表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルちゃん爆進⭐︎おばさん、気づけば異世界で最強夫婦してました (旧:ノンタイトルおばさん〜勇者でも聖女でもなく〜)  作者: 天三津空らげ
7章 我儘言ってもいいですか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/37

25 人を拾ってきてはいけません

「ピホウ」


 名入れをお願いしたカップを受け取りに戻るタイミングで、ピホを先頭にミケ子とたまごの仲間たちも戻ってきた。

 気のせいでなければ、キトキトコンビは二匹で人を一人、上着とズボンを咥えてない?


 ちょっ、生きてる人?! しかもシャツもズボンも引っ張られて、お腹が見えてる! 危ない! あぶなーい!


「ピホ。ピホウ、ピピオウ」

「え? ピホ達をつけ回して、パナマ草を盗み食いしようとした悪い人間??」


 キトキトコンビがぺっと吐き出した人は、12歳くらいの少年に見えた。


「うう……」


 彼はヨロヨロ上半身を上げて、アシャールさんを見て、助けを求めるように手を伸ばした。おでこにピホの足跡がくっきり付いている。


「やけにくっきりした足跡ね。なになに〈ピホの隷属印 印をつけられたものは皆、ピホの下僕〉……。ピホちゃんや?」

「ピオゥ……」


 ピホはほんのり目が赤い。

 魔物の攻撃性が出てきてるんだわ!


「ピホは頑張ってみんなを守ってくれたのね。それに殺したり大怪我をさせてなくって、すごく偉い!」

「ピホ」


 よしよし。ピホをナデナデして落ち着かせる。


「とりあえずこの男の子の言い分も聞いた方が良いわよね?」


 わたしは一応アシャールさんと奈々美さんを見た。

 アシャールさんは冷淡に言った。


「いいえ。そこら辺に転がしておけば良いですよ」

「うう……! うう……!!」


 ピホの隷属印のせいで喋れないみたいだし、足も動かせないみたい。懸命にアシャールさんに何か訴えようとしているように……見える?

 奈々美さんもそう思ったようだ。


「この子、もしかしてアシャールさんの知り合いですか?」

「まさか? 初対面ですよ」


 奈々美さんの問いに、アシャールさんは片眉を上げて皮肉気に応える。

 はい、これ。知り合い確定でやちゃね。


 奈々美さんの表情が険しくなった。


「私……アシャールさんは今まで親切だったし、香子(かおりこ)さんが受け入れてるなら、二人の間に口出しするものじゃないと思ってたんです。でもダメです。これは流石にダメですよ! 子供がいるのを黙っていて、しかもその子を知らないふりするなんて、そんな最低男に香子(かおりこ)さんを任せられませんっ!!!!」

「え?! アシャールさん子持ちだったの? は、……言われてみれば確かに似てる……」


 よく見ると少年の髪もアシャールさんと同じ金糸の髪……瞳は翠だけど、どことなく顔立ちも似て美少年だわ。


 アシャールさんは一瞬何を言われたかわからないという呆けた顔をして、珍しく澄ましたお顔を崩した。


「誤解です! 私に子などいません。そもそも不実があれば聖婚は成り立たないのです! 私と香子(かおりこ)が夫婦であること自体が、私の身の潔白の証そのものです」


 えーと。


香子(かおりこ)!」


 アシャールさんがかなり切羽詰まった顔で見つめてくる。ワァ、カオがイイですね。そんな表情も決まってます。


「えーと、お子さんじゃないことは、いま鑑定してわかりました。でも初対面だなんて嘘をつくから、こんな誤解が生まれたので、今後はそういうのやめてね?」

「……はい」

「奈々美さんもわたしのために怒ってくれてありがとう」


 わたしはそっと奈々美さんの手を握って、ぽんぽんとした。


「すみません、アシャールさん。私が誤解したせいで……」

「いいえ、全て私の不得がなすところ……彼は我が叔父リガルです」


 奈々美さんは、ますます納得いかない顔をした。

「叔父さん……ですか?」


 わかる。わたしも鑑定でお歳を知ってびっくりよ。900歳ですって。

 お店からおばあさまが出てくる。


「そこじゃゆっくり話ができないでしょう? 裏の工房のほうにいらっしゃいな」


 あああっ。お店の前でご迷惑をかけてすみませんっ。




 ピホにリガルさんを自由にしてもらう。しかし隷属印自身は消えてない……よ?


「ひどいよアシャール! おいらを見殺しにするなんて!」

「魔物に隷属させられるなんて、フェイ族の恥ですよ。私もまさかそんなフェイ族が存在するとは思わず、別人かと……」

「すごいよね! この子こんな小さくて綺麗なのにめっちゃくちゃ強いんだ! それにこんなスキルも持ってるなんて最高だよね! それからそっちの魔物達も……、……で……だし……」


 暑い。

 ……あっつい。

 背中にキトキトコンビがくっついて、お膝にムウとミケ子。そして肩からぴっとりとわたしの顔にくっついているピホ。物理で暑くて、わたしは汗をダラダラかいていた。


 にしてもリガルさん、話が止まらないわね。挨拶する間もなくアシャールさんにばかり話しかけてる所をみると、人見知り……ううん、コミュニケーション能力については、わたしも人のことが言えないわ。考えるのを放棄した。


 奈々美さんがそっと聞いて来た。


「あの、この方すごくお若いんですけど、本当にアシャールさんの叔父さんなんですか? ズボンの裾も短いし」

「鑑定だと900歳くらいなの。不思議ね」


 磁器工房のおかみさんで、お店でわたし達の対応をしてくれたおばあさまが、名入れを頼んでいた品物を持って来てくれた。


「フェイ族っていうのは背中の羽根を仕舞ってしまうと人族と見分けがつかないけど、不老でね。自分の意志で外見の年齢を止められるそうなのよ。身の回りでずっと歳を取らない人がいたら、それがフェイ族。この人も私が小さい時から、ずっとこのままなのよ」

「そうなんですね」


 あ。とうとうアシャールさんが溜まりかねてリガルさんの頬を鷲掴みにして圧をかけだしたわ。止めた方が良いかしら?

 あら、そういえば。


「アシャールさんはパナマ草のことは知らなかったのに、リガルさんはご存じだったんですね」


 さりげなく声をかけてみたら、リガルさんはアシャールさんの手を離れてこっちに向かって、


「ピオウ!!!」


 来れなかった。

 ピホが鳴くと、リガルさんガチっと固まった。


「なんで?! 鳥くん、おいらとも仲良くしようよ!」

「ピピピオウオウ!!」

「集めてた果実を潰しちゃったのは、謝るからぁ。ごめんねぇぇ」

「果実? みんな果実は食べないわよね?」


 わたしが首を傾げると、ミケ子がぐいぐい頭を押し付けてきた。ムウも、キトキトコンビも、ピホも瞳がウルウルしている。


「もしかして、わたし達へのお土産だったの!?」

「み」

「キト」

「キト」

「ムウ」

「ピピ」


「「!!!!」」


 生後一年も経たない、こんな小さな子たちが、わたし達のためにお土産を……。

 わたしと奈々美さんは感動のあまり涙を堪えて、みんなをナデナデする。


「えらいです……。まだみんな生まれて数か月なのに……」

「本当、ありがとね。その気持ちだけですごい嬉しいわ」

「叔父上、許されない罪を犯しましたね。まずはこちらの代金を支払って誠意を見せてください」


 こらこら。アシャールさんや。


「ん。おかみさん、あとでおいらに請求して」

「いやいや、これはわたしがちゃんと支払いますよ」


 おかみさんが苦笑いした。


「リガルに支払わせてやってくれないかい。じゃないと、その子たちはずっとリガルを許せないままじゃないかしらね」


 その言葉に、わたしは目から鱗が落ちた。この子達にずっと許せない人ができるのは、確かにイヤ。


「こちらのリガルさんが今回のお詫びに、わたしが買う品物の代金を支払ってくれるそうです。みんなそれで許してあげて?」


 ミケ子とたまごの仲間たちは、しぶしぶ頷いた。


「というわけでリガルさん、ありがとうございます」

「お礼はいいよぉ。大事な人へのプレゼントを台無しにした、おいらが悪かったんだから。……あ! ええと、おいらはリガル。アシャールの叔父でこの工房で絵付け師をしてます。お嬢ちゃんは、なんでアシャールの奥さんに?」


 わたしの左手の中指の印を見て、リガルさんは聞いた。


 お じ ょ う ち ゃ ん !?


「えっと……香子(かおりこ)です。知らない間に妻になってました。今はアシャールさんと冒険者やってます。こちらは同郷の奈々美さんです」


 うん。900歳からしたら、わたしはお嬢ちゃん。もう、それでいい。


「リコちゃんとナナちゃんかぁ。んん? リコちゃんなんか怖いこと言わなかった? ダメだよ女の子が知らない間に結婚なんて! 心配だなぁ。アシャール、ちゃんとリコちゃんのこと見ててあげてよ」

「ええ、任せてください」


 いや、犯人その人です。


「リコちゃんパナマ草のこと聞きたいんだっけ? あれ? アシャール神官なのになんで冒険者やってるの?」

「結婚しましたし、シュベルクランに戻って腰を落ち着けようかと思いまして」

「えーさみしいよぉ。向こうの職人の紹介状書いておくから、家を建てたりする時に声かけてやってよ。アオリハを出る前に取りに来て」

「わかりました」


 リガルさん、ころころ話題が変わる人みたい。


「あ、パナマ草だけどね。おいらのばあちゃんが素材採取スキルを持ってたらしいんだ。おいら末っ子だし、おいらもアシャールも実際会ったことないばあちゃんなんだけど。おいらがまだ10かそこらのちびっこの時にかな……母ちゃんがこっそりばあちゃんが採取しておいたパナマ草のお茶を飲んでてさ。内緒だよって分けてくれたんだ。その時パナマ草の話も聞いたんだよ」


 リガルさんは足をもじもじと揺らした。


「だから、その子達がパナマ草を食べてるのを見たら、母ちゃんのこと思い出して、どうしても欲しくなったんだ。本当にごめんな」

「そういうことでしたら……」


 わたしは紙袋の中に乾燥させたパナマ草を入れて、リガルさんにわたした。


「どうぞ。パナマ草は採取スキルのレベルで味も変わるので、想い出の味の保証はできませんが……」

「いいの?! リコちゃんありがとう!」

「いいえいいえ。ところでパナマ草は花が咲くのですか? パナマ草自体はよく見かけるけど、花が咲いてるのはあまり見なくて」

「ああ、それね……。パナマ草は乞食草って言われて雑草扱いされてるよね。人や魔物に踏まれたのからは花が咲かないんだよ。それから花を咲かすには月光の魔力をたっぷり与えないとダメなんだ。で、花が咲いた後には小さい綺麗な月光色の実が成るんだよ。残念ながらおいらは摘んで食べられないけど、リコちゃん食べたらどんな味だったか教えてよ」

「摘んだらピホに届けさせますね」

「ピオゥ?!」

「本当?! 期待しちゃうよ!」


 リガルさん、900歳とは思えない、見た目通りの内面ですね。うっかり歳上の方への敬語が抜けてしまいそう……。

 しかし月光の魔力かぁ……夜更かしして素材採取するのはちょっと無理そうだし、やっぱり空間収納内以外で、ちゃんとしたパナマ草農園が必要よね。

もしも面白ければ、ブックマークと評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ