黑と白
12月は、クリスマス♪
でも、そんなことは関係ないさ♪
宜しくお願い致します。
廃屋の隅に学生服を着た男女が集っている。由緒正しい聖ガブリエラ学院の制服は、ほこりが積もって薄汚れたこの場所には似つかわしくない。
「こんな…。ひどい。」
一人の黒髪の少女が顔を両手で覆って座り込んでいる。こんな汚れた場でも艶があるとわかるくらい整えられた美しい髪と幼さの残る可愛らしい容姿は、守りたくなるような庇護欲を誘う。
「泣かないで、ガーベラ」
「でも…。」
少女の隣では、深い水底のような群青色の髪の幼い見た目の少年が寄り添っている。心から心配していることが分かるような表情が、老若男女を虜にするような中性的で美しい見た目から窺える。
「確かに…。これは、ひどすぎるな…。」
金髪の青年は怒りを抑えるようにそう呟いた。整った容貌と王族特有の人の上に立つオーラから、場所が異なれば誰もが目をそらせないような迫力がある。
彼の死体の先には何らかの死体らしきものがある。手足、胴、そして頭が赤い血の上にバラバラに散らばっている。
「許せねえ、ベラが大事にしていたのに!」
赤髪の青年は、苛ついたように壁を叩いた。燃えるような髪を持つ青年は、その髪色のように炎のような正義感を瞳に宿していた。
どうやら、ガーベラ、ベラと呼ばれた少女が大事にしていた何かがこのような無残な姿に変えられてしまったらしい。バラバラになってしまった死体をよく見ると、小さな耳と長いしっぽがある。そして、赤い血に染められていない真っ白な毛がいくつか浮かんでいる。生前は、真っ白な毛が美しい猫であったに違いない。
古い建物らしく建物の破片がパラパラと落ちてきた。
「すぐに暴力に走るのはやめなさい。見苦しい。それに、ベラが怖がっています。」
森林の葉のように青々とした緑色の髪の青年が幼い物分かりのよくない子供に教えるように注意をしている。
銀縁の眼鏡が彼の理知的で切れ長な瞳と相まって冷静沈着な雰囲気を醸し出している。
赤髪の青年は、ガーベラと呼ばれた少女の姿を見ると、可哀想に少し震えているように見えた。
「すまない、ベラ。そんなつもりは無かったんだ。」
「大丈夫です。分かってますから。」
ベラは、涙に濡れた目をあげて気丈にも笑顔をつくって赤髪の青年に答えた。
ベラという少女が何者かによる悲劇にあいながらも、優しさ溢れる友人のおかげで悲しみを乗り越え、犯人と対峙していく―その始まりの物語。いずれ、幸せへと向かうそんな一幕にすぎない…
…はずだった。
「でも、きっと幸せでしょうね。」
今までの悲しみから立ち直るような雰囲気をぶち壊すような言葉が無ければ…。
透き通るような声が水面に波紋を作るようにこの場によく響き渡った。皆、驚愕の表情を浮かべている。
ある者は、怒りをあらわにして怒鳴り散らそうと息を吸い込んでいる。
その時、一筋の光が入ってきた。
今宵は満月。
廃屋の窓から雲に隠されていた月が姿を現し、窓近くにあった猫の死体とその人をうつしだす。
月明かりに反射する銀髪は、月と対になるように美しく輝いている。
その人、先程の発言をした張本人は、猫の頭部分に手をかざし聖母のような微笑みで撫でていた。
まるで、その猫が生きているかのように…。
ただ、ただ優しく…。
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