#002 お巡りさんを何回呼んだらいいのか?の件について
我が巡洋艦は今、正に未曾有の危機に直面していた。
処女航海で大海原に出た直後に動力が停止、艦内に緊急入電が流れ管制室は騒然としていた。
「艦長!!本艦はタイプ4(フォー)と接触した模様!」
「慌てるな!情報は各、通達が回っていただろう。」
「それが…」
「艦長!!映像出ます。」
標的と接触して艦内は慌ただしくモニターに映し出された映像に我々は、言葉を失い沈黙した。
なぜなら、標的と接触した…いや、標的にはいずれ接触していたのだから、その事でとやかく言っても仕方がない。
問題は与えられた情報に不備があったことだ。
「グリーンアイズの銀髪ロリだと…。」
私はようやく絞り出た言葉を呟く、我が艦[響耶]の前に銀髪少女が現れたのだ……
*
「……ぉ………ん……お兄ちゃん大丈夫?」
『……はっ!?ヤバ…なんかトリップしてた!』
銀髪のエメラルドグリーンの瞳の少女がこっちを心配そうに見ている。
一瞬でフリーズしたことで脳内パニック?が起きていた俺は思考で、ステータスを開き迷わず精神耐性とポーカーフェイスのスキルにポイントを全開でぶち込んでMAXにした。
そして何事もなかった様に
「ごめんね、ちょっと考え事してただけだから大丈夫だよ。」
そう告げて、一呼吸置き
「おはよう詩音。」
笑顔で挨拶をしたのだった。
しかし、個人に対しては、会えば判別できるようになってあるからと別段気にしてなかったが、まさかの銀髪ロリ……おいコラ、髪色とか目の色とか肌とか重要だろ!!
もらった情報に体重や身長等が入ってなかったから、手抜きか?とは思っていたが、まさか容姿に関してもここまで手抜きだとは思ってもいなかった。
『1人目でこれだ。他の個人情報も鵜呑みにしない方がいいな。』
俺は認識を改めてることにした。
あぁ紹介が遅れたが、この子の名前は、篠宮 詩音【しのみや しおん】、11歳、小5、身長は140㎝くらい、腰まである銀髪とエメラルドグリーンの瞳、西洋人特有の白い肌で、目元がパッチリ、眉も細く、大変顔立ちの整ったまず普通は絶対お目にかからない美少女である。
というか、俺の持っていた世界美少女展フォルダの中でさえ、このクラスの美少女はいない。
そんな美少女が部屋から出て通路を行こうとしたところにロンT1枚の姿で現れたのだから無理もない。
見た瞬間、俺の小宇宙が爆発した。
セ○ンセ○シズに覚醒しかけたのだろう。
そりゃフリーズもする。
誰かがお巡りさんを呼んだような気がするが…うん、気のせいだろう。
そう言えば、お前“喜べねぇ”とか“異端”とか言っていた割りにあっさりスキル使ったな?だと。
なぁ知ってるかい?人は忘れる動物なんだよ。
まあ、あるものは使うさ、よく言うだろ、要はばれなければいいんだよ。
だが、ヒールに関しては別、封印だな。
さっきポイント投入したスキルがレベル10で即MAXになったのに対して、あれ9999でまだMAXになってないからレベルが上がったりしたら死者蘇生とか付きそうだし、その場合最悪、管理者から抹殺されかねんからな。
…この間、僅か1秒、そろそろ現実世界(今)に戻るとしよう。
妹の詩音との挨拶の続きに戻るが、挨拶をしたら何故か顔を赤くしてモジモジしている。
『何これ、可愛いい。お持ち帰りしたい。』
そう思い、近寄って妹の頭をかいぐりしてしまった。
この行為が妹の琴線に触れたのだろう。
一瞬驚いたが、手が離れるといきなり抱き着かれた。
「お兄ちゃん、おはよう。えへへ。」
俺の胸に頭をグリグリ擦り付けて上目遣いで返事をしてきたのだ。
『ぐはっ!?ヤバッ!!』
俺はというと精神がごっそり持っていかれたかと思えるほどの恐ろしい威力を受けていた。
精神耐性を底上げしていなかったら危うく撃沈させられているところだった。
我が妹よ……末恐ろしい子である。
そんな攻防があったとは知らない妹を余所に俺は初戦を生き抜いた。
そして俺は、女という生き物は生まれながらにして幼女だろうが、魔性の生き物だということを初めて身をもって体験したのだった。
*
少し時間が経って妹は我に返ったのだろう。
『お兄ちゃん。…ごめんなさい。』
詩音が俺から離れ謝ってきたのだ。
理由は簡単で、この世界では女性が男性に合意無しで抱き着いたり、体に触れたりするのは犯罪に当たる行為なのだ。
子供だとまだ許されるが、ある程度分別のある中学生あたりの年齢だとアウトになる。
前の世界との違い幾つか男女の内容が逆転している事柄の1つである。
まあ気にしないよ、というよりもむしろ“何これ、ご褒美?”だったし……。
「家族なんだし気にしなくていいよ。寧ろ(むしろ)、これからは仲良くなっていけたらいいなぁ〜と僕はお願いしたいのだけどダメかな?」
『いえ、こちらこそ“ごちそうさま”でした。』
返事をしながら心の中でお礼を述べるという器用なことをしていた。
誰かが二度目のお巡りさんを呼んだような気がするが…うん、気のせいだろう。
そんな俺に妹は、はにかみながら
「お兄ちゃん、よろしく。」
照れくさそうに言ってきたので
「こちらこそよろしく、詩音。」
そう答えたのだった。
そして俺はこれ迄に焼き付けた彼女の姿をそっと自分の脳内記憶フォルダに詩音専用フォルダとしてしまうのだった。
誰かが三度目のお巡りさんを呼んだような気がするが…俺は愛でているだけなので気のせいだろう。