第1話 隣の席の美少女は陰謀論者
「時丸君、時丸君! ねえ知ってる? 地球って実は平面なのよ!」
……なにを言っているんだ、この女は?
今、隣の席で真剣な目をしてそう言ってきた彼女は、入学式の日から俺がずっと気になっていた超美少女の花山院陽佳さんだ。
最初は高根の花である彼女が話しかけてくれて、「うおおおおおお!」となった。しかしその発言内容を聞いて、「えっ」てなった。
ち、地球が平面?
あ、あれか、聞いたことがある、地球平面説ってやつか?
まさか彼女はそれを信じて……い、いや、冗談だよ、きっと。彼女は成績優秀と聞いている。
そんな彼女があんなとんでも話をするわけ――
「いい? 時丸君、地球は平らな円盤で、その周囲を南極の氷の壁が取り囲んでいるの。そしてその壁の向こうには何かとんでもない真実があるんだけど、それを政府や科学者は隠しているのよ」
ひ、ひいいいいいいっ! 訊いてもないのに勝手に説明を始めてるううううう!?
「政府や科学者は地球が球体だと嘘をついて、人々を真実から遠ざけているの、騙されちゃだめよ!」
「そ、そうなんだ」
思わずそう言ってしまった。
べつに彼女の主張を肯定したわけではなかったんだけど――
「嬉しい! 信じてくれるのね!」
ぱぁっと花が咲くように笑顔になる彼女。
うっ、不覚にもかわいいと思ってしまった。
「え、い、いや……信じたわけでは……」
「実はね、この話を他のクラスメイトにもしたんだけど、誰も信じてくれなかったの! あなただけよ、ちゃんと私の話を理解してくれたのは!」
いや、理解なんてしてないけど。
「あなた、見込みがあるわ、これから仲良くしましょう、ほら、握手!」
差し出された手をつい握ってしまった。
彼女の手は白くてすべすへしていて、ちょっとだけドキドキしてしまった。
ふと視線を感じると、クラスメイトたちが、うわあ……ってかんじの顔でこちらを見ているのに気づいた。
違う、違うんだ、俺はこいつと同類じゃない、信じてくれ、みんなあああああ!
こうして、俺の高校生活はこの陰謀論者の美少女によって狂わされることになるのだった。




