第10話 アリオスのライバル?
〜〜ロォサ視点〜〜
武闘会、当日。
今日は快晴である。
ああ、結局、アリオスを止めることはできなかったな。
高原の乗馬を素直に楽しんでしまった……。
王都の闘技場は満席だった。
観客は5万人も来ているらしい。
うう、凄まじい熱気。人、多すぎでしょ……。
参加選手は32名。
2人が1組のチームになって戦う。
16組がトーナメント形式で勝ち上がる。
私のパートナーは大きな胸のベスターニャだ。
「ああ、なんだか緊張しますねロォサ様」
そう言いながら笑顔を見せる。
自分の勇姿を旦那さんに見せれるのが嬉しいらしい。
私たちは、選手用の大きな控え室に入っていた。
女は私とベスターニャだけなのでその中に混ざる。
その中にはカベルがいた。
私と目が合うなりニヤリと笑う。
「ククク。女が出しゃばると痛い目を見るぞ?」
くっ! こんな奴、無視だ!!
私にやった仕打ちは忘れないんだから。
私はカベルを無視して、待合室の端っこへと向かった。
そこにいる人物は、私がよく知っている者だ。
「やぁ」
ああ、その笑顔をここでも見せますか。
「アリオス。やっぱり来たのね」
「ふふふ。そりゃあね。お祭りですから」
ああ、呑気な人。
でも、彼がいるからカベルに会った嫌な気持ちが薄れるな。
不思議な人だ。
彼の後ろから会釈したのはメイドのマーナだった。
アリオスとタッグを組むらしい。
「どうも。ロォサ様。ご無沙汰しております」
そういえば、彼女も女の参加者だった。
確か、47歳。
こんな女性が剣を振り回せるとも思えない。
「マーナさん、剣技の経験は?」
「あはは。 私はご主人様の付き添いですので、後ろで応援しているだけでございます」
ああ、アリオス。
一体、どういうつもりよ?
問い詰めても「ははは。大丈夫」と笑うだけだしね。
本当、何考えてるのかわからない人だ。
16組の参加者がクジを引いて順番を決めることになった。
トーナメント表はAブロックとBブロックに分かれた。
ああ、神様。
どうか、アリオスとは当たりませんように。
幸いなことにアリオスとは離れた所に当たった。
私はAブロック。彼はBブロックだ。
順当に行けば決勝戦で戦うことになる。
うう、私がアリオスと戦うことになったら、マーナさんはベスターニャと戦うのかな?
とてもマーナさんに勝機はないけど……。
ああ、どちらにせよ嫌だ。
アリオスと戦うなんて。
どっちが負けても不名誉だ。
5万人の観客の中で大恥をかく。
そして、8組が戦うAブロックにはカベルが入っていた。
うう、こいつにはなんとしても勝ちたいわ。
司会進行を務める女が大きな声を張り上げた。
「さぁ、始まりました! 王都アーネストの武闘会!」
観客の大歓声が場内に響く。
その声は、まるで小さな地震でも起こしたかのように辺りをビリビリと揺らした。
「優勝者にはトロフィーの贈呈と1億コズンです!」
ああ、お金より名誉だ。
民衆の面前で、男に負けるわけにはいかないわ。
「この戦いは実戦の混戦状態を意識しております。よってタッグマッチ形式での戦闘。2対2です!」
部下のベスターニャとは息が合う。彼女の剣技は相当の実力だ。
私となら、きっと優勝できるはず。
「では、開幕です!!」
大歓声と共に武闘会が始まった。
1回戦が終わると2回戦目が始まる。
いよいよ、私たちの番だ。
「では、ロォサチームに登場していただきましょう! 薔薇騎士団、ロォサ団長とベスターニャ選手です!!」
闘技場に出るやいなや、黄色い声が飛んできた。
「きゃあああ! ロォサ様ぁああ!! カッコいい!!」
「ロォサ様素敵ぃいいい!!」
「ロォサ様、こっち向いてぇえええ!!」
ああ、なぜか女性人気が凄い……。
「おおっと! 大変な声援だぁあ! 女性人気が凄まじい!!」
そ、そんなこと解説するなよ、恥ずかしい。
いかん。冷静に冷静に……。
キリリ〜〜。
と、凛々しい顔を見せるのだった。
対戦相手は貴族の代表者。
屈強な戦士のタッグだった。
「それではAブロック、2回戦。スタートです!!」
よし。
「いくぞ! ベスターニャ!」
「はい!!」
相手の攻撃を掻い潜り、私の剣が相手の胴を斬り抜いた。
ズバァアンッ!!
「勝負あり!! 勝者、ロォサチーム!」
やった!
圧勝だ。
この戦いの勝敗は、木製剣を相手の急所に当てること。
それと降参宣言の2つだ。
「「「 きゃああ! ロォサ様ぁああああ!! 」」」
はいはい。
応援ありがとうね。
恥ずかしいので、程々でお願いします……。
一方、Bブロック。
アリオスの初戦が始まろうとしていた。
彼が登場するやいなや。
「「「 きゃあああ!! アリオス様ぁあ、素敵ぃいいいッ!! 」」」
こちらも黄色い声が飛び交う。
なんなら私より多いくらいだ。
彼は、いつものようにニコニコと微笑んでいた。
「や、これはこれは。声援ありがとう」
なによあの顔!
嬉っしそうにぃいい!
この女ったらしめぇええええッ!!
「アリオス!! マーナさんに怪我を負わせたら承知しないんだからね!!」
彼は私の方を見ると、ニコニコと笑っていた。
んもぅッ!
お気楽なんだからぁ!!
ズバァアアアアアアアアンッ!!
それは、開始の合図と同時だった。
アリオスの木製剣が2人の戦士を打ち抜いたのである。
2人は悶絶してピクピクと痙攣していた。
「おっと、少し力を入れすぎました」
「勝者、アリオスチーム!!」
強ッ!
めちゃくちゃ強いじゃない!
後ろに待機しているマーナさんは、木製剣を抱えて笑っているだけだった。
くぅ、アリアスめ。
私とやった決闘は、やっぱり手を抜いていたんだな。
あとでとっちめてやる。
でもまぁ、この強さならマーナさんは大丈夫か。
心配することもないわね。
私とベスターニャは次の試合も順調に勝ち進み、ついには順々決勝へと進んだ。
相対するはカベルチーム。
彼は大きなクマのような男とチームを組んでいた。
大きい……。
190センチはあるかもしれない。
カベルは笑った。
「クハハ! いかな 薔薇騎士団長といえど、ベアートには敵うまい!」
はぁ〜〜。
自慢するなら自分の力でしょうに。
情けないにもほどがある。
「降参するなら今のうちだぞ。ロォサ?」
「ふん」
誰が降参なんかするもんですか!
「準決勝! 始め!!」
号令とともに飛び出して来たのは、意外にもカベルの方だった。
「ふん! 生意気なお前に制裁を加えてやる!! うらぁああッ!!」
それはこっちのセリフよ!!
互いの木製剣が交錯する。
甘いわ。
全然甘い!
ってか弱い。
「女の癖にぃいいいい!!」
「はっ!」
私の一撃は彼の剣を吹っ飛ばした。
「うう!!」
私の木製剣はカベルの顎を差した。
「どうわかった? あなたの腕じゃ、私には勝てないのよ」
「ぬぐぅうう……」
観客は沸いた。
「おおっと! カベル選手、降参か!?」
「誰が降参なんかするかよ! ベアートやれ!!」
男の木製剣が私を襲う。
ドォオンッ!!
私は、素早く飛び退き距離を取った。
彼の一撃で地面は爆ぜ、大きな穴が空いた。
あんな攻撃を喰らったら命はない。
「クハハ!! 終わったなロォサ! お前の負けだぁあああ!!」
場内に不穏な空気が流れ始めた。
女の私では、このベアートと呼ばれる男に勝てないと思われているのだ。
なにせ、体格差がありすぎる。
でもね。ふふふ。
舐めてもらっちゃ困るのよ。
私は大きな魔物と戦うことだってあるんだから。
巨人トロール。一つ目のサイクロプス。巨大ドラゴン。
目の前の男よりもっと大きかったわ。
大きな敵を相手にするときはね。
足を狙う!
動きを止めれば勝機はあるのよ!
しかし、ボム! と鈍い音を立てるだけで、木製剣が弾かれてしまった。
「ロォサ様! 真剣じゃないんです! 肉を斬ることはできませんよ!」
しまった!
木製剣じゃ、今までの戦法が効かないのか!
しかも、硬い筋肉に守られて骨さえも砕けない。
彼はそんな攻撃はもろともせずに突進してきた。
「は、早い!」
そして、ベアートの剣撃は恐ろしいほど重かった。
くっ!
強い!
その重さは私の足首を捻らせた。
「うぐっ!!」
バランスを崩す。
その隙に、彼は、私の剣を握るとポイッと遠くに投げ捨ててしまった。
「ああ!!」
強い!
動きといい、速さといい。
カベルなんかとは、比べものにならないくらい強い!
彼は私の両手を鷲掴みすると、高々と持ち上げてしまった。
「きゃああ!! な、何をする!?」
「へへへ」
と、顔を赤らめる。
その瞳は純粋で、丸々として大きい。
奇妙だが、ペットのような愛らしさを感じてしまった。
突然の告白に、言葉を失う。
「結婚してくれ」
は、はい?
「おいらと結婚してくれよ」
ななななななな!
何を急に言い出すのよ!?




