↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/17

最終話 アリオスとデート

 今日はアリオスと街で買い物である。


 別に嬉しいわけではない。


 が、


 入念に化粧はした。


 髪留めは可愛い薔薇の形である。

 香水はお気に入りなのをつけた。


 なにせ、伯爵と並んで歩くのだ。

 彼に恥をかかせてはいけない。


 部下たちは大喜び。


「「「 ロォサ様お綺麗です! 」」」


 服装はスカートにしようか。

 いざという時は動きにくいが、アリオスの反応がスカートの方が良いように思える。


 別にあいつを喜ばすのが目的ではないが、せっかく街を歩くのだから、私だって楽しみたい。

 気軽な、ラフな格好がスカートなだけである。

 この赤いスカートは気に入っている。丁度、膝下から足が見えて良い感じなのだ。

 色合いもいい。私の赤毛と良い感じにマッチする。


 アリオスは背が高いから、私がヒールタイプのブーツを履いても困ることはない。

 茶色のブーツを履いていこう。


 ふふふ。


 よし。

 準備万端。


 いざ行かん、買い物!


 街の入り口で彼と待ち合わせをした。


 状況確認もあるからな。

 待ち合わせより1時間早めに行こう。


 決してワクワクしているわけではない。

 あくまでも護衛の一環だ。

 そう、今日は伯爵の買い物に付き合うだけ。

 なんの楽しみもない、仕事みたいなものである。


 私は馬車に乗って待ち合わせ場所に到着した。


 ん? 

 誰かいる??


「え? アリオス!?」


「やぁ!」


「どうして!? 待ち合わせの時間より1時間も早いわよ??」


「ワクワクして早く着いちゃいましたハハハ」


 ハハハって、もう。


「どれくらい前から待っていたの?」


「30分前でしょうか?」


 じゃあ1時間半も前に来てたのか!

 早く来て正解だったな……。


 ってか、あんたが早くついたら護衛の意味なくなるっての。

 まったくしょうのない奴だなぁ。


「ふふふ」


 んもう。

 散歩が始まる前の尻尾を振る犬みたいな顔して……。


 アリオスは薄いグレーのロングジャケットを羽織っていた。


 うう……。悔しいけどカッコいい。

 イケメンだからジャケットとか超似合うんだよなぁ……。


 いかんいかん。

 浮かれてちゃダメだ。

 これは遊びじゃないんだから。

 彼をしっかりと護る使命なのよ!


「その髪留め。初めて見ました」


「ああ、これね。気に入ってるの」


「可愛いですね。似合ってますよ」


「そうかな?」


 えへへ。


「スカートは髪の色と合わせたんですね?」


「あ、う、うん」


「素敵です。綺麗な赤毛が一層引き立ちますね」


「あ、ありがと……」


「香水はローズヒップだ。良い匂いです」


「お、お気に入りなのよね……」


「可愛いくてイメージピッタリです」


 ちょ、褒め殺す気くぁ……。


「ア、アリオスも……。ジャケット……。カ、カッコいいわよ」


「そうですか! ありがとうございます! この日のために新品を下ろしました」


 うう。

 もう楽しい。


「じゃあ、どこに行く? 付き合うわよ?」


「ロォサはどこに行きたいんです? まずは君の買い物からですよ」


「私ぃ?」


 私の買い物といえば、王都にある武器屋を梯子するのが定番だけど……。


「武器屋巡りなんて興味ないでしょ?」


「ありますよ。ロォサの買い物なんですから!」


 というわけで、私たちは武器屋を回ることにした。


 大きな店でも5店舗。

 露店で売る小さな店も入れれば倍以上ある。

 きっとこれだけでも1日が潰れてしまうだろう。


 カベルと付き合っている時なんか、絶対に来ることはなかったな。

 高級な店で服を買ったり食事したり、そんなことをしていたっけ。


 伯爵が武器屋巡りなんて珍しいことだろう。

 お気に入りの店を1店舗だけ見て、あとはアリオスに合わせようかな。


「へぇ〜〜。ここがロォサのお気に入りの店ですか」


「ええ。ここの武器は質がよくてね。頑丈で、切れ味が鋭いのよ」


「ロォサ。このアックスはグリップが握りやすいですよ」


「あ、本当だ」


「持ち手を工夫するのも、いい武器の一つなんですよね……」


 つぶやくようにサラリと言う。


 なるほど、そんな所に着目するとは……。

 博識だなぁ。


「ロォサ。このレイピアはベスターニャに向いてそうですね?」


「本当ね。買おうかな」


「じゃあ、3本買いましょうよ。3人でお揃いの武器です」


「あはは。なによそれ」


 そんな感じで、気がつけば武器屋を梯子していた。


「見て見てアリオス。この剣はどうかな?」


「ええ、とっても似合ってますよ」


「えへへ」


 じゃ、ぬぁあああいっ!!

 

 しまった!

 楽しくて、つい3軒も梯子をしてしまった!


 このままでは武器屋巡りで1日が終わるわ!


「次はどこの武器屋へ行きます? ふふふ」


「も、もう武器屋巡りはやめましょうよ。アリオスの買い物に付き合うわ」


「では、お茶を飲みましょうか」


 ああ、なんて良案。

 丁度、喉が渇いていたのよね。


 彼が連れてきてくれたのはオシャレなカフェだった。


 そこでお茶だけ飲むつもりだったのだが……。


 メニューにあるアプリコットのケーキ。

 

 うう、お昼前にこんなの食べちゃダメよね。


 店員が注文を伺う。

 私たちは紅茶を頼んだ。


 喉を潤すだけでいいだろう。

 そう思っていると、


「このアプリコットのケーキを1つください」


 え?


「ちょっとアリオス。ケーキ食べるの?」


「ああ。君が食べる分だよ」


「どうして?」


 私が食べたいってわかったの??


「顔に書いてます」


「え?」


 そんな顔してた??


「あと、僕はチョコレートケーキをください」


 彼はニコニコと微笑みながらケーキとお茶を注文した。


「あ、ありがと……。ケーキ注文してくれて」


「いえいえ。僕も食べたかったですからね」


 テーブルに置かれたケーキは輝いていた。


 黄金色のケーキ。

 シロップ漬けされたアプリコットがプルルンと上に乗っている。


 ああ、美味しそう……。


 口に入れると酸味と甘みが広がった。


 うううう!

 美味しいぃい!!

 バニラエッセンスとバターの風味が口一杯に広がるぅ!


 至福……。


 紅茶に砂糖は入れないでおこう。

 お茶の苦味で口の中に広がる甘さをリセットするんだ。


 そして、再びケーキを食べて、


 旨ぁあああああああああ〜〜。


「ふふふ」


 う!

 見られた!!


「な、なによ?」


「可愛い……」


「は?」


「いえ……。幸せそうで何よりです」


「うう……。だって美味しいんだもん」


 ああ、なんか悔しい。

 

 そう思いながら、パクパクとケーキを食べる。

 ふと、彼の食べてるチョコレートケーキが気になった。


「そっちはどうなの?」


「ええ。こちらも美味しいですよ。ビターチョコでね。苦味と甘さが癖になります」


「へぇ……」


 本当に美味しそうだ。


 すると、


「はい」


 と、フォークが差し出された。

 その上にはチョコレートケーキが乗っている。


「な、な、何よそれぇ!?」


「え? だって……。食べたいって顔に書いてます」


「か、か、書いてないわよ!!」


「いらないんですか?」


 うう!

 

 彼の食べてたフォークだからな。

 間接キスになってしまうけど、別にそんなの子供じゃあるまいし、気にはしない。


「い、いただきます」


パク……。


 ううう!

 ビターチョコの苦味とスポンジケーキの甘さがハーモニーを醸し出している!!


「美味しい!」


「ふふふ。良かった」


 ああ、なんかこいつのペースに巻き込まれちゃってるなぁ。


 でも、私だけ貰うのも申し訳ないか……。


「こ、こっちのケーキも食べる?」


 すると、尻尾を振る犬のように笑顔を見せた。


「いいんですか?」


 ああ、まるっきり犬だな。

 お手って言ったら直ぐにでも手を出しそうだ。


「じゃあ、はい」


 彼は私が出したフォークにかぶりついた。


 ああ、私の食べてたフォークで……。

 間接キスになってしまうけど、子供じゃあるまいし、まったく、全然、気にはならない。

 

「ど、どう?」


「ええ! とっても甘くて美味しいです!」


「そう。良かった」


「ロォサが食べさせてくれましたからね。2倍美味しいです」


 恥しッ!

 そういうこと言わないでよ!


 私たちはカフェを出た。


 


「あ! ロォサ!」



 

 目の前にいたのはベアートである。


 どうしてこんな所に?


「ははは。奇遇だね。ちょっと裁縫用の生地を買いに来たんだ」


 タイミングが悪すぎる!!


「ロォサに会えるなんて嬉しいな」


「気安く彼女の名前を呼ぶのはやめてください」


 アリオスを見やると、さっきまでの温かい笑みは消え、冷たい形相になっていた。


 これはまずい!

 アリオスは、私とベアートが仲直りをしたことを知らないんだ!


「あ、あのね。アリオス────」


 と、訳を話そうとした瞬間。

 彼は私の腰を持って、グイッと体を引き寄せた。


「ちょ、え? ア、アリオス?」


「彼女に近寄ることは、僕が許しません!」


 ああ、訳を聞いてーー!


「あんた、武闘会の時にロォサとタッグを組んでた伯爵様だな。あん時の負け、忘れた訳じゃあないんだぜ」


「ほぉ。ならば実力はご存じでしょう?」


「あん時は隙をつかれただけさ」


「また、ゴツんとやられたいのですか?」


「次に負けるのはあんたさ」


 ベアートは腰にぶら下げていた斧を握った。

 対するアリオスは腰に刺していた剣を抜く。


 いやいやいや。


「ちょっと! 2人ともぉおお!!」


「大丈夫です。安心してください」


「ロォサはおいらの嫁になるんだ!!」


「そういうのカチンときます!!」


 ま、街中で争うつもり!?


 止めないと!!


「聞いてアリオス!」


「あとにしてください!」


「やめてベアート!」


「無茶な願いだ!」


 伯爵が怪我でもしたら大事よ!

 それに街の人を巻き込む可能性だってある!


 んもぉおおおおおーー!!













「   め っ !!   」











 その怒号は、まるでペットを叱りつけるような大声だった。


 2人の動きはピタリと止まった。


「事情を聞いてよアリオス」


「……いや、しかしだね」


「落ち着いて、ベアート」


「……そう言われても」


 むぅう!!


 私が睨みつけると、2人はしゅんとして黙り込んだ。


「そもそも、街中で争うなんてありえないでしょ!!」


「「 は、はい…… 」」


「怪我人が出たらどうするつもりよ!」


「「 ううう…… 」」


 はぁ〜〜。

 疲れるわ。



 私は2人に事情を説明した。


「────ってことでベアートと私は仲直りしたのよ」


 アリオスは釈然としない顔でベアートを睨みつけていた。


「おいらは我慢できないな。2人でデートしてるなんてさ」


「デートじゃないわよ!! 単なる買い物よ!!」


「いえデートです。僕とロォサはデートしてます」


「ややこしいこと言わないで!」


 2人は歯軋りをしながら睨み合っていた。


 んもぉおお!!


「めっ!!」


 そう叱りつけると、再び2人はしゅんとした。


「ロォサ……。本当にデートじゃないんだな?」


「ち、違うわよ。初めっから彼にはそう伝えてるんだから」


「じゃあ、信じる。……あんた、ロォサに手を出したらただじゃおかないからな!」


 そう言って去って行った。


「はぁ〜〜」

 一難去った……。


 アリオスは、再びニコニコと笑っていた。


「怒ったロォサも可愛いですね」


 このぉ!

 人の気も知らないでぇえ!!


 彼のおでこに拳を置いた。



「めっ!」



 彼は嬉しそうに尻尾を振っていた。


「えへへ。怒られました」


 ああ、なんだか大変なことになってしまったな。

 ベアートと彼が会うたびにこんなことになりそうだ。


 でも、まぁ、なんとか楽しくやれるわよね。

 アリオスもベアートも、基本は優しい性格なんだもん。

 きっと上手くいくわ。


「ではロォサ。デートの続きをしましょうか」


「買い物よ!」


 私の声は快晴の空に響いた。





 おしまい。

最後までお読みいただきありがとうございます。


感想いただけると嬉しいです。


評価、感想は今後の作品作りに生かさせていただきますね。


誤字報告してくれた方、本当にありがとうございます。


それでは、また次の作品でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

広告下にある↑↑↑の



☆☆☆☆☆評価欄を



★★★★★にしていただけると作者の創作意欲が増します!

面白いと思っていただけましたらご協力お願いします。

― 新着の感想 ―
[一言] 誤字修正させていただきました(^^; …個人的には「関節キス」は必殺技としてアリかと思います。相手にもよるでしょうが、好みの方にされたらきっと砕けると思います…どこがどう砕けるかはご想像次第…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。