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残念ながら、母の娘はそこの美少女ではなく私です!!!コミカライズ中!  作者: 家具付
外伝1 泥棒と私 ※本編と雰囲気違い過ぎます。ご注意ください

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24 一つの結末とはじまり


「いや、いつかはこうなると思ってたけどね……?」


私は現在進行形で、綺麗に身なりを整えられて、一つのやたら大きな寝台の上に座っていた。

こうなるまでの速度がびっくりするくらい早かった物だから、


「砂漠の地域のこういう事ってこんなにすぐ進むわけ……? 王様でも……?」


と真剣に疑問に思った。いや、ギルドの冒険者のこういう関係が、あっという間に手続きが終わって、始まったと思ったらもう終わっていて、ギルドにその足で報告に来て、大騒ぎになってお祝いされて、ギルド併設の酒場が貸切られて、宴とかになるっていうのを何度も見てきたけれど、それと同じくらい速いと思うんだよね……

ここからお分かりかもしれないが、そう、私は数時間前に、あの男と一蓮托生になる事を神様に誓って、王がそういう相手を作る時に名前を書く、歴史のある……私から見れば結構よれよれの羊皮紙……に名前を書いたのだ。

あの、水神であろう神様が、私達を夫婦だと言って、怒りを解いたすぐ後。

ぎゅうぎゅうに抱きしめられていた私は、そのまま持ち上げられて、王が真顔で神官に言い放ったのだ。


「水神すら認めたぞ。これならば一族郎党および長老、おばばたちも否やはないな?」


「あの、愛をつかさどる神に認められた相手を、どう否定すると言うんですか……?」


神官は上位神官の中でもとりわけて上位らしく、身なりが相当だった。そして西の地域でも一般的な、神官装束に銀の糸で神に仕える文言を刺繍したものを着ていた。これは最上位神官の特別な装束なのだ。ギルドに来る神官の中には、たまにいる。呪われた品物を調べるために来るのだ。

そんな最上位神官たちが、何が問題になるのだという調子で答えたのを、長老であろうおじいさんとか、おばばだろうお婆さんとかが納得した調子で頷く。


「王が連れてきたというだけで、性急に決めてはよくないと思い、渋っていただけの事」


「お相手の心の準備や、その他もろもろの事を考えて、簡単に決めるなと説教してたまでの事」


と彼等がいう物だから、ああやっぱり、私を妻にするっていう男の意見は結構反対されていたんだな、と察した。

しかしそれも、水神の言葉と、今も降り続ける虹色の雨のために、文句が出なくなったらしい。


「ならばさっさと手続きを済ませるぞ」


「王……気がせくのもわかりますが、式はどうします」


「手続きが終わってからでいいだろう。……神の怒りが解けた事が、何を意味するのか、あなた方はよくよく理解しているはずだ。……式が挙げられるかもな」


「……よほど手放したくないと見えますね」


「当たり前だろう。俺が選び俺が連れてきた妻になる女だ」


「やれやれ」


長老達もおばば達も、仕方がないな、といった感じで言うので、ああ、私とこの男の関係を、公式のものにするのは決定したんだな、とそこでわかった。

そしてその足で、男は城の中にあった神殿に私を連れて来て、最上位神官たちが忙しなく動き回って、私の認識だと証明書だろう古い羊皮紙に、名前を書いて、私にも書くように言ったのだ。


「これを書いて私に何か不利益は?」


「乙女ではなくなる事だな」


「ふうん……まあ、神様相手にも妻だって言ったし、あなたが旦那になる事に対しても、嫌だとかはないけど」


「俺もお前を堂々と妻と呼ぶ事に対して、後ろめたい物は何もない」


「それじゃあ書きますか」


そんな、最上位神官どころか、見習いの神官達すら


「そんなんでいいのか」


と小さな声で言うほどのあっさりしたやり取りの後に、二人で名前を書いたのだ。


「この羊皮紙は、神がその昔に、王とその妻に与えた物になります。これに名前を書いた二人は、双方の同意の元離婚する時まで、永遠に夫婦であるという誓いを行った事になります。まだインクが乾いていないので、拒否するなら今ですよ」


最上位神官が、先に言ってよ、と思う事を言ったものの、私は拒否するという意思はなかったので、乾くに任せたのだった。

そして二人とも雨でびしょぬれだったわけで、風邪をひくといけないという事で、私は速やかに一族の女の子たちに引っ張っていかれて、とてつもなく興奮している彼女達に


「あなたの方から求婚したって本当!?」


「勇気ある……!」


「やっぱり王には一族の乙女よりも、あなたが相応しいわね!」


なんてきゃらきゃらとはしゃがれて、まあ私がやった事って、結構ラブロマンスみたいな事だったかもしれないとここで客観的になり、ああとか、ううとか呻きつつ、濡れた服を着替えたわけだった。

そこで一族の女の子たちは、私に装身具とかをつけようとした物だから


「重たいのいや。足をくじいてしまっているんです。足の飾りは怪我を悪化させるからやめてください」


って急いで止めて、そこで彼女たちは私を飾るのも、化粧の用意もやめた。


「王はありのままのあなたが好ましいんでしょうね、じゃあ香水もいらないか」


「腕の見せがいがない!」


「式が出来ればその時本気出せばいいじゃない!」


なんて女の子たちの中でも、アヤさんはちょっと夢見るように言って、マーヌールさんは飾れないって悔しそうで、サラさんが彼女たちを慰める感じでそう言った。

こう言うとおかしな話だけれど、まるで結婚式とかそういうのが出来ないって言いたそうだった。

もしかしたら、砂漠では西の方みたいな結婚式じゃなくて、もっと違う風習があるのかもしれない。

でも西の方の事を知っているから、皆式が出来ないって感じの事を言っているのかも。

そんな風に思った私は、特に何も言わなかった。

ただそこからが問題で、女の子達は身ぎれいにした私を一人で、あの男の寝所に押しやって、興奮した声で


「あとで教えてくださいね」


「駄目よ、夫婦の間の事を喋らせるなんて問題よ」


「怖い事があったら教えてくださいね、なんとかおばば様達に話して、王の事を叱ってもらいますから」


……勇気が出るとかそんな物の前に、今回こそ本当に、一線を超える事になりそうなのだ、と実感して、私はぎくしゃくしながらも寝台に座り込んで……冒頭に戻るわけだ。



「あー、もう!」


考えるまでもない事で、いや、冒険者たちは結婚しなくてもやる事やってるし、その話は星の数ほど聞こえてきたし、受付の仲間たちもそんな話題を時々口にした。

だが、私はそんな物とは生涯無縁だろうな、と思って来た人生だったのだ。

だって隣にはいつでも、自分なんか雑草どころかつちくれだなって位の美しく可憐な一輪の花もとい、シャルロッテがいて、皆あの子を見ていた。皆あの子を見て顔を赤くしたり、言い寄ったりして来ていた。

私はいつだって、それを脇で眺めている立場だったし、私にそういう声をかけてきた男なんて一人もいなかった。

仕事はちゃんとしていたけれど、十六歳になっても居候で、自立していたわけでもなかった。

おかみさんや旦那さんが、娘みたいだからって理由で、私の家賃を少なめにしてくれていた事は感謝しているけれど、そういう生活だったから、独り立ちしておしゃれをするとか、誰かに夢中になるとかそんな物は、遠い話でしかなかった。

十年探し続けた母さんも、見つからないまま時間は過ぎていたし、母さんが見つかるまで、心の余裕なんてものはなかった。

母さんが見つかってからは、一緒に豪華で慣れなくて、息が苦しい生活の中で、母さんが選んだ人と結婚するかもしれないけど、結婚しないかもしれない、と考えて生きてきた。

だから。


私の事を気に入ったとか、好きだとか、惚れたとか、そういう事を言う人が現れて、その人に対して私も、嫌いになりたくないとか、そういう好きっていう感情だと思われるものを返すなんて、人生設計の中に存在しなかったんだ。

あり得ない話。夢のまた夢。夢にさえならない、存在するわけのない仮定。


私をそういう意味で、好意を向けてくれる人なんて、いないと思って生きてきた。


だから、そのあり得ない話がどんどん進んでこうして、一線を超える手前まで来た事に対しての現実感は、恐ろしく薄かった。

でも、いる場所とか、鼻が感じる匂いとか布の手触りとかいろんなものが、これは現実だと訴えかけて来ているのだ。

だから余計に、頭の中はぐちゃぐちゃになる。

うめいても変な声を出しても、現実は一変するわけもなくって。

そんなしっちゃかめっちゃかな事ばっかりしていた私は、扉が開いた事も、私に音を立てて近付いてくる相手の事も気付かなくって。


「何かあったのか」


静かな声がかかったと同時に、振り返りざまに寝台に縫い付けられて、上から男が自分を見て覆いかぶさっている状態になったから、思考が停止しかけた。

数秒の沈黙が流れる。


「……ゆめ、みたいな事がさっきから立て続けに起こってるから、現実か疑ってて」


「夢?」


「うん。だって、私みたいなのを好きだって言ったり、惚れなおしたって言ったりする相手なんて、夢にだって存在しないわけだったから」


そこまで言った時だ。ずい、といっそう顔が近付いて、男の高温の具合で言ったら洒落にならないほどの熱さだろう黄金の瞳が近付いて、口に柔らかくて湿ったものが重なって、びっくりしている間に、柔らかい動きで開かされた。

それから一気に激しくなって、息ができない、と切羽詰まってきた私に気付いたのか、顔が離れて笑う。


「これでもまだ、夢だと思うのか?」


「いや、こん、な強制的、な方法で現実味を、取り戻させないで、ほしかったかな……」


ぜいぜいと息を荒くして睨むと、男は喉の奥で笑った。

そうして、その笑いとは一変した、普通の女の子だったら泣いちゃうほどの怖い真顔で、こう言った。


「怖い以外のあれこれを言っても、止められないからな」


暴力的な熱が、その口調から、感じられた。たぶんそういう事をするんだっていう事を、意識させるつもりだったんだと思う。

まだこれなら、怖いと言えば引き返せたんだろう。

それなのに私は、負けん気みたいなのがやってきて、唇が吊り上がって、思いっきり笑ったのだ。


「上等じゃん。怖いなんて言わないから」


まさか男ってものを何も知らない女の子が、そんな喧嘩の前みたいな物言いをするなんて思わなかったんだろう。

彼は一瞬目を丸くした後に、一層愉快だという調子で私に額を当てて、こう言い放った。


「ならば俺が止まる理由はないな」


そこからは言いたくない。

私はそれから三日ほど、寝台からほとんど出してもらえなかったとだけ言っておこう。

ついでに言うと、相手との体の境目が分からなくなるっていう表現は本当に存在するのだとも実感させられたわけだった。

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