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スキルちゃん爆進⭐︎おばさん、気づけば異世界で最強夫婦してました (旧:ノンタイトルおばさん〜勇者でも聖女でもなく〜)  作者: 天三津空らげ
10章 孤独をやめた男の要求

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35 竜を信仰する国

「信じられない……まるで生まれ変わったかのように、身体も頭もスッキリしてるわ」


 起きてしばらくして、呆然とリリーティア妃はそう言った。


 わたしはデンと生理用品の入った、大きな葛籠(つづら)を出した。使い方は既に二人の娘皇妃さん達に説明してあるので、こちらも進呈していく。


「このヴァレ茶は定期的に買取可能かしら?」

「それが今のところ、わたしのスキル内で少しずつ栽培を始めたところなので、今お渡しできるのはこれだけです」


 テーブル上に、乾燥茶葉の入った袋を出す。もちろん、奈々美さんの分はあらかじめよけてある。


「ただ、わたし達は自分達の収納スキルや、アシャールさん製の品質保持貯蔵庫で管理してるので、それ以外でどのくらい効果が保つか正直分かりません……」

「なるほど。では造らせましょう、アシャールに。それまで仕舞っておいて頂戴」


 わたしは頷いて素直に仕舞った。

 そこにピコンとライトモの通知が来る。


 スマホ試作機を珍しそうに触っていた両脇の皇妃様達が、好奇心満々の輝く瞳で見てくるので、わたしはライトモを開く。

 グループトークに、アシャールさんから連続トークが入っているわ。


 ご丁寧にセシリア妃が声を出して読んでくれる。


『地名をティグノルのままだと、フェイ族の国が復興したと勘違いされる懸念があるとのことで、ネコノメに変更になりました』

『宰相がスマホを商品化しろと煩いのですが、悪くない案だとは思います。一旦持ち帰りますが、案件として考えておいて下さい』

『最後にネコノメはあくまで国家ではないので、私の国籍は妻と同籍となりました。ゼニアス大神官に自慢できますね』


 マリーシェラ妃がキラキラの目で、わたしを見る。


「スマホ! 私も買いたいですわ!!」


 リリーティア妃はサラサラと書類を書くと、丸めて紐で留め蝋で封をする。ベルを鳴らして使用人を呼びつけた。

 離宮だからか、やってきたのは若い男性の使用人だ。彼はわたしの顔を、びっくりして見ている。


香子(かおりこ)さん?」

「え? あれ? 春さん?! ごめん、全然わかんなかった!」


 だって、服装も髪型も違うんだもん。

 でも元気そうで良かったちゃ。


「あら? お知り合いなの」


 リリーティア妃が興味深げに、わたしを見た。

 しまったしまった。春さんお仕事中なのだわ。


「すみません。お仕事中の人の邪魔をしてしまいましたね」

「よくってよ、そのくらい。ハル、こちらの書類を陛下に届けて。弟とその仲間達が新たな土地へ行く準備が整うまで、この離宮の客人といたしますと伝えて頂戴」

「かしこまりました」


 春さんは綺麗に頭を下げて、書類を預かって出ていった。服装のせいか、ケモリアで別れた時よりなんだか大人びて見えるわ。


「では私は、馬車にいらっしゃる仲間の皆様を案内してきますわ」


 マリーシェラ妃が立ち上がったので、わたしは慌てた。写真を撮らせていただき、ピホにこの方が迎えに行くから、攻撃しないようトークする。念のためにパナマ草とピホ卵も持っていってもらう。


 どうやらわたし達は、この離宮にしばらく滞在しないといけないようだよ?

 リリーティア妃は早速他の使用人に、泊まる部屋の準備とかさせている。


「そういえばリリーティア妃には皇帝陛下との間にお子様がいらっしゃるとか……わたし、男の子の喜ぶものがよくわからなくて」

「ふふ、いいのよ。でも気遣ってくれてありがとう」

「もしこういうのがお好きなようでしたら、……」


 わたしはそっと、アオリハを立つ前にリガルさんにいただいた、色々な解体絵巻皿を出してみた。


 リリーティア妃とセシリア妃は、凄い顔をした。

 あっ、すみませんっっ。やっぱりダメやちゃね。


「……これはいただけないわ」

「あっ、そうですよね……」

「皇帝陛下が欲しがるもの」

「えっ?!」


 そっち? やっぱりリガル画伯作だからけ?


「これはシュベルクランでは有名な、北の蛮族の将を討ち取った騎士物語。こっちは魔族の料理人がその包丁で鳥の魔物を捌いたら、中から金貨が出てきた逸話ね」

「こっちはノクレイドラゴンがアイアンリザードを捕食する様子ですわ」


 ん? あれ? それはもしや……。まさかリガルさん、あそこにスケッチとかしに行ってたのかしら……? ありえる……。


「この……ゼルヴァスヘルベインに同胞が食べられてる絵……モデルはアシャールね。リガル叔父様もなんでこんな絵を描いたのかしら」

「え? そんなの混ざってました?!」


 じっくり見てなかったから、気づかなかった。


 他の解体絵巻とは、一枚だけ金彩装飾の精密度が段違いだ。

 黒く巨大なドラゴンに、その翼を喰いちぎられてもまだ金の髪のフェイ族の青年はドラゴンに剣を突き立てている。その背後に、逃げ惑うフェイ族の姿が描かれ、最後に翼を半分喪い、血を流して倒れる青年をライフォート神が癒す姿が描かれて終わっている。


 わたしはその皿のアシャールさんを、そっと撫でた。ぐすりと涙目になってしまう。慌てて涙を拭いながら、お皿をしまった。


「その、皇帝陛下も言っていた、ゼルなんとかって、ドラゴンなんですね……」

「ええ、あのドラゴンが住み着いたせいで、私達の国は亡びたの。フェイ族の翼を食べる、凶暴かつ、魔物を活性化させるドラゴンよ。そしてこの国は、そのゼルヴァスヘルベインを絶対的な強者として、神と崇めてるわ」

「そのドラゴン狩っちゃったら、陛下に怒られちゃいますか?」


 リリーティア妃は少し考えた。


「いいえ。弱肉強食、強者を崇めるのが魔族だもの。狩られた時点で、それはもう神ではなくなるわ」


 相手はアシャールさんの翼を半分喰っちゃってるんだって。スキルちゃん、いけそう?


『るるん』


「なら、安心ですね」


 わたしの呟きは、近づいてくるキトキトな鳴き声にかき消された。


「あら? なにこの鳴き声……」

「すみません。うちの魔物の声ですが、なんで聞こえて……?」


「キットー」

「キトキットー」


 扉が開かれると、シロに乗った奈々美さんとミケ子とムウ、クロに乗ってるマリーシェラ妃とアシャールさん、そしてふんわり飛んでるピホが現れた。


 そう、この離宮も、中のお部屋も、キトキトコンビが余裕の広さなのよ。

 背中に乗ってる人達を降ろすと、キトキトコンビはわたしの側にきて、私よりデカい顔でわたしの顔を挟み込んですりすりする。やめて。地味に攻撃力高いがいちゃ。


 アシャールさんが奈々美さんを紹介してる間に、ムウはわたしの膝に乗り、ミケ子がその上に乗り、ピホが最後にミケ子の上に乗るので、わたしは楽器を鳴らすかのように、三匹をシャラランと撫でていく。そしてその拍子の合間に、キトキトコンビに顔をぷるぷるされるのよ。シャララン。




「決めましたわ、お母様、私平民に戻って叔父様達とネコノメに行きます!」

「ダメに決まってるでしょう。ゼルヴァスヘルベインがいるのよ!」


 マリーシェラ妃がそう言い出して、当然リリーティア妃は反対した。


「それはなんとか出来るアテがあるそうなので、信じることにします。三人だけでは事務や金銭管理など、裏方がいなくて心もとなくありません? その点、わたしは適任ですよ。それに叔父様が本当にこの国に敵意がないか探ることもできますしね! という訳で、私は陛下の許可をもらいに行ってきますわ」


 そう言ってマリーシェラ妃はクロに乗ると去っていった。

 行動が早い。


「あの子……っ」


 リリーティア妃がため息をついた。


「なんかそう言うと思ったわ」


 セシリア妃は肩を竦めた。


「良いの? アシャールさん」

「構いませんよ。スマホを売るならマリーシェラに任せれば、私達は開発に専念できますしね」

「えっと、アシャールさん。さすがにそういう問題じゃないと思います。香子(かおりこ)さんが何かあったら即攻撃して来るような、戦闘民族の国に、欲しい素材があるから行ってきますと出ていったような想像をしてみて下さい。リリーティア妃の心配はそれです」


 猫の目の良心、奈々美さんが割と的確な指摘をした。


「なるほど……そういうことでしたら、私達を信じて欲しいとしか言えませんね」

「私達?」


 リリーティアさんはアシャールさんを見た。


「ええ、私達です」

「そう……ようやく一人で背負い込むのをやめたのね……」


 アシャールさんは黙って微笑んでいた。リリーティアさんは、そっと諦めたように覚悟したように、柔らかく息をついた。

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