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第七話 嫌味そうな受付嬢に やばそうな伯爵

「ハイホー、ヘイヘーイ! オケツ、フリフーリ!!」


 当然モンスター娘が襲ってきた。カマキリ娘だ。頭と胸部は人間の娘だが、手と下半身はカマキリのモンスター娘である。

 それが三匹ほど森の中から出てきた。彼女たちは作り笑いを浮かべており、不気味である。

 そして後ろを振り向くとお尻を振り振りさせてきた。


「我願う、命産み落とさんと聴こえるね」


 ショートカットの銀髪褐色美女が答えた。マイクロビキニだけで身につけており、グラマーな身体を見せつけている。ブッラといい、武術が得意だ。


「これも古代語を勉強したおかげね。それに腹部から五方星を描いているのがわかりますね」


 次に腰まで伸びたふさふさの銀髪褐色美女が答える。こちらは白いぴっちりしたドレスを着ているが、グラマーな身体を隠しきれていない。

 クーパルと言い、ブッラの双子の妹だ。彼女は魔法を得意としている。


「二人とも無駄口は叩かない。街道にモンスター娘が出るなんて異常だ、すぐに対処する!!」


 小太りの少年が双子の美女に命令する。絶世の美女と呼ぶにふさわしい彼女たちにふさわしくない凡人だ。

 だが中身はゲディスといい、山羊の角が生えた子豚である。簡易ゴーレムと言う、直接人間が覆うものを着ていた。見た目は人間の姿で、ゲディス自身着ぐるみを着ている感覚はまったくない。


 ゲディスは剣を取り出した。収容呪文で仕舞っていたものだ。義父からの贈り物であり、大切に使っていた。

 ゲディスはカマキリ娘たちを見る。どちらも男を食べたくて仕方がないようだ。カマキリはオスを生きたまま食い殺すのが大好きなのだ。

 もしカマキリ娘たちが男を食い殺すと、彼女たちに自我が生まれる。そうなると人間の知識を得た厄介な魔族と化すのだ。

 

 モンスター娘は動物や昆虫、植物などに邪気が宿り、人間の女性に近い形をとる。そして男を食べるのだ。男を食べずに放置されれば邪気を吸い取り続けてしまい、大魔獣という存在になる。

 オスの場合は魔獣となり、こちらは女を食べると言うことはない。逆に邪気を吸収し続ければ黄金獣と化し、知性を持った魔族へ生まれ変わるのだ。


「僕が手本を見せるよ。二人は援護して!!」


 ゲディスが命じると、二人ははいと答えた。


 カマキリ娘たちは両手の鎌を振るいだす。へたをすれば人間の首を軽く切断するほどの大きさだ。だがカマキリ娘は生きたまま男の頭をかじるのが大好きなのだ。というか本能である。鎌は攻撃ではなく威嚇だ。

 だがゲディスはそれを知っている。逆に女は殺しにかかる。二人を傷つけさせないためには、ゲディスが前に出るしかない。


 カマキリ娘はゲディスを捕えようとしていた。しかしこちらを殺さず拘束して頭をかじることを目的にしているので、ゲディスがすぐ攻撃を受けることはない。

 カマキリ娘の一頭がゲディスを両手の鎌で拘束した。しかし、ゲディスは剣を縦に構えている。そして頭を噛みつこうとするカマキリ娘の口に剣を突き刺した。

 剣はカマキリ娘の頭を突き刺し、カマキリ娘は絶命した。その瞬間身体はぼんと音を立てて白い煙を上げる。

 残るのは昆虫の殻と鎌に羽根であった。


 モンスター娘は殺しても死体は残らない。逆に素材だけが残る不思議な生き物だ。

 逆に魔獣はそのまま死体が残るため、素材を取るのは一苦労する。


 カマキリ娘たちは仲間が殺されたので興奮状態になった。だがブッラは剣を使って首を飛ばす。クーパルは針地獄呪文ブッストを唱え、カマキリ娘の頭部に木の枝を何本も突き刺して殺した。


 残るのは素材だけであった。ゲディスは収容呪文で素材を回収する。


「おかしいなぁ。ここは街道なのに、モンスター娘の数が多すぎる」


 ゲディスがぼやいた。ゴスミテ王国はサマドゾ王国と違い、モンスター娘や魔獣が弱い。見習いの兵士でも集団であれば容易く倒せる。

 ゲディスたちは南にあるヒシロマに向かっていた。途中にあるヤキジタに寄るためだ。

 ところが道中でモンスター娘たちの襲撃を受けていた。今ので三度目である。


 普通は街道を兵士たちが巡回しているものだが、ゲディスたちはそれを見ていない。あとは旅人の姿もあまり見なかった。一体どういうことであろうか。


「ゴスミテ王国は基本的にトニターニ陛下が治めているんだ。あの人は真面目な性格で魔獣退治に力を入れているはずなんだ。一体どういうことなんだろう」


 ゲディスは首を傾げていた。現ゴスミテ王国の国王トニターニはゲディスの兄ラボンクの学友であった。出っ歯で嫌味っぽい顔をしているが、根は真面目な性格であった。6歳の頃ゲディスはラボンクたちにいじめられていた。そして率先していじめを主導していたのはトニターニだった。

 だが彼はその陰でゲディスがいじめの被害に遭わないように仕込んでいた。

 

 ラボンクがゲディスに対して矢を撃とうとすれば、「殺してしまうと苦しまないから、トマトを投げて遊びましょう」と進言する。

 さらにラボンクと同じ学友のロウスノがゲディスを模擬刀で殴ろうとすれば、「模擬刀だとすぐ気を失ってつまらないから、竹刀を使って長く細くいたぶりましょう」と進言したりした。

 

 そしてラボンクたちがゲディスをいじめていると、すぐにロウスノの父親であるサキョイ将軍が飛び出していじめをやめさせるのが日常だった。そしてラボンクたちはすべての責任をトニターニに押し付けて、自分たちはしれっと見捨てていた。しかしゲディスの父親であるクゼント皇帝はそれを見逃さず、ラボンクたち全員を叱っていたので、彼等はゲディスを恨んでいたのだ。


「トニターニ様がまじめに仕事をしてても、その部下が真面目とは限らないのでは?」


 ブッラが答えた。確かにそうかもしれない。ゴスミテ侯爵時代でもラボンク寄りの家臣はいたそうだ。お世辞を言えば上機嫌になり褒美を与えるラボンクの方が好きと言う家臣はいる。逆に真面目なトニターニを嫌っている者はいるのだ。


 ヤキジタの町はスドケベ・ヤキジタ伯爵が治めているはずである。スドケベ卿は20代後半で爵位を継いだが、相当な放蕩児という話であった。

 美しい女性は人妻であろうが見境なしだという。そのためトニターニにひどく注意されたが、それを逆恨みしているそうだ。しかもトニターニの妻であり、ゲディスの義理の姉であるユフルワを狙っているという。それを聞いてゲディスははらわたが煮えくり返る思いがした。


 ☆


 ゲディスたちはその後ヤキジタの町にたどり着いた。町に入るための通行税を支払うとすぐに冒険者ギルドへ向かう。

 門番がブッラとクーパルを見て、すぐに詰め所にある無線機で連絡を取りに行ったのが印象的であった。

 自分たちが賞金首になっている自覚はあるが、大人になった彼女たちの顔が割れているとは思えない。


 冒険者ギルドに来たのは自分と、ブッラとクーパルを登録させるためだ。

 ゲディス本人はすでに冒険者ギルドに登録しているが、この簡易ゴーレムの身体でも登録できる。本来ならギルドが所持する賢者の水晶は《サージ クリスタル》は誤魔化すことは出来ないが、この簡易ゴーレムはそれが可能なのだ。


 ゲディスは町の様子を見ていた。どこかさびれている印象がある。ゴスミテ王国は割と栄えている印象があるのだが、なぜヤキジタだけさびれているのかわからなかった。

 それに住民はどこか目が虚ろでよそ者を警戒しているように見える。

 ゴスミテ王国は一年前までゴマウン帝国であった。ゴスミテ領は帝都と違い、南にあるキャコタ王や東にあるヤソクウ王国、北にあるピロッキ王国と交易をしていた。

 ピロッキ王国と言っても国境に接するコサシク辺境伯領だけであった。小麦や魔導力の燃料である魔石の輸入が主である。


 さて冒険者ギルドにたどり着いた。木造建てでどこかさびれている。

 ギルドに入ると薄暗く、埃臭さがあった。カウンターに受付嬢が一人だけ座っている。

 他には冒険者が数十人、酒を飲んでいた。どうやら酒場と兼用しているようである。


 受付嬢は40代ほどの狐顔の女性であった。丸眼鏡をかけており、唇が分厚い。男と縁がなさそうな感じがする。


「今日はどのようなご用件で?」


 愛想のないぶっきらぼうな口調であった。


「今日は三人とも冒険者ギルドに登録したいのです。お願いできますか?」


「金はあるんでしょうね? 後ろの女たちは金を持ってなさそうに見えますがねぇ?」


 受付嬢は厭らしく嗤った。二人が無手なので馬鹿にしているようだ。


「持ってますよ。はい」


 ゲディスは収容呪文でお金を取り出す。すると受付嬢は露骨に顔をしかめた。


「ちっ、わかったわよ。登録すればいいんでしょ」


 舌打ちしながら受付嬢は立ち上がった。


「あなたのお名前は?」


「あん? なんであんたに私の名前を教えなきゃいけないのよ。トッマって名札に書いてあるでしょうが」


 トッマと呼ばれた女はゲディスに対して露骨に嫌悪感を露わにした。ゲディスは平気だが、ブッラとクーパルはトッマに対して警戒感を露わにしている。

 賢者の水晶による登録はすぐに終わった。ゲディスはエディスという名前で23歳となっている。

 ブッラとクーパルは5歳であった。

 簡易ゴーレムだと名前だけ誤魔化せない。年齢は基本界で4年間過ごしたから当然だ。


「えーっとエディスさんと、ブッラさん、クーパルさんですね。あなたたちは下から二番目の芽級スプラウトクラスです。まったく初めて登録したくせに芽級なんて生意気ね。あとは依頼板にある依頼書を見て、適当に持ってきなさいよ。ふん!!」


 トッラはギルド内でかなり大きな声で言った。すると酒を飲んでいた冒険者たちはブッラ達を見る。

 賞金首になっていたウッドエルフと同じ名前だからだ。しかし見た目は20歳に見えるので、別人だろうと判断したようである。

 

 それにしてもトッラという女は新人冒険者の名前を、ギルド内で聴こえるようにしゃべるなど守秘義務が成っていないようだ。


「おい!! ここにウッドエルフ二人が来ただろう!!」

 

 突如ギルドに入ってきた男が叫んだ。見た目は二十代後半の貴族の男だが、好色そうな顔をしている。

 このヤキジタを支配するスドケベ伯爵であった。

 外伝は主にゲディスとブッラにクーパルの冒険がほとんどです。

 下ネタとBLは頑張って入れますね。

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[一言] やれやれ駄目領主ですか。
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