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ラヴ・ソルジャー ~悪魔に恋しちゃダメですか?~  作者: 紫龍院 飛鳥


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第十九話


早朝。

勇者パーティーの拠点に、王都からの急使が到着した。


「勇者ラミレス様、王命を携えて参りました」


使者から書状を受け取り中身を確認する

封蝋を解く音が、やけに大きく響く。


「――魔王軍先遣部隊を確認 場所は《灰鱗渓谷》 即刻、勇者パーティーに討伐を命ずる」


ラミレスは短く息を吐いた。


「……来たな」


リーネが顔を曇らせる。


「灰鱗渓谷って…たしか魔王軍の補給路に近い場所じゃない」


「つまり、本格的な衝突の前段階だ」


ルドルフは黙って地図を見つめていた。


(補給路……後方支援……)


どうしても、

あの中性的な技術幹部の顔が浮かぶ。


「ルド?」


「あ、ああ。すまん」


ラミレスが剣を肩に担ぐ。


「今回は様子見じゃ済まねぇ……全員、覚悟しろ」



・・・・・



【同時刻 魔王城】


魔王城深部、作戦会議室。

魔王を中心に幹部が揃い円卓を囲む、その視線の先には魔王軍特別幹部リオ


「灰鱗渓谷に餌を撒いた…勇者パーティーは必ず動く」


幹部達に淡々と告げるリオ


「罠、というわけですか?」

「半分はな」


重々しい声が続く。


「討伐されても構わぬ部隊だ…本命は、勇者パーティーの“中身”を測ること」


水晶盤に、

勇者パーティーの姿が浮かび上がる。


「特に――」


映像が、

重戦士ルドルフを映す。


「この男だ」


リオが一歩前に出る。


「進言します」

「申せ」

「彼は、戦力としても脅威ですが…それ以上に、不安定な変数です」

「不安定?」

「感情が戦闘力に直結するタイプ…もし、彼が“守るべき存在”を失えば…」

「……暴走、するか」

「はい」


沈黙。


「ならば」


魔王の声が、冷たく落ちる。


「その存在を、揺さぶればよい」


リオの指が、僅かに震えた。


「……悪魔騎士ムエルタを、前線に?」



・・・・・



ムエルタは呼び出しを受け、単身謁見の間に立っていた。


「悪魔騎士ムエルタよ」

「はっ」

「灰鱗渓谷に向かえ」


心臓が、跳ねる。


「勇者パーティーが来るように仕向けた…前線指揮を任せる」

「……!」

「期待しているぞ…“冷酷非道なる悪魔騎士”よ」


玉座からの視線が、突き刺さる。


「……御意」


踵を返した瞬間、ムエルタの背に声がかかる。


「ムエルタちゃん」


振り返ると、リオがいた。


「…今回の作戦、アンタが仕組んだのか」


鋭い視線でリオを睨みつけるムエルタ


「うん、そう…」


悪びれもせず即答するリオ


「ボクのことを恨むかい?」

「いや、お前はそんな奴だろうと薄々思っていた…」

「そうか、でもね…」


リオは一歩近づき、低く告げる。


「君には、選択肢がある」

「……何?」

「“悪魔騎士”として戦うか、それとも“一人の女”として彼を守るか」


ムエルタは唇を噛んだ。


「……簡単に言うな」

「簡単じゃないさ」


リオは珍しく、真剣だった。


「だからこそ、君がどう選ぶかを、ボクは見届けたい」




【灰鱗渓谷】



冷たい風が吹き抜ける。


「……気配が濃いな」


ラミレスが剣を抜く。


「来るぞ!」


魔王軍兵士が岩陰から姿を現す。


「数は多いけど、統率が甘い!」

「前衛、俺が行く!」


ルドルフが前に出る。


剣が唸り、次々と敵を倒していく。


「やっぱり、強ぇな…ルド」


だが、その時……


「…そこまでだ」


よく通った声が響いた。


霧の向こうから、

漆黒の鎧が現れた。


「……ルタ、さん」


悪魔騎士ムエルタ…互いに、視線が絡む。


「……勇者パーティー」


声は冷たい。

まるで、別人のように。


「魔王軍幹部の名において、貴様らを排除する」


ラミレスが息を呑む。


「なんだこの気迫、今までと段違いだ」


「……」


ルドルフは答えなかった。


(何故…?どうして、こんな形で……)


ムエルタの剣が、静かに構えられる。


(ルド…私はっ…)


心が、悲鳴を上げていた。


「来い」


その一言で戦場の空気が一気に凍りつく。



…剣と剣がぶつかり合う。


「くっ……!」

「……っ!」


力は拮抗している。

だが、互いに“本気”ではない。


(当てられない……!)


(斬れない……!)


だが、周囲の戦況は容赦なく進む。


「ルド!集中しろ!」


「分かってる……!」


その瞬間…

魔王軍の魔法攻撃がルドルフの死角から放たれた。


「危ない!」


ムエルタが、

反射的に彼を突き飛ばす。


放たれた光線は容赦なくムエルタの右肩を貫いた


「…ル、ルタさんっ!!」

「えっ…!?」


ルドルフがそう叫んだ瞬間、耳を疑ったラミレス達


「ルド、お前今…何て?」


すると、そこからいくつもの魔法光線が勇者パーティーを襲った。


「くっ、これ…不味いんじゃない?」

「一旦、退いた方が得策かと…」

「ああ、おいルド…」

「…っ」

「話は、帰ってからだ…」

「……」




撤退する最中、ルドルフの胸中ではこんなことを考えていた。


(助けてくれた…敵のはずなのに……)


走りながらラミレスが近づく。


「……ルド」

「……ああ」

「今はまだ聞かねぇ」


ラミレスは、彼の肩を叩いた。


「だが一つだけ言う」

「……」

「次は、迷えば死ぬぞ」


重い言葉だった。



・・・・・



ムエルタは、城の医務室で包帯を巻かれていた。


(私は今日、魔王軍幹部として失格だった)


だが同時に…


(それでも…ルドが生きてるなら…)


胸に、温かいものが残る。


斯くして均衡は崩され、隠し通すことはもうできない。


次に剣を交える時、

どちらかが――

決断しなければならない。





To be continued...

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