。
次郎の祖父に至っては、相続税代わりに山の一部を物納しようとして税務署に拒否されて「努力はしたが結果は駄目だった」という大義名分を得て満足している節がある。
そしてその行動規範こそが、現在の七村市の「何もしない事なかれ主義」の市政の縮図でもあった。
堂下家が代替わりしない限り、この杉山には誰も立ち入らないだろう。
唯一の例外である次郎も、隣市に住む親戚が祭りで使う小木を分けてくれと頼んだ時に伐採に入る程度だ。
以前は次郎の兄である一郎が伐採していたが、次郎が中学に上がって以降、弟に役目を譲っている。
「手頃な太さの木、丈は次郎より高くて、枝が一杯あるやつ。ただし台車で路地に入る時に引っ掛からないくらいの横幅で……」
次郎の親戚が依頼したのは、祭りで牽く台車に挿す小木を『一本』だ。
祭りには笛や太鼓の音が欠かせないが、太鼓は人の手で持ち運びながら打ち鳴らすには重すぎるため、台車に乗せて牽く必要がある。
そのため無骨な台車が祭りに相応しくなるよう、側面に紅白の幕を張り、小木の枝に同じく紅白の色紙と紙縒りで作った花を結び、桜を模して鮮やかに彩るのだ。
祭りは五月の子供神輿と、九月の獅子舞で年二回。
但し小木は使い回すため、依頼されるのは二年に一回程度となる。そんな依頼によって、二年に一度くらいは、この山にも小木一本分くらいの価値が生み出される。
そのため次郎としては、見繕った中で一番良い小木を渡すつもりだった。何しろその小木には、杉山全体の二年分の存在価値が掛かっている。
そう考えながら山に深入りした次郎は、不意に出現した光景に思わず歩みを止めた。
「穴?」
藪をかき分け、小枝を打ち払った細道の脇に、黒い洞穴が大口を開けていた。
横幅は車三台が並ぶ程に広く、高さは目算で次郎の身長の二倍にも達するだろうか。
だが次郎が最も目を引いたのは、杉山と大口との境目だった。
茶色い山肌が、膝丈ほどの段差を境目として、灰色の岩壁に姿を変えて奥まで続いている。加えて灰色の床面は、コンクリートを流し込んで固めたかのように、平坦で凹凸が見られなかった。
それはあたかも、自然物と人工物との境界線であった。
次郎は第二次世界大戦中の防空壕を想像し、即座に否定する。
仮に防空壕であるなら、由緒正しき地主の家柄という謎のプライドを持つ父親が、次郎に対して賢しげに何度も語って聞かせているはずだ。そんな自慢話を一度も聞いた記憶が無い以上、これは第二次大戦中に造られた防空壕ではない。
だが大戦前の古い洞窟であるなら、それこそコンクリート製ではないだろう。そんなものが昔からあれば、木製電柱を目的とした杉山など作られなかった。
「……よっと」
いつ誰が作ったのか想像も付かなかった次郎は、中を確かめるべく段差を降りて、灰色の床上に立った。
靴と靴下越しに、山肌に比べて固い感触が足裏へと伝わってくる。
次郎はその感触を確かめるように、何度も足踏みを繰り返した。
「土じゃなくて、石っぽいな」
軍手を外してナタを脇に置き、しゃがみ込んで灰色の床面に指先でそっと触れる。
床は表面がザラザラしており、指先には細かい砂のような物が付着した。その指をこすると、パラパラと砂粒のようなものが落ちていく。
想像していたコンクリートとの微妙な差異に首をかしげる次郎だったが、結局それ以上の事は分からなかった。一応臭いも嗅いでみたものの、周囲の木や土の臭いが強すぎるせいか、嗅ぎ分ける事は出来なかった。
ごく一般的な中学生である次郎にとって、調べる手段はさほど多くない。
次いで思い付いたのは、砂粒を嘗める事だった。この地で生まれ育った次郎は、この山や周囲の畑の土なら多少は口に含んだことがある。
小学生の低学年頃であれば、躊躇わずに嘗めただろう。しかし中学生となった次郎は、暫く葛藤した後にそれを最終手段として取っておく事とした。
その代わりに床に置いていたナタを無造作に掴むと、地面に向けて軽く振るった。
カツンと乾いた音が洞窟内に響き、ナタが反動で弾かれる。
叩いた白い床面には僅かに傷が付いたが、引き換えに得たのは床が土では無かったと言う確信くらいである。
手持ちの分析手段が尽きた次郎は、洞窟の奥へ進む事にした。
車三台が並んで通れる坂道を下る。横穴に比べて傾斜の分だけ陽光は届きやすいが、それでも十数メートルほど進むと随分と薄暗くなった。
光源無しでは先へと進めなくなった頃、ようやく勾配が無くなった。
薄暗い洞窟の内部は平坦で、入り口よりも遥かに広がっているようだった。しかし地上の光が殆ど届かず、あたかも深淵の縁に立っているかのような感覚に襲われる。
「お前が深淵を覗く時、深淵もまたお前を覗いているのだ」
次郎はニーチェの詩の一節を呟き、言い知れぬ不安を誤魔化そうと図った。
だが内容としては不安に拍車をかけており、それを覆すほどの心理的な余裕も無かった。
光源が無い以上、暗闇の中で先に進むことは無謀極まりない。進行を断念せざるを得ないのは明白だが、ここで踵を返す事は逃げ出した様で悔しくもあった。
未練がましく洞窟内を見渡したところ、僅かに届いた光が地面に転がる小石に反射し、緑の煌めきを放つ瞬間が視界に入る。
怪訝に思った次郎は、地上の光が届かない世界へと一歩足を踏み込ませる。
刹那、天井から何かが降ってきた。
「うわああっ!?」
僅かな羽ばたきが聞こえた刹那、咄嗟に振り上げた次郎の左手と何かがぶつかった。
強く掴まれたような感覚から、先端が食い込んでくる感覚までが瞬く間に伝わってくる。それと同時に、ぶつかった衝撃で身体が弾かれた。
次郎は叫び声を上げ、衝撃に耐えると同時に反射的に身体を捻り、さらには左腕を必死に振り払った。
「ギギギギッ」
深く食い込んだ何かが、左上腕から外れない。
振るわれた左腕に、黒い影がしっかりとしがみ付いている。
二度、三度と腕を振るう間に見えた何かは、猫ほどの大きさと重さだった。猫と異なるのは、その生物に翼がある事だろうか。顔もコウモリのように不細工で、鳴き声も不気味だ。
地元民の次郎と言えど、これほど巨大で人を襲うコウモリは見た事も聞いた事もない。
こんなコウモリが人類社会を飛び回れば、即座に駆除対象であろう。
「ふざけるなっ」
巨大コウモリっぽい何かに咬み付かれた次郎は、恐怖心と嫌悪感を同時に覚え、それらを怒号で掻き消した。
代わりに生まれたのは怒りである。あるいは闘争心と呼ぶべきか。
それらを以て、先程まで必死に振るっていた左手の動きを止め、しがみ付く巨大コウモリと仮定した相手に右手のナタを何度も叩き付けて反撃を始めた。
重音が響く度に巨大コウモリの皮膚が裂け、それを十数度も繰り返すうちに傷口は骨にまで達した。その骨は何度叩いても折れないが、血飛沫だけは相応に飛び散り続ける。
反対に次郎がナタを振るうたびに、食い込んだ巨大コウモリの爪も左腕に強く食い込んだ。そうやって繰り返される痛みは、やがて痺れへと至った。痛覚は麻痺したが、生存本能だけは生命の危機を繰り返し訴える。
次郎が反撃を中断しても、巨大コウモリが攻撃を止めるとは思えない。むしろ一方的に攻撃を受けるだろう。そんな巨大コウモリのテリトリーに入った事が悪いのか。
この杉山は登記簿上、次郎の祖父である堂下哲雄の土地だ。
ただし、巨大コウモリ側のルールでは、コウモリの住処になっているようである。
次郎から見れば、コウモリによる土地の不法占拠。そしてコウモリから見れば、武装した人間による住処への不法侵入。これでは互いに歩み寄れるはずも無い。地球上で争いが絶えないのも道理である。
「この土地から出てけや!」
今ここに、行政に見捨てられた杉山を巡り、人類と巨大コウモリによる互いの生存権を掛けた全面戦争が勃発した。
もっとも戦いは既に最終局面に入っており、次郎は肉を切らせて骨を断つような攻撃の繰り返しで、痛み分けと言えるほどには相手方にダメージを負わせている。
左腕と言う戦闘に支障のない部位を封じられただけであった点や、引き換えに右手でナタを振るえた点も良かったのだろう。出血量が同じでも、体重の分だけ次郎が有利だった。
ナタを振るう回数が数十度に及んだ時、巨大コウモリの爪から力がようやく抜けた。そこで咄嗟に左腕を振るうと、ついに巨大コウモリの身体が床へと落ちていった。
コウモリの左翼は半ばで折れており、全身は血塗れだ。
しかし巨大コウモリは、右の翼と折れた左の翼を羽ばたかせ、必死に逃げようと図る。
そんな巨大コウモリの背後から、頭部に目がけてナタが振り下ろされた。
「ギイッ…………」
甲高くも短い、戦いの終わりを告げる断末魔が鳴る。
力強く振るわれたナタが頭皮を切り裂き、さらには頭部に衝撃を与えてさらなる出血を強いたのだ。
それでもナタは振り上げられ、既に大きく裂けている背中へと突き立てられた。
次郎からしてみれば、猫サイズにという体格に全く見合わない、巨大コウモリの恐るべき頑強さと体力に困惑せざるを得なかった。昆虫などを除くと生物を殺害した経験が無く、躊躇いから非効率な攻撃を行った事を加味してすら、コウモリの身体は硬過ぎた。
次郎は念のため、地上で痙攣しているコウモリを踏み付け、背部に付き立てた刃先を掻き回しながら臓器を破壊する。その瞬間、刃先が体内の何かに当たってコウモリが激しく跳ね上がった。
するとコウモリの身体から完全に力が抜け切り、全く動かなくなった。
「ようやく終わったか」
コウモリが動かない事を確認した次郎は、ようやく緊張を収めて溜息を吐いた。
ついでナタを無造作に引き抜く。すると刃先に弾かれたのか、体内から血塗れになった緑色の小石が一個転がり出てきた。
「そもそも俺って、なんでここに来たんだよ」
その自問を皮切りに、次郎の中で疑問が百出した。
この洞窟を作ったのは誰で、目的は何なのか。左袖が裂かれた上着はどうすれば良いのか。返り血はどうやって洗い流せば良いのか。そして左腕の傷はどうするべきか。
そんな様々な思いと共に、次郎は巨大コウモリの身体から飛び出した緑色の小石を右手で拾い上げた。
その瞬間、次郎の身体に何かが流れ込んで来る。悪寒が全身を駆け巡り、まるで雪山に軽装で放り出されたかのように身体が震えた。さらに早鐘を打ち鳴らすように、心臓がガンガンと激しい鼓動を繰り返す。
「痛だあぁっ」
腎臓が締め付けられるような痛みを覚えた次郎は、一度掴んだ緑石を咄嗟に放り捨て、代わりに上着の胸辺りを掴んで、灰色の床を転げ回った。呻り声を上げながら荒い息を吐き、心臓付近の痛みを静めようと楽な体勢を模索して、必死に床を蠢く。
今この場に新手のコウモリが現われたならば、とても戦えるような状態ではない。背中や頭部、あるいは右手に絡み付かれるだけでも、左腕だった先程より遥かに不利となるのだ。まして現状では、戦闘どころか逃げる事すら不可能だ。
次郎は危機的状況になんとか声を抑え、必死に痛みを耐え続けた。
幾許かの時間を費やし、汗でべっとり張り付いた上着が気持ち悪いと感じられるくらいには、心の平静を取り戻すに至る。
そして次郎の眼前には、さらに新たな問題が二つも発生していた。
一つ目は、コウモリの体内から出た小石。
次郎が掴んだ時は緑色だったが、ふと気付けば洞窟を染め上げる床面や壁面と同じように、色褪せた灰色に変わっていた。
そして二つ目は、完全に意味が分からない現象が起きている事。
次郎の正面に、真っ白な背景と黒い文字が浮かび上がっていたのだ。
堂下次郎 レベル一 BP一
体力一 魔力一 攻撃一 防御一 敏捷一
火〇 風〇 水〇 土〇 光〇 闇〇
次郎は文字を凝視しながら、呆然と固まった。
思考停止に陥った次郎をあざ笑うかのように、BP一という部分だけが、いつまでも点滅を繰り返す。
一体どれくらい、茫然自失としていただろうか。
次郎は時間経過と共に落ち着きを取り戻し、深呼吸してから仮説を立てた。
この空間投影を行う技術は、現人類の技術力では再現不可能だ。ならば未来人や宇宙超文明、あるいは神などの何れかが行ったのだと仮定する。
なぜその様な事をするのかという問題を棚上げし、現実に現われた表示内容だけを素直に解釈すれば、表示は次郎自身を表していると思われる。
現状に至った原因は、巨大コウモリを倒して、その体内から飛び出した石を掴んだ事だろう。おそらくコウモリを倒した事で、レベルが〇から一になったのだ。
すると点滅しているBP一は、もしかするとボーナスポイントの略ではないだろうか。レベルそのものがあるとすれば、レベルが上がると能力に加算できるボーナスポイントなども有り得るだろう。
その表示に触れて良いのか悪いのか、相手の意図が不明なため判断できない。しかし能力が上がるのであれば、基本的には歓迎すべき事だろう。
次郎は、新手のコウモリが出現する前に、この場を立ち去りたいという思いもあった。しかし割り振らずに移動して、ボーナスポイントが消える可能性も完全には否定できず、その場合には能力を得られる機会をふいにした事を後悔しそうだった。
本来の次郎は選択前にじっくり検討する性格だが、現状では諦めざるを得なかった。
(レベルが何度も上がると仮定すれば、コウモリを倒し易くなる力が良いか?)
次郎は攻撃か防御辺りに振ろうかと思い悩み、逡巡した後に回復魔法が使えそうな光に振る事にした。
中学生としては、倒しやすさの前に母親への言い訳である。
左腕の傷を詰問されて、洞窟への立ち入りを禁止される事は避けなければならない。
決断した次郎は、指先を青く点滅するポイントの一部分に右の人差し指を合せ、それを光〇という部分に引っ張った。
加えて目力と意思で、光に行けとも念じる。
すると青い光が次郎の指先に移り、光〇という表示部分に移動して数字が変化する。
堂下次郎 レベル一 BP〇
体力一 魔力一 攻撃一 防御一 敏捷一
火〇 風〇 水〇 土〇 光一 闇〇
ポイントを割り振った後、表示自体が薄らぎ消えていった。
「………………はぁ」
次郎は、深い安堵の溜息を吐いた。