第5章
2人のルーティンになりつつある夜の晩酌。
今まで2本買っていた缶チューハイは3本買って帰る。
私はソファに寄りかかり、床に座る。
腰掛けているちゃぴは肘かけに腕をおいて
お酒の入ったコップの氷を眺めながら私の話を聞いてくれた。
「今日さ、売上よかったのに…なんか全然嬉しくなくて」
「へぇ。なんでよ」
理由を突っ込まれるなんて思っていなかった私は、なにも深く考えずに答えた。
「え?普通じゃない?」
ちゃぴを見上げると、目が合った。
でもそのまま、ちゃぴの視線は私を通り越して
どこか遠くに行ってしまった。
小さなため息をついてちゃぴが言う。
「……あんた、それ好きよね」
…。
「なにが?」
態度と雰囲気に要領も得なくて、少し腹が立ってくる。
「“普通”って言葉で逃げるの」
……。
急に、“逃げる”という言葉の弱さや狡さが私に向けられて、言葉がでてこなかった。
私が黙ってちゃぴの持っているコップをただ見ていると…
「嬉しくないなら理由があるでしょ。ちゃんと考えなさいよ」
更に追い討ちをかけられた。
「それは……」
反射で何か答えようとしたが、
自分でも今まで意識していなかった何か見たくないものを認める言葉を言ってしまいそうで、口を閉じた。
「どうせ、“ちゃんとやってる自分”演じてるだけでしょ?」
それは流石に言いすぎだ。
「……別に演じてないし」
「じゃあなんで、私には本音で話してるのよ」
もう、それ以上なにも言えなかった。
何が事実で、何が虚像なのか。
どこに自分の本心があるのか、それさえも考えられないくらい、
頭の中で、色んな言葉がぶつかっていた。
ちゃぴも…
……それ以上なにも言わなかった。




