第14話 祝賀会にて
私は馬車に乗り、王室主催の祝賀会へと向かった。
アリオスとは現地で集合である。
馬車を降りると彼が立っていた。
その姿はタキシード。
グレーと黒を基調にしたシックな出立だ。
うう……。くやしいがドキドキする。
彼の背は180センチ後半はあるからな。
脚が長くてスラッとしてるから、めちゃくちゃ似合うんだ。
それに、のっぽの私がヒールを履いても追い越さないのがいい。
本当に……。イケメンだ……。
そんな彼に私のドレス姿を見せる。
ああ、益々ドキドキしてきた。
馬車を降りると、感嘆の声。
「やぁ!」
彼は満面の笑みだった。
ああ、恥ずかしい!
アリオスは、私の姿を食い入るようにマジマジと見つめた。
そして、私の耳に顔を近づけると、私にだけ聞こえる声で囁いた。
「とっても似合ってます。素敵です」
ううううう、恥ずかしい!!
「そ、そう……。あ、あ、あ、ありがとう。ア、アリオスも素敵よ。タキシード似合っているわ」
「ありがとうございます」
そう言うと、左腕をくの字に曲げた。
「さぁ。参りましょう」
こ、これは……。腕を組むって合図?
私の戸惑いを払拭するようにニコリと笑う。
「僕たちは主賓ですから」
た、確かに……。
みんなに見られる立場だからな。
腕を組んでの会場入りは大事な場面か。
「じゃ……。じゃあ……」
私は彼の腕を抱いた。
ああ、恥ずかしい!
祝賀会の高揚感と、嬉しい気持ちと、小っ恥ずかしい気持ちが入り乱れて大パニック。
歩くのは彼がリードしてくれているので助かった。
きっと1人で歩いていたら手と足が一緒に動いていたのではないだろうか。
「おお……。アリオス伯爵とロォサ騎士団長が参られたぞ!」
「ああ、2人とも素敵ねぇ」
「アリオス様、カッコいい……。見惚れてしまいますわ」
「ロォサ様、お綺麗だぁ……」
場内からは絶賛の声。
女子から受ける羨望の眼差しには慣れているけど、こんな綺麗なドレスを着ているのは初めてだからな。
とにかく恥ずかしい。
チラリとアリオスを見やると、彼はいつものように優しく微笑んでくれた。
うう……。和む。
もう、祝賀会が楽しくなってしまった……。
会場に入るや否や、私たちは来客の対応に追われた。
「おお、これはアリオスどの! 武闘会の武勇伝を聞かせてくれぬか!」
「まぁ、ロォサ様! 武闘会では素晴らしい剣捌きでしたわ」
と、紳士淑女に囲まれて、美味しい料理を食べる時間もなくなった。
そして、どういうわけか、私は貴族の女たちが集まる場所へと入ってしまう。
豪奢なソファーに腰掛け、淑女らに囲まれた。
私を中心に話が進む。
初めは、チヤホヤしてくれたが、次第にその熱も冷めて、その場は女子トークへと移った。
「まぁ、あの辺境伯と一夜を?」
「あの男爵様と伯爵令嬢はお付き合いされてますのよ」
「まぁ、その宝石はどこで買われたのかしら?」
「あそこの服屋は最新のデザインですのよ。おほほ」
うう……。
剣と戦いの世界にいる私にとっては異次元の会話だ。
「それで、オリオス伯爵とはどういった御関係なのでしょう?」
と、みんなの視線は私に注目した。
どうやら、武闘会の話より、相当な興味がおありなようで……。
でもね。
期待以上のモノは出てこないんだ。あしからず。
「単なる友達です」
そう答える。
だって、これが事実なんだもん。
みんなは興味をなくして、私を無視して他の話をし始めた。
ああ、なんだかなぁ……。
それでも、たまには話題を振ってくれる。
「ロォサ様は、休日はどんなことをされているのでしょう?」
良い質問だ!
「買い物です!」
「まぁ、どんな服を買いますの?」
「いえ。服は買いません。それより武器です! あそこの武器屋を知っていますか?」
と、武器の話にテンションが上がった。
「良い職人でね! 剣の切れ味が全然違うのです! ゴブリンの首なんかスパッと切れますよ!」
気がつけば、周囲は引き攣った笑みを浮かべていた。
ああ、やってしまった。
次第に質問もなくなって、ポツンと浮く。
背の高さも相まって、その浮き方は異様だ。
そのシルエットは大海にそびえ立つ灯台みたい。
光の点滅はS・O・Sである。
遠巻きにボソボソと聞こえてきた。
「あんな細い腕で魔物を退治してるのね……」
「背が高いから魔物にも勝てるのよ。女なのに団長なんだもん。ふふふ」
「男に興味ないのかしら?」
うううう……。地獄だ。
でも、みんな楽しそうに話してるしな。なんか出るに出られない……。
「ロォサ」
と、声を掛けてくれたのはアリオスだった。
そのまま、私の手をグイッと引っ張る。
え?
「ちょ、ちょっと!?」
「行きましょう」
淑女らは、アリオスと会話がしたくて、なんとか引き止めようとするが、彼はそんな周囲を完全に無視した。
私たちはバルコニーへと移動した。
「ここなら誰もいませんから」
そう言って、微笑む。
私が困っていたから助けてくれたのかな?
「あ、ありがとう……」
「ふふふ」
夜風が気持ちいい。
「ほら、見てください。星が綺麗ですよ」
彼が見上げた先には、満天の星空。
「ええ。本当に、綺麗ね」
ふぅ……。
落ち着いたな。
やっぱり彼といるのが一番落ち着く。
本当に、良い友達だな。
彼は私に体を寄せた。
え?
「ロォサ……」
な、
「何?」
変な空気。
彼から感じたことがない。
珍しく、顔を赤らめてる。
「アリオス。酔ってるの?」
「そんなんじゃありませんよ」
「じゃあ、どうしたの?」
「……僕が想っていることを聞いてくれますか?」
なんだろう?
相談かな?
いつも自信満々の彼が妙に弱腰に見えるな。
こんな私でいいなら、
「なんでも聞くよ。いつも良くしてもらってるんだからさ。お礼しなくちゃね。へへへ」
だって友達だもん。
助けてあげないとね。
彼は私を見つめていた。




