39 警備員そしてモフとの遭遇
結局アシャールさんは、スキルちゃん達と協力して家を建てることを選んだ。
「スキルちゃん達のレベルがUSSS-5になっていますね」
「ゼルなんちゃらを素材にしましたからね!」
「ならばやはり、家の建築は職人に頼らず私が。スキルちゃん達に負けないよう、スキルレベルを上げたいですからね」
『建材造りは任せて〜、るるんららん』
スキルちゃん達はすっかりアシャールさん大好きになっているので、共同作業が嬉しそうですよ。
アシャールさんの本来持ったスキルは、空間収納と魔導具製作の二つのスキル。そしてスキルとは別枠で魔法や武術を使うのがフェイ族らしい。
夜が明けたばかりの早朝に、わたしは目が覚めた。隣で寝ていたアシャールさんは、もう起きている。わたしも奈々美さん達を起こさないようそっとベッドルームから出る。ミケ子も起きてついてくるわ。
「おはようございます」
「おはよう、アシャールさん」
元々建材を採取しにいく予定だったので、シャワールームの脱衣所で軽く身繕いをして、アシャールさんと外に出た。
朝日の眩しさに、ぼんやりしていた頭がゆっくり覚醒していく。新たに造ったペットスリングをかけると、ミケ子は当然のようにそこに入る。うむ、はしかい子やちゃ。
「シロ」
アシャールさんがシロを呼び、わたしを乗せると、そのまま後ろに乗ってシロを駆けさせる。うん、空にね。ちゃっかりクロもついてくる。
わたしは慣れたちゃ。アシャールさんとキトキトコンビに乗る時、密着して片腕をお腹に回されることに!
金山ことタラ山(わたし命名)に着くと、昨日スキルちゃんがごそっと採取した場所を確認した。
「これは……本当に生えてきてますね」
うん、完全では無いが復活してる。採取した星の金が八割ほど元気に生えてきているわ。
「鉱石って生えてくるものだったかしら……」
わたしとアシャールさんは、実験の為に神聖なる銀の鱗をそこに差し込んだ。
ついでに生えてくれれば御の字やよね。
観察のために、アシャールさんとシロを入れて現状を撮影しておく。パシャリ。
明日以降にまた同じように撮影して、ノクレイが成長するのか確認するのよ。
そしてわたしは、黄金の中に混じっている鉱物を見ちゃった。うん、研磨されてないのに、透明感もテリも色も良いですね、皆さん。
「アシャールさん……これってもしかして宝石かしら?」
もう訳がわからなくて、鑑定する気力がないわ。平常心を保つためにミケ子を見ると、ペットスリングの中ですやすや寝てるの……癒し。だけど、やっぱり落ち着き過ぎじゃないかしら? この図太さは猫種の特長ではないはず。
アシャールさんも、呆れた笑みを浮かべて確認する。
「宝石ではなく、魔力を帯びた魔宝石ですね。魔法を付与出来るので、宝石より高価です」
「魔物から採取できる魔石と、どう違うの?」
「単純に美しさの違いもありますが、魔宝石の方が魔力の量も純度も高いのです。今朝スマホを見て驚きましたよ」
そうね。わたしも驚いたちゃ。
スキルちゃん達はわたしと夢で会ったあの後に、さっそくわたしとアシャールさん、ピホのスマホを、基盤にタラセタを使用してグレードアップしてたのよ。
ついでに外装もタラセタに。猫の目紋章と名前はノクレイ、そしてそれぞれ魔宝石を使った精密な装飾がついている。
アシャールさんにはダイヤモンドのような魔宝石で紋章の周りに十二枚の翼。
わたしには、ピンクに青や緑の魔宝石を駆使してパナマ草とまだ見ぬその花。
ピホはピホそっくりの姿が魔宝石で描かれている。
綺麗で芸術的で、とても心の栄養だが、一般流通用では無いちゃね。
ついでに石材も採取したが、生えてきていた。何故生えるのか鑑定でもわからないのよ。
「この様子だと建材は石と森の木と、このタラセタがメインになりそうですね……」
無料で使えますもんね。
「水道とかの配管はノクレイとタラセタどっちに軍配が上がるの?」
「タラセタです。先程スキルちゃんの掘り当てた源泉から温泉水を引いて来るのも、床暖房に使うのもタラセタですね」
来る途中で一発当てたスキルちゃん。
せっかくだからちゃんと掘って泥を抜いて、石材で加工して露天風呂にしてきたのです。
「ノクレイの出番は?」
「内装や装飾関係になってくるでしょうか……。ああ、確かスキルちゃんが面白いことを。タラセタにノクレイを貼り付けてちょっとした加工をするのです。するとこういうものが」
アシャールさんから四角い板を渡された。鏡だわ。何気なく裏返すとそれは、透明なガラスのように見える……。
マジックミラーね。でも明るさに関係ない作りになってる……ということは。
「アシャールさん、これ浴室の窓に使いましょう! プライベートを守りながら、月や星を眺めてお風呂に入れるのね? 素敵! ……あ、でも虫が寄って来るわね。森が近いし」
「そこは対策しますよ」
ここに来る前に、建築予定地の地盤もがっつり固めておいたわ。
こうなったら窓枠や金属関係は金、蛇口や水回りも金を覚悟しておこう。そうなると、下手にシンプルな造形を金にしただけだとなんだかチグハグな印象になっちゃうから、いっそ装飾は思い切ってロココな感じに凝ってほしい。頼むわスキルちゃん達。
『オッケーるるららん♪』
あと便器、おめーだけは絶対、金はダメだ。汚れがわからず掃除がしにくい。これだけは、しっかりとアシャールさんに頼まなくっちゃ。
そのとき、スキルちゃん達から合図が来た。
「え? ここで?」
「どうかしましたか?」
「生まれるんです! たまごが! 空間収納から出さなくっちゃ」
元々森のたまごを拾った場所……復活した洞窟に、たまごを戻す。それにしても大きいたまごだ。わたしの身長と同じくらい?
既にひび割れがいくつも出来て、そこから光が漏れている。
ガラガラと殻が割れると、そこから現れたのは、とても美しい黄金のドラゴンだ。茶白の猫のように、鼻の上から口元、お腹までは白くて、腹部にはノクレイのようにメラメラ輝く銀色が斑らになっている。頭頂から背面、尻尾まではタラセタのようにキラッキラの黄金で、瞳はアシャールさんやミケ子と同じ、緑の中に青。背にフェイ族のような六枚の翼がある。ただし、こちらの翼の形は普通のドラゴンの羽根……。
「まあ、まるでアシャールさんをドラゴンにしたみたい!」
「なるほど、ではしっかりと強く育てないとですね」
「くるるぅ」
あら〜かわいい鳴き声。
スリスリと顔を寄せて来るので、撫でてやる。パナマ草を出すと食べたので、お前もかと思ったけれど。
アシャールさんはスマホで鑑定辞典を確認する。
「〈イラヒヌール イスタリオを守護する聖なる竜。大きさを自在に変えることができる。雑食だがタラセタが好物。主神が気に入った乳も飲みたいと思っている〉……」
「え、いつものたまご達と様子が違わない?」
「ええ、思い切り食べ物に釣られて来てしまった系ですね」
「キトキト?」
「キトキトー?」
「くるるぅきゅぃ!」
キトキトコンビがお鼻を付けながら、お友達? って聞いてる。どうやら仲良く出来そうですよ。
わたしはそこらに落ちてるタラセタと、ムウ乳をバケツに入れて、パナマ草も添えた。
「イラヒヌールって個人名かしら、種族名かしら? とりあえずイラちゃんでいいわよね。イラちゃん、どうぞ」
「きゅるるぅ!」
イラちゃんが食べている姿を撮影し、ライふぉに捧げておく。迷子さん預かってますとメッセージ添えて。
「くるっきゅう!」
え? 迷子じゃ無い?
「ネコノメは地上のイスタリオのようなもの……ひょっとすると、主が遣わして下さったのかも知れません」
「きゅっきゅう!」
「その通りなの……お住まいはここで大丈夫? ご飯も大丈夫? お乳は時々貰いにくると? えーと、ネコノメをパトロールするのがお仕事なのね。じゃあ麓に露天風呂があるから、好きに浸かってね」
「くるるぅ」
わたしはちょっと考えて、食後のキリッとしたイラちゃんの姿を撮影して、ライトモにネコノメアカウントを作って投稿しておく。ゼルなんとかが居なくなったなら、占領できるのでは? とか思われては困るので、新たな警備員がいることを周知することは大事だ。
なんて思ってると、イラ氏、身体を大きく変化させて、ブォォォっと息をはいた。白い雲が発生して、ふわぁと飛んでいく。
それからキュオオオオオオオとひと鳴きして光を放つ。
「これは……! ネコノメを守護結界で包んでくれたようですね」
出来る子だ!!!
わたしは追加のミルクを与えて労った。
朝食後、わたしはタラセタで出来た大量の釘やら杭やら、加工した木材やら石材やらを山積みにしていく。
後はアシャールさんに任せて、奈々美さんやマリーシェラさんと一緒にすぐ後ろの森の手入れにはいりますよ。要は散歩ですちゃ。
わたしが一歩踏み出すごとに木々は採取されて道なき森に道が出来上がる。石畳の道だ。
それから倒木とか邪魔な木々を、スキルちゃん達は間引いて採取していきますよ。
「あっ、香子さん魔物が近づいてきます!」
奈々美さんの索敵スキルに引っかかったらしい。
「え? スキルちゃんの自動採取対象外ってことは無害なのか、素材が取れないのかしら……?」
木々の間から、のっしのっしと白い何かが近づいて来るのが見えた。熊だったら、即採取。そう思った瞬間、それ、と目が合った。
黒い瞳に金の触角……そう、そしてモッフモフである。
「む……虫ぃぃぃ!!」
奈々美さんが悲鳴をあげた。
そう、虫。大きな蛾やちゃ。
わたしと同じくらいの背丈で、まさかの二足歩行をしている。
わたしと蛾さんは束の間見つめ合い、わたしはそっとパナマ草を1束渡した。
「わたし達は今後むこうで、この草やいろんなものを栽培していきます。荒らさないで下さいね。あと物々交換には応じます。森も手入れのために多少手は入れますが、立ち入って欲しくない場所があれば言ってください」
蛾さんは頷き、パナマ草を齧ってぐっと片前足を上げて了承の意を示した。そしてばっと羽根を広げると、大量の繭をゴロゴロと生み出した。そしてわたしを見てまたぐっと片前足を上げると、のっしのっしと去って行った。
わたしは喜びに飛び跳ねそうなのをぐっと堪えた。
鑑定の結果、繭の中身はお子さんではなく、木の実の種や石とかだ。当然一つ残らず採取した。大量の生糸が手に入ったのよ!
奈々美さんを支えるマリーシェラさんも興奮している。
「カオリコさん、今のキンマユガですわ! 珍しいものを繭で包む習性がある魔物なんですの」
「そうなの? じゃあ木の実の種は何が成るか楽しみね。後は魔宝石と……真珠が多いわね。あれ、ここまだ海に近くはないわよね、どうして真珠?」
「それです!! キンマユガが繭の中で育てる貴重な宝玉! 大当たりですわ」
「ふふ、じゃあ馬車の中で確認しよっか」
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