雛と向日葵。七星と志知瀬。遠夜と十夜。
七星はひどく不安定な存在だ。僕はオカルトは信じていないけど、七星を見ていたらそう思ってしまう。
七星の存在は人間と別の何かと別れてて。
今ここにいる七星はいつか消えるのでは、なんて思ってしまう。僕――四十万向日葵がそんなことを考えてるなんて、七星はつゆほど思わないだろう。
そりゃそうか。別の人間だし。七星は遠夜以外興味ないし。
だから、今も。黄色の薔薇の造花を手折ってるんだろう。七星を見ていたら、何かを思い出しそうだった。
これが、七星の言っていた輪廻転生のことだろうか。僕が僕の前の記憶の残りかすが、どこかであって。
七星によって呼び起こされるんだろうな。
七星から視線を逸らし僕は夕飯を作り始めた。
※※
四十万雛は、十夜が『見世物』にいたころの同期だ。オレは、十夜の記憶をなくした理由を尋ねるべく、彼女に会いに行った。雛は、盲目の女性だ。正確には、盲目にされた、か。今は見世物小屋から出てこの町の外れに暮らしている。
掘っ立て小屋と言えるべき建物の前に着き扉を叩いた。
「どうぞ」
その声を聞きオレは扉を開けた。男物の浴衣を身にまとった女性が床に座ってオレを見上げた。
「十夜のことだよね」
オレは一言も話していなかった。たまたま、十夜の同期の話を人伝に聞いた。そして、居場所を聞いてここにいるんだ。
「僕はね。人の心が読めるんだ。その力を買われて見世物小屋にいたんだ」
「へぇ……」
「心が読めるなら、目なんかいらないよねって言われて。潰されたんだ。でも、十夜よりはましだよ」
彼女は悲しそうに笑って、
「十夜は、人形としていればいい。なんて、言われて喉を潰されたんだから。劇薬を飲まされて、喉を爛れさせられて」
酷いよね、と彼女はわが身のことのように辛そうにしていた。
そこで一度彼女の言葉はやんだ。オレの心を読もうとしてるのか。それとも、言葉を考えているのか。
能面のように無表情になった彼女だから、か。想像しかできない。
「……君がここに来た理由は、十夜の記憶かな」
「ああ」
「君は酷く十夜を好いているようだ。そんな君には辛いことを話してしまう。それでも、聞くかい?」
そんなの百も承知だった。それに、十夜のことならなんでも知りたい。それは、想い人にどんな過去があっても受け入れるべきだとオレは思っているからだ。




