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最終話 スローライフを定義しよう

「あ!そういえばアキ達は!?」

「結界であちらに遮断、保護しております」

そちらを見ると、碧く透き通るガラスのドームのような結界に覆われて、ただ事態を飲み込めず呆然と立ちつくしている三人がいる。

よかった取り敢えず無事みたいだ。

「…彼らの処遇は?」

「この後、スリープの魔法で眠らせ、記憶を処理、つまりお嬢様との記憶を消した後、家に帰します…今後彼らとは…出来うる限り接触は控えて…他人でいてください」

記憶を処理…。

「そう…ちょっと彼らと話せないかしら」

「ふむ?どうして?」

「…こんな事態になって彼らの記憶をいじることになった原因は私だから、謝りたいの」

「いいですが、記憶を処理することは言わないでください、作業に影響が出る可能性があります」

「わかったわ」

「では結界を解きます」

結界が解かれる。

そして私はアキ達近づき…

「お、おいリア」

「ごめんなさい!」

全力で頭を下げる。

「私のせいであなたたちはこんな事態に巻き込まれたの、本当にごめんなさい!」

全力で謝る。

「…なあ、リア」

と、アキが声をかけてくる。

「な、何かしら?」

「お前…なんで俺たちを命懸けで守った?」

「え?」

「俺たちが死んだ方がお前には都合いい、さらに俺たちを差し出せば命を危険にさらすことはなかった、そうだろ?」

「…」

アキ…ふふ…あなた状況分析能力、神童の類ね。

理由、それは

それは…

リア・コーザリティーにできたはじめての友達だったからだ。

そう


「初めてできた…友達だったから」


それだけだ。

「は?」

アキがぽかんとした顔をしている。

「それだけ?」

「…うん」

それだけだ。

「くく、はっはっはっはっは!」

唐突にアキは笑い出す。え、な、何事?

「え、えーと」

「はっはっは!リアお前って最高に馬鹿だな!」

え、ば、馬鹿?ば、罵倒された?

「俺はそんな浅い関係の奴らのために命を掛けねぇな、いや秘密に関しては命以上のリスクか?」

…察しが良すぎる、この少年…たしかに世界大戦で出る犠牲の可能性は命以上にリスクだ。

私は無意識に1000万の命より、3の命を優先していた…のか?

「まあ取り敢えず、重要な事実がある」

「…重要な…事実?」

いったいなにが…

「リア、お前は俺たちを命懸けで守った、それだ、俺たちにとって重要なのは」

「へ?」

「お前は俺たちを巻き込んだと思っているみたいだが、俺たちは自分で遺跡に入る選択肢をしたんだ」

「それは…私が止めなかったから…」

「いや、俺たちが遺跡に入る判断をした「ガキの身分だろうと選択には自分の責任が伴う」旅のにーちゃんがそう言っていた」

「…」

「だからお前の責任じゃねぇーよ…リア、お前はただ俺たちの命を救ったんだ、お前が謝るんじゃなくて、俺たちがお前に感謝すべきなんだよ」

ああ、この子は、アキは…前世で大人だった私よりはるかに…大人だ。

私の罪悪感を察してそれを軽減しようとしているの?

しかし、仮にも大人だった私がそれに甘えるわけにはいかない。

「…で、でも」

「はぁ…じゃあこうしよう、リアは俺たちに後ろめたさがある、そして俺たちはリアに借りがある、つまり」

「…?」

「つまり、イーブンだ、ということでこの件の貸し借りはなしだな」

「…貸し借り…なし?」

「そう、だから貸し借りなしの対等な…友達だ、俺たちは」

「対等な…友達だち?」

「ソイ、メルお前らはどうだ?」

「ふ、ふん、ちょっと脅されたくらいで僕のリアさんへの思いはかわらない…あ、いやこの思いってのは友情的なものであって」

「リーアちゃん!脅されたときはちょっと怖かったけど、私はいつでも、かわいい女の子の味方よ!」

一部撤回する、アキだけじゃない、ソイもメルも少しずれているけれど…とても大人だ。

…ああ。

「脅してごめんなさい」

「問題ねぇな」「え、ええ問題ありません」「いーよリアちゃん、私が許す!」

「危険にさらしてごめんなさい」

「それは命を守ってもらった俺たちが感謝したいが、お互い様ということで」「ええ、そうです!」「うん!」

「そして…ごめんなさい」

「?何に対しての謝罪だ、まあ取り敢えず許すぞ、なんせ俺たちは友達だからな」

…「対等な友達」か、なんと心強い物なのだろう、聖剣より、帝国軍の無人兵器軍より、私の能力より…ずっと、ずっと心強い。できればずっとそうでありたい。

「ありがとう…私の対等な友達」

「は、水くせぇこといってんじゃねー」「リ、リアさん!」「なんか…照れる」

そして私は背を向ける。

「お、どうした、泣いたか?」

アキが茶化してくるふふ…全く。


「アンドレ、もう…いいわ」


「…スリープ」

彼らから、対等な友達から、永遠に背を向ける。

倒れそうになる彼ら三人をアンドレが素早く回り込み支える。

「なっ…リア、お…ま…え…」

「元気でね、私の最初の最高の対等な友達のみんな」

「リ…ア…」

そして眠りに落ちる彼ら。


憎たらしい運命という奴はきっとこう囁いたのだろう、「お前にそんな心強い…そして優しい物を持つ資格はない」、と。


「お嬢様、赤龍はインガ皇帝以外には破壊できません、ゆえに…」

「わかったわ…出でよ、聖剣」

とりあえず聖剣を召喚する。

『ま、待ってください皇帝陛下!私を殺せば…』

とけた赤い塊が何事か話しかけてくる、その姿でどうやって話しかけているのやら…まあどうでもいいか。

そして…

私の目標は…スローライフだ。

ここに、今一度、明確に、私の考えるスローライフを定義しよう。

スローライフとは…彼らのような人たちが傷つくことなく私も安心して日々を謳歌できる、それが私の考えるスローライフだ。

『お、お許しを皇帝陛下!何卒!なにと』

ゆえに…それを妨害するものは…なんであろうと…私が…この世から…


「しね」


抹消する。

















俺の名前はアキ、コード村の農民の子供だ。

今日は家の手伝いがない日だ…それは俺のダチのソイとメルも同じだ。

だからあいつらもどうせ俺たちの秘密基地にいるだろう。

「これは…」

「うーん」

ほらいた、秘密基地の小屋の中でそこら辺から拾ってきたぼろい机を囲んで、唸っている。

…いや、何事だよ。

「どうした?」

「あ、アキ」

「アキ君、なんか謎の物体が置いてあって」

そう言ってメルは机のブツを指さす。

それは…これは…ちょっとだけ見たことがある、貴族や都市の住民が食べる菓子、たしか…クッキーっといったか?それが、出来立てと思われる状態で木の器に入って、置いてあった。

…なぜに?

「…これは食べ物、貴族とかが食べる菓子だな」

「ええっ!」

「なぜここに」

それが謎だ…しかも出来立て…うん?

なんか器と木の間に紙が挟まっている。

それを取ってみる、割と上質な紙だ。

「ん、なんか書いてあるな」

「え?」

「なになに?」

その紙にはこう書いてあった

―対等な友達より―

…は?なんだこれ、なぞかけか?

ふむ…でも…なんか。

俺は机のクッキーを一枚とり口に放り込む。

うお、うめぇ。

「ちょ、アキ君!毒とか入ってたらどうするの!?」

「そ、そうだよ」

いや、こんなとこにわざわざ毒入りクッキーなんておいておく奴なんているわけねぇ…。

まあでも普通は躊躇するよな…だが

「…俺の勘が、大丈夫だと言っている」

「勘って…」

勘とはいったが…なぜか俺は危険ではないと確信している。なんでだろうな?

「まあ、俺一人で食うから、気にすんな」

「な、それは…」

「あ、アキ君の勘はよく当たる…だから私もクッキー食べる―!」

「な、なら…あれ…なんか僕も食べても大丈夫だと思えてきた…」

本当になんでだろう、というかクッキーうめぇな、誰だかしらんけどありがとよ、

[対等な友達]。


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