休息の時間
夕里は不思議そうに言った。
「一体何者なの?あの変なオバサン?」
沙夜香が応える。
「わからない・・・だが、あの尋常ならざる雰囲気、只者ではないぞ」
智花は尋ねる。
「あの人の行方を追うことはできないんですか?」
夕里が頷く。
「出来るわよぉ。やってみるわ!」
夕里は、秘術を行使し、消えてしまったおばさんの姿を補足しようとする。
しかし、数分後。
沙夜香が訊いた。
「どうだ?」
夕里が首を横に振った。不思議そうな表情で。
「・・・ダメだわ、全然見つからない」
夕里は続けて言った。
「おかしいわね、この私の追跡から逃げ切れる人なんて、いないはずなのに・・・」
おばさんの正体は気になったが、深追いは危険だということで、とりあえず四人は。沙夜香と夕里の家だという、一軒家へと到着した。
「色々あって、君達も疲れただろう。今日の所は、とりあえず、ゆっくり休め。
明日になったら、私達が色々と説明して教えてやるからな」
沙夜香の提案に、加奈美と智花の姉妹は揃って賛成した。
確かに、色々あった。というか、現実では到底ありえないことばかり起こりすぎて、色々ありすぎて、
しかも分からない事だらけで、まだまだ混乱していた姉妹は、とにかく休みたかったのである。
その時。
夕里が、ぽん、と両手を合わせて、案を追加した。
「ねえねえ、これから皆で一緒にお風呂に入らない?この家には、ステキな浴場があるのよ」
姉妹は大きく頷いた。「入りたいです!」
沙夜香は断った。「私はいい。遠慮しておく」
だが、夕里がそれを許さなかった。
「ダメよお、新しい主様達との親交を深めるためにも、裸の付き合いは全員参加なの!」
沙夜香は動揺して声を上げた。
「ゆ、夕里! それは一体どういう理屈だ!?」
それから、しばらく後。
結局、夕里の強引さに逆らえなかった沙夜香は、三人と一緒に浴場にいた。
姉妹が感動する。「うわ~、大きなお風呂・・・」
夕里が誇らしげに、かなり分厚い胸を張った。
「どう?良いでしょう?」
そんな三人をよそに、沙夜香は、まず、自分のやたら長く美しい黒髪を短くまとめ、次に、暴力的といってもいいほどスタイルの良すぎる自らの体を、大きなバスタオルをきっちり巻き付けることで、どうにか隠そうとしていた。
浴場の広さとすばらしさに感動していた主人公姉妹は、次に、揃って、沙夜香の姿に見とれてしまう。
「はわ~、すごい・・・」
「ダイナマイトボディ・・・」
そんな感想を述べる姉妹に向かって、沙夜香は言った。
「そんなに、まじまじと見ないでくれ・・・居心地が悪い・・・」
沙夜香の顔が真っ赤なのは、浴場の熱気のせいだけではなかった。
夕里は苦笑する。
「相変わらず、沙夜香ちゃんは恥ずかしがり屋さんねえ、別に肌を見られてもいいじゃないの、減るものでもないし」
沙夜香は即座に言い返した。
「よくないぞ! いやらしい夕里と違って、私は慎み深いんだ!」
夕里が口を尖らせる。
「あらあ、何よお、その言い方ー!私がいやらしいですってえ?そんな事を言う沙夜香ちゃんなんて、こうしてあ・げ・る!」
言いながら、夕里は素早い手つきで沙夜香のバスタオルを奪い取ってしまった。
ハラリ・・・ ばるるんっ
バスタオルが取れ、沙夜香の胸が大きく揺れて震えた。
姉妹は唖然として、黒髪の美少女守護精霊の一糸まとわぬ姿、彼女の、その神々しい裸身を凝視する。
数秒後、沙夜香の、意外なほど可愛い悲鳴が、浴場に響いた。
今回の挿絵は、「夕里のせいで、加奈美と智花に裸を見られてしまった、可哀そうな沙夜香」を
描いたものです。私の画力では、これが精一杯です。ご容赦ください(笑)
お風呂場にいるので、湯気が仕事をしています(笑)