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龍人転生~苦労の絶えない異世界道中~  作者: 白玉蛙
六章 ベクトリール
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新たな敵

投稿遅れてしまい、申し訳ございません。

「ふぅ……お待たせ。どう?」


「これで二人目だ」


  用足しを終えてグレイ達と合流した俺は、そう言いながら兵士の意識を奪っているグレイを見て「二日も何も食わずにいた筈なのに単独で二人倒すとか、やっぱ若いって良いな」とか呑気に思いながら、状況把握を行(おこな)った。


(ルシア、向こうの状況は?)


『扉から三メートル後方で二名、会話をしています。恐らく戻ってこない仲間から、我々が脱走した可能性を考えているのでしょう』


「だとすると早めに行動した方が良いね……。よし、三つ数えたら突撃するよ。グレイは右の敵をお願い」


  情報が拡がる前にできるだけ数を減らしたいというのがあったので、速攻で突撃に踏み込んだ俺。

  とはいえ、この場所で待機をしていたとしてもいづれは見つかるので、やるのなら手っ取り早く終わらせてしまいたい、というのが本音だったりする。


「は? 右って突然「一、二の……」」


「三……GO!」


  合図と共に扉を勢いよく開け放ち、兵士達に奇襲を掛けた俺達。


「ッ! 子供冒険ぶごっ!?」


  俺は部屋に入るなり話し込んでいる兵士の一人の顎へ拳を命中させた。

  兵士は脳震盪を起こしたのだろう、数歩よろめいて膝を着き、そのまま倒れた。


「ギルドの奴まで出てぎュ!?」


「出てきて悪かったな。寝てろ」


  そんな俺の攻撃を見て怯んだのだろうもう一人の兵士に、グレイが跳躍で距離を詰めてラリアットの要領で捕縛、そのまま兵士を締め上げた。

  グレイに頚動脈を圧迫され、数秒足らずで為す術無く落ち(気絶)た男。




『この先は左右に広がる廊下となっております』


  ルシアナビが部屋の外の簡易マップを脳内で表示してきた。


  ちなみにこのマップ、俺は軽々しくルシアナビとか呼んでいるが、実はかなり凄いものだったりする。これは【音響探知】と【魔力探知】という技能(スキル)の併用でルシアが周辺を探知、位置や距離を計算して作られたマップなのだ。

  それが脳内で、リアルタイムで変化するのだから凄い。現実でアクションゲームをしているような感じである。


  ……と、話題がそれてしまった。


(トイドルの部屋は?)


『此処を出て左側、西方面の部屋だと思われます……が』


  そこで考えるように黙ったルシア。

  確かにルシアの言った部屋は二重構造で隠されており、その中には人影が見える。ほぼ確実にトイドル本人だとは思うが、何か問題があるのだろうか?




『同じ部屋にもう一名、強力な魔力を発している人物がいます』


(強力な魔力?)


  脳内マップにはそんな人物は映っていないが……。


「どうした?」


「……なんでもない。それよりこの先、左の部屋にトイドルがいるみたい」


  俺が考えても仕方無いし分からないな、と詳しい事はルシアに全投げして、少し開けた扉から通路の様子を伺いグレイ達にそう言った。


「……さっきも思ったんだが、どうやって外の状況を探ってるんだ?」


「技能(スキル)を使ってチャチャッとね……それより来るよ。わりと大人数」


  ルシアが教えてくれてますとは流石に言えないので、そう適当に誤魔化した俺。

  まぁ殆ど事実であるので問題無いだろう。


「ちっ、騒動を聞きつけて来たか。下がってろ」


「いや、この人数だと押しきられるかも……。グレイはライムと交代して」


「ん」


  一度に五、六人との戦闘を強いられるだろうと推測し、その場合だとグレイでは複数人の相手は荷が重いと判断。俺はグレイに後方支援を促した。


「……いやいや、その方が危なくないか? 子供だぞ」


「俺も子供だよ?」


  勿論中身は普通に成人だが、とは言わずにそう茶化した。


「ライムは俺より強いんだし、心配する必要は無いよ」


『……今はファルより弱い』


  そうは言うけどね、ライム。俺は未だに君との模擬戦で勝った事が無いんだよ?

  命の懸かった何でもありの勝負とかならば、確かに今のルシアになら勝てるとは思うが、個人的にはそれでは納得できないのだ。

  なんというか……勝つならしっかりと勝利をしたいのだ。


「……っと、雑談してる場合じゃ無いね。テスっ」


「ふぇっ? とわっ!?」


  扉に張り付いて飛び出すタイミングを窺っていた俺の声に反応したテスは、俺の投げたものを見て慌ててキャッチした。

  何を投げたかって?




「お前にルシアを預ける。もしもの時は兄貴を守ってくれ」


  そう、ルシアである。勿論投げる際には斬れないようにルシアを変化させたが。



「おま……テスに何渡してんだっ」


  端から見ると凶器を渡しているようにしか見えなかったのだろう。グレイがずんずんと近付いて凄んできた。


「大丈夫、斬れないようになってるから」


「だからって……」


「自分の身は自分で守るって言って来たんだ。心配しなくても大丈夫だぜ、兄貴」


  とてもやる気を滲ませた様子のテスがグレイにそう説得する。

  俺としてはもう既にルシアの存在を知っている(らしい)テスならルシアをぞんざいには扱わないだろう、というのと、そんな話せるルシアが近くにあるなら少しは気を和らげられるだろうという判断からである。


「心配なら、テスにそれを使わせないように頑張れ」


「……今の音は何だ!」


「……この部屋からって事は、まさか子供冒険者が……」


  と、今の物音を聞きつけて早くも兵士達がやって来たみたいだ。扉の向こうから走るような音と共にそんな喋り声が聞こえてきた。


「っと、雑談はここまで。やるよ」


「……数人なら討ち漏らししても問題ないからな」


  グレイがとても心配そうにそう言った。

  だけら大丈夫だって、少なくとも『前』から来た兵士達は片付けるから。






「ほっ……と!」


「いたぞ! あそこ「右にいるぞ!」へっ……ぶっ!」


  どういう訳か剣を使おうとしない兵士達を、ライムと二人でボコボコにする事数分。

  長い通路には複数人の兵士が俺達の通った道をなぞるように倒れている。


「思ってたより少ないな……隣の扉から三人来るよ!」


「何でお前は「ぶぐっ!」その状態っ、でっ「がふっ!?」わっかんだよっ「何事(なにご)どっ!?」……化物か」


  どういう訳か半ギレ状態で兵士達を打ちのめしながら俺にそう問うてきたグレイ。


「兄貴大丈夫?」


「……お前が心配するような事はない」


  半分勢いに身を任せて戦っていたのだろう。少し肩で息をしながら呼吸を整えていたグレイ。




「その……ゴメンなさい」


  テスはそう謝罪の言葉を言い、手に持つルシアを握り締めた。


「俺が付いてくるって言ったから、足手まといにならないって思ったのにこんな駄目で……」


  テスは、まだファルから借り受けたルシアを使ってはいない。

  出番が来ていないとか、別の役割を担っていたという訳ではなく、テス自身が勇気を振り絞れず、グレイの後ろで見ているだけなのだ。

  やっぱり俺は……と結論を急いでしまうのも無理はないだろう。


「確かにお前は足手まといだな」


「っ……」


  グレイはテスの言葉を肯定し、確かに役立たずだ。と断言した。



「だが、本当の意味での足手まとい(役立たず)ではないからな」


「えっ?」


  少しショックを受けた面持ちで俯いているテスが顔を上げた。


「お前に手前(てめぇ)の得物(ルシア)を預けたのは、お前の……いや、なんでもない」


  ……お前の事を信用してるからじゃないのか? と言おうとして、らしくなさと気恥ずかしさから言葉を濁したグレイ。


「……ちっ、俺より大人しやがって」


「この先だよ」


 二人のそんな会話を聞いていないファルは、目に入る限りの全ての兵士を倒し、部屋の入り口を示した。








「中は……誰もいない。隠し通路は……」


  バン、と部屋に飛び込んで辺りを見回す俺は、その部屋に誰もいない事を確認して隠し通路を探し始めた。


『暖炉の中に隠し通路です』


「ここか『ッ! 避けて下さい!』えっ……っおぅっ!?」


  いざ暖炉を調べようと近付いた瞬間、ルシアの警告と共に暖炉口から無数の槍が飛び出してきた。


「何だ!」


「うわっ!」


  咄嗟に避けた俺だったが、飛び出してきた槍は止まる事無く直進し、背後にいたテス達を襲った。

  ライムやルシアが槍を全て弾いたので事なきを得たが……。


「……此処は私達の場所、備えはしているに決まってる」


  槍の射出を終えた暖炉が音をたてて変形し、奥へと続く通路が出現した。

  そしてその奥から、白と黒を基調としたローブを身に纏った小柄な人物が姿を現した。


『御主人様(マスター)、あの人物が先程言っていた……』


(強い魔力を出してるって人物?)


『はい』


  見た目としては中学……高校生辺りの背格好で、男女の判断が難しい中性的な声音をしていて、シャロンの持っているものよりサイズの大きい本を抱えている。


「成る程、君が子供冒険者か」


「その様子だと俺を知ってるみたいだけど、あんたが俺をここに?」


「子供冒険者、本名はファル……なんだろう、読めない」


(あ、無視っすか)


  一人で本を捲(めく)りながらブツブツと喋っている人物は、ある一頁(ページ)を注視してそう呟いた。

  というか、何で本に俺の名前が載ってるんだし。


「所々読めない……こんな事例は初めて」


『あれは……』


  テスの手に収まっているルシアが、相手の本を見て驚いた様子で声を洩らした。


(本がどうしたの?)


『……解析した所、あの本が神具だということが判明しました』


  神具……。


(ルシアに似たようなものって事?)


『造りが違うだけで、定義そのものは私と同じです』


  ルシアは神器(ゴッドウェポン)と呼ばれる特別な武器だが、それと似たようなもので神が創造した道具というのが神具というらしい。

  成る程、俺の名前やら情報やらはあの本から得た情報なのか。





「項目に追加事項……。『エクセルシアが解析鑑定』?」


『なっ……』


  ルシアが本に【解析鑑定】を使った事がバレてる……。


「エクセルシア、は……君の剣の名前か。まさか意思を持ってるなんてね」


  パタン、と本を閉じて小脇に抱え、ローブを纏った人物はゆらゆらと魔力を放ち始めた。

  やがて魔力は風となり氷となり岩となり、形を変えて矢となって……。





「君には私の計画の糧になってもらうよ」

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