第二十二話
…早朝、宿は異様な静けさに包まれていた。
ラミレスは起きてきていつも通りリビングに行く…だがそこにはもう、本来いるべきはずの男の姿がなかった。
「ルド…?」
胸騒ぎを覚えたラミレスは宿中を探し回る、ルドルフの部屋、風呂、トイレ、屋根裏、倉庫…どこを見てもルドルフの姿はないまま…
「ルド、あの馬鹿…まさかっ」
ふとリビングの机の上に手を置く、するとそこにあったのは書き置き…長年の付き合いで字の癖でルドルフのものだと容易に感づいたラミレスは慌てて手紙を読む、すると次第に他のみんなも起きてリビングへ集まってくる。
「おはよう、どうしたのそんなとこに突っ立って?」
「ラミレスさん?」
「…如何召されたか?」
「ああ、みんな…これ」
と、ルドルフの書き置きをみんなにも見せる
「それって、まさか…」
「ああ、間違いない…ルドの字だ」
「な、なんて書いてあるんですの?」
「ああ、読むぞ」
と、みんなにも読んで聞かせる…その手紙にはルドルフの正直な思いの丈が赤裸々に綴られていた。
「ルド…」
「…馬鹿よ、やっぱり大馬鹿よ!う、うぅ…」
手紙を聞いて大粒の涙を流すリーネ
「なんで……一人で行くのよ……どうして、頼ってくれないの……!」
「……ルドルフさんは、いつもそうです」
声は小さいが、確かに震えている。
「全部、自分で背負って……正しいと思ったら、周りを置いて行って……」
涙が、ぽろりと地面に落ちた。
「……それでも、優しいお方なんですわ」
嗚咽を漏らして泣くハーミアとリーネ
重苦しい沈黙を破ったのは、シドウだった。
「……ラミレス殿」
シドウは、ラミレスを見る。
「貴殿は、この先どうしたい?」
短く、逃げ道のない問い。
ラミレスは答えなかった、拳を握りしめ、歯を食いしばる。
(頭ではわかっている…ルドは敵地へ、それもたった一人で突っ込んだ…魔王軍幹部救出、正気の沙汰じゃない)
ラミレスは、書き置きをぐしゃりと握り潰した。
「……あいつさ」
声が、低く掠れる。
「初めて会った時から、どこか危なっかしかった…正義感だけで前に出て、自分が傷つくのは後回しで……」
歯を食いしばり、叫ぶように言う。
「なのに……肝心な時ほど、誰にも頼らねぇ!」
ハーミアとリーネが、息を呑む。
ラミレスは、顔を上げた。
その目は、怒りと悲しみで真っ赤だった。
「勇者だとか、世界だとか……そんなもんより先に!」
一歩、前に出る。
「それでもルドは……俺にとって、唯一無二の”親友”だから……!」
声が、震える。
「失うわけには……いかねぇんだよぉ!!」
涙ながらに叫ぶラミレス、頭を抱えて膝をつく
「…でしょうな、貴殿ならばそう言うと思ったでござる」
小さく笑うシドウ、そしてラミレスの肩に手を軽く置き
「であれば、やることは一つ…そうでござるな?各々方」
「……ええ、勿論です!」
「放っておけるわけないでしょ!それに…」
一拍置いた後、リーネは続けた
「絶対助けて、たっぷり説教した上にうんと高い酒奢らせてやらないと気が済まないしね!」
「…お前はこんな時でもブレないなぁ」
苦笑交じりに笑みをこぼすラミレス
「よしっ!全員腹は決まったな!じゃあいくぞ!魔王城へ!」
「うん!」
「ええ!」
「承知!」
四人は、それぞれ装備を整え始めた。
これは、命令じゃない…作戦でもない。
ただの、仲間としての選択。
ラミレスは、魔族領の方角を睨みつける。
「待ってろよ、ルド!一人でケジメつけるなんて…許さねぇからな」
剣を背負い、歩き出す。
物語は、
「勇者 vs 世界」から――
「仲間 vs 運命」へと姿を変えた。
To be continued...




