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第22話 レッドモヒカンチームの歴史

 レッドモヒカンチームは、カホンワ王国より海を越えた遥か西にある国、カハワギ王国から生まれた冒険者チームであった。

 カハワギ王国は400年前に生まれた国である。当時は国などなく原住民が集落を作っていた程度だった。見渡す限りの平原や森林、天を貫くような岩山しかない国だという。

 それをナーロッパ連合が植民地として開拓に来たのである。彼等は広大な土地で麦畑を作り、手つかずの鉱山の開発を夢見ていた。

 もちろん大地を荒らすよそ者を許すわけがない。彼等の戦いは300年にも及んだという。


 現在ではナーロッパにあるズゥコ王国の貴族、カハワギ男爵の名前が使われていた。彼はズゥコ王国において大変貧しく、当時は疫病や紛争による難民が溢れかえっていた。カハワギ男爵は彼等を率いて新天地を開拓したのである。


 カハワギ家は法律を重視していた。当時のズゥコ王国は血統主義であり、当主は長男が能力の有無に関係なく就くことになっていた。カハワギ男爵は新天地にそれを持ち込まず、投票によって有能な人物を選んでいた。もちろん最初は反発する者も多く、多くの血が流れた。


 カハワギ男爵の子孫は当初原住民を奴隷にして、農業を開いていた。当然だが原住民たちも反発する。原住民たちは精霊魔法を駆使し、よそ者を殺していった。

 当時の当主たちは原住民の精霊魔法を理解できず、悪魔の所業と決めつけた。

 のちにスキスノ聖国の異端審問官たちも入国し、カハワギは混とんの時代を過ごしていた。


 レッドモヒカンチームのリーダー、フチルンはその原住民たちの中で勇者と呼ばれた男の名前を受け継いでいた。

 彼はカハワギ王国の中原に住むズムルケ族の族長の息子だった。彼は敵を知るにはまず懐に飛び込まなくてはならないと、カハワギ王国にある王立大学に入学したのである。

 そして彼は膨大な知識を詰め込み、教授の立場を手に入れたのだ。もちろん当時はいじめや嫌がらせがあったが、現在ではいい友人関係を築いているという。


 フチルンは狭い部族の中で一生を終えることを恐れていた。自分たちはどんな世界に住んでいるのか、そして世界の仕組みを知る必要があると考えたのだ。

 そもそもズムルケ族はそうだが精霊魔法以外を忌み嫌う部族は多い。フチルンはその中で少数派である。そこでフチルンは各部族から少数派を集め、世界を旅することにした。自分の身体には精霊の文様を入れる。これによって気温の変化はもちろんの事、あらゆる衝撃に耐えることが出来るのだ。

 だが他国では股間を丸出しにすることは出来ない。なので竜の角で作ったチンコケースのみを装着している。

 

 彼は冒険者として世界を回った。そこで彼は疑問を抱く。カハワギ王国、フチルンの部族では母の腹と呼んでいる。人間は母親の腹から生まれるためだ。

 そこ以外の人種はみんな同じような姿をしていた。どこも王侯貴族が貴族階級を維持していたのだ。そして変化を忌み嫌うのも似ている。

 さらに魔王が生まれて滅んだ国を調べたが、どこも似たようなものであった。国王が我儘な王妃や側室の言いなりになり、親族を皆殺しにしていたのだ。その後女が魔王となり、身近な男が勇者となって消滅するのが定番である。

 

 ☆

 

「例外はゴマウン帝国とカホンワ王国時代だ」


 フチルンがナサガキの北部にある森でキャンプを開きながら仲間に説明した。彼等は各部族の族長の子供か従者であった。全部で7人。フチルン以外は毎年2人は外れ、新しく2人が追加される。3年間は世界を回っているのだ。もちろん大学の講師も忘れない。


 フチルンは40代で、屈強な体つきである。赤銅色の肌に岩のようにごつごつとした筋肉を持っていた。髪の毛は赤毛のモヒカン頭である。両肩や両腕、胸部や背中、太ももに魔法陣の刺青を施してあった。精霊魔法に必要なものである。

 他のメンバーはデマカラ、ナガンチ、ソンチ、ケデッカ、イチボン、ワチレンの6人だ。

 イチボンは禿頭で頭にイボイボがついている。眉なしで首が長い。ワチレンは頭に線が一本入っていた。目が大きく唇が厚かった。この二人は今年で卒業し、新しくフナタリとパチルンが入る予定である。


「カホンワ王国時代は確か、初代ゴマウン帝国皇帝ゴロスリが逃げ出したんですよね?」


 イチボンが手を上げて訊ねた。


「そうだ。長い歴史で魔王が誕生した国では、例外なく国王、もしくは王太子が自分以外の肉親を殺害している。もっともゴロスリは魔女故にうまく逃げ出せたかもしれんが」


 フチルンが答えた。彼は世界各国の歴史を調べていた。


「そうなると、ゴマウン帝国は異常だよ……。皇帝の身内が、大勢、生きているもの……」


 ワチレンがどもりながら言った。ゴマウン帝国の皇帝ラボンクには姉バガニルと弟のゲディスがいた。さらに親戚にはカホンワ男爵夫妻もいる。

 彼等は魔王化した後も生き延びていた。


「それだけではない。クゼント前皇帝の側室であるニゥゴ親子、カホンワ男爵の息子ジャオメダ親子も生きている。さらに言えば前皇妃であるハァクイ殿も現在はキャコタ王国のブカッタ教最高指導者アブミラとして生き延びているのだ」


「確かわずかな親戚でも見逃さなかったと聞きますが」


「そうだ。スキスノ聖国が生まれる前は、国王は自分の家族を皆殺しにしたが、それでは飽き足らず父親の側室の娘も殺したという。しかも遠くに住んでいたセヒキン王国の国境を強引に突破し、側室の娘が住む村を焼き払ったと記録にある」


 なぜ魔王化した国は身内を殺さずにいられないのか。推測だが魔王の身内を残さないためだろう。もし魔王の身内が生きていたら滅んだ国の人間はそいつらに憂さを晴らすからだ。

 モコロシ王国が滅んだ際にカウゲス一族が一人逃げ延びたが、現在もモコロシ王国の王族はカウゲス族を憎んでいるという。

 6年前にモコロシ王国の王子、ドゴランが彼等が住む地に国を作ったが、周辺国のサゴンクやスコイデは認めていない。魔王の子孫を守るドゴランに対して殺意を抱く始末であった。


「でも誰もラボンク皇帝の身内を、殺せという人、いませんよぉ?」


 ワチレンが言った。だがフチルンは首を横に振る。


「二人いる。ひとりはスキスノ聖国のアジャック枢機卿で、もうひとりはキャコタ王国海軍司令官イコクドだ。こいつらはなぜかゲディス殿やバガニル殿を憎んでいる。さらに言えばイコクドはアブミラ殿とキョヤス王子に殺意を抱く始末だ」


 現在のキャコタ王国ではキョヤス王子の評判は悪い。女癖が悪く、浪費家だと言われている。実際は品行方正で有能な人物だが、イコクドの配下が悪いうわさを流しているそうだ。


「なぜキョヤス王子を忌み嫌うかわからない。イコクドは昔から自己中心的な人物と呼ばれているが、ここ最近はひどくなったそうだ」


 なぜそうなったのか。スキスノ聖国は遠回しで二人を調べてみたら、なんと二人とも邪気中毒であることが判明したのだ。

 とはいえあまりにも度が過ぎている。いったい何が起きているのか調査中であった。


「そうでなくとも最近はドボチョン・ロックブマータという本が王侯貴族の子息の間で流行っている。なぜかドゴランを正反対にした内容だが、これは……」


 フチルンが説明しようとしたら、突如森の奥に大きな音が響いた。まるで雷のように周囲がビリビリと震えている。

 彼等がここに来たのは理由がある。なんでも大魔獣がいるらしいのだ。この辺りはモンスター娘や魔獣は定期的に討伐されており、大魔獣の出現率は低いはずである。

 だが大魔獣による被害が目撃されており、花びらペドルクラスの彼は討伐しなくてはならないのだ。


 そして地鳴りが起きると、突如巨大な影が現れた。それは山であった。猪のような顔に6本の丸太のように太い腕。蜘蛛の下半身を持つ怪物である。

 大魔獣アバレルであった。全身が赤味にかかっている。それを見たイチボンは疑問を口にする。


「アラクネから変化した大魔獣ですか。確かこの辺りにはアラクネはいなかったはずでは?」


「いたとしても赤味のかかった色はヤソクウ王国に住む種類だ。ゴスミテ王国には住んでいない品種のはずだ」


 フチルンが冷静に言った。アラクネといっても国によって住んでいる種類は違う。ロリ系のアラクネから、グラマー系のアラクネなど様々だ。ヤソクウ王国には赤毛のアラクネが住んでいるが、ゴスミテ王国にはいない。ゴスミテ王国は平地が多く、険しい山奥に住む赤毛アラクネの相性が悪い。


「どうやら誰かが連れてきたようだ。早く片付けよう」


「あの、ちょっと、いいかな?」


 フチルンが構えると、ワチレンが声をかけた。


「今、モーカリー商会から、連絡来たよ。ゲディス殿らしい人と、ウッドエルフが訊ねてきたって……。でも三人は馬車に乗せられてどこか行ったって……」


 恐らく念話で連絡が来たのだろう。フチルンはゲディスの姉バガニルから依頼を受けていた。弟を助けてくれと。ちょうどゴスミテ王国にいたフチルンは闇ギルドのグランドマスターから依頼を受けていたのだ。

 闇ギルドのメンバーであるキソレウを捕縛してくれというのだ。なぜかゲディスの居場所も知っており、疑問を抱いたが、グランドマスターは人間が出来ているので信頼していた。


「時間はかけん。一気に行こう」


 そう言ってフチルンたちは股間のチンコケースをフリフリし始めた。女のケデッカはケースなしだが、腰を振り始めている。

 するとチンコケースは生きている蛇に変化し始めたのだ。そしてむくむくと大きくなっていく。

 ケデッカの場合はあそこから生えているように見えた。


「チンチン、ブラブラ、ソーセージ!!」


 古代語で、精霊よ、我に、力をという意味を持つ掛け声を上げると、蛇たちはまとまり、巨大な蛇に変化した。そいつはアバレルを一気に飲み込むと、そのままフチルンたちは解除する。

 精霊魔法の一つで蛇を召喚するものだ。その蛇を7人で力を合わせることで大地を飲み込む蛇、カクリビを生み出したのである。


「では、早く行こう。ゲディスたちを助けねば」


 フチルンはブリッジをするとチンコケースが蛇になった。蛇はぶんぶんと回転するとそのまま空を飛ぶのであった。ケデッカも股間から蛇を生やして飛んでいく。

 一見卑猥な言葉でも古代語だからセーフです。

 バヌアツ共和国のエロマンガ島とかオランダのスケベニンゲンとかね。

 チンコケースは精霊の住処という設定があればオッケーです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 頼りになりそうです。
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