酒場の伝承歌と拓海への誓い
木造の重厚なテーブルの上に、泡の立つ果実酒の入った木製ジョッキが威勢よく打ち鳴らされた。
「それじゃあ、葵の初陣と専属ヒーラー加入に……乾杯っ!」
「「乾杯!!」」
ミーナの明るい掛け声に応じ、ギルバートとルカが笑顔でジョッキを掲げる。酒場中に心地よい木器の重い音が響き渡った。
「あ……ありがとうございます……っ!」
葵は両手で木製のカップを大切そうに抱え、はにかみながら果実酒を一口口に含んだ。ほんのり甘く甘酸っぱい液体の味わいが、初陣の緊張で強張っていた身体を優しく解きほぐしていく。
「それにしても驚いたぜ。葵の『ヒール』は本当に凄いな。傷口が一瞬で塞がって、痛みも綺麗に消えちまった」
「ええ。前衛のギルバートの傷があっという間に治るなんて、本当に頼もしいわ。葵ちゃんが来てくれて助かったわ」
ギルバートとミーナに素直に褒められ、葵は照れくさそうに首をすくめた。
「そんな……私なんて、夢中で手をかざしただけです……っ。二人が私を守ってくれたから……」
「いいえ、葵さんの治癒魔法は本当に温かくて、心の底から安心できました」
隣に座るルカが、涼やかな瞳を細めて穏やかに微笑みかけてくれる。拓海に驚くほどよく似たその優しい笑顔に、葵の胸の奥がキュンと温かく小さく跳ね上がった。見知らぬ土地で居場所を得られたこと、そして自分を頼りにしてくれる温かい仲間が出来たことが、たまらなく嬉しかった。
賑やかな酒場の熱気の中、冒険者たちが肉料理や果実酒を楽しんでいると――ふいに、酒場の片隅から静かな弦楽器の爪弾く音が聞こえ始めた。
旅の吟遊詩人が、木製の弦楽器を優しく奏で始めたのだ。酒場の喧騒がふっと和らぎ、哀愁を帯びた切ない旋律が店内を満たしていく。
「あ……っ……!」
そのメロディが耳に届いた瞬間、葵は手にしていた木製カップを掲げたまま、目を丸くして固まった。
異世界の楽器で奏でられ、哀愁を帯びたバラード調にアレンジされてはいる。だが――その主旋律や優しく揺れるリズムは、現代日本で夕暮れの帰り道や河川敷を二人で並んで歩きながら、最愛の恋人・拓海と二人でよく口ずさんでいた『思い出の歌』に、どこかとてもよく似ていたのだ。
「葵さん……? どうかしましたか? 不思議そうな顔をして……」
葵が耳を澄ませて固まっているのに気づき、隣のルカが微笑みながら覗き込んできた。
「あ……あのね、ルカさん。この曲……すごく綺麗な旋律ですね。なんていう歌なんですか……?」
「ああ、この歌ですか? これはこの地方で昔から歌われている有名な民謡ですよ。どこか哀しくて、でも温かい素敵な曲ですよね」
「民謡……そうなんだ。なんだか聴いていると、すごく心がぽかぽかして、優しい気持ちになれる素敵な曲だね……♡」
葵はふんわりと笑みを浮かべ、詩人の奏でる弦の音にじっと耳を傾けた。
その旋律を聴いているだけで、大好きな拓海の温もり、優しい笑顔、手を繋いだときの温かい掌の感触が、胸の奥いっぱいに優しく蘇ってくる。
(拓海……っ……。逢いたいな……逢いたいよ、拓海……っ)
胸いっぱいに広がる愛おしさと切なさに、葵の瞳にぽろぽろと大粒の温かい涙が浮かび、白磁の頬を静かに伝い落ちていった。
「あら、葵ちゃん……!? どうしたの、涙なんて浮かべて……っ」
「あ……ふふ、ごめんなさい……! どこも痛くないの。ただ……すごく綺麗な歌で、大好きな人のことを思い出したら、なんだか嬉しくて……っ」
慌てるミーナに、葵は涙を拭いながら嬉しそうに微笑み返した。
(拓海がどこにいても……私は絶対に諦めない。この世界で仲間と一緒に精一杯生きて……いつか必ず拓海を見つけてみせる……!)
葵は胸の前で小さく手を握り締め、涙の滲む瞳で強く自分自身に誓った。
◇
酒場での宴を終え、ギルバートたちにお礼を言って自分の部屋に戻ると、葵は扉に背を預けてスーッと深呼吸をした。
木造の静かな室内。今日一日無事にヒーラーとしての第一歩を踏み出せた安堵感が、全身の緊張をそっと解きほぐしていく。
(よかった……本当に、温かい人たちと出会えてよかった……)
王宮から冷酷に追放され、冷たい夜道を一人で彷徨っていた昨日の夜に比べれば、ここはあまりにも天国のように暖かく安全だった。
今日初めて経験した日帰りの討伐戦での緊張が解け、葵は素朴な木製のベッドへと近づき、その端に腰を下ろした。
静まり返った夜の部屋。月光が窓から差し込み、素肌を優しく照らし出している。
葵はそっと瞼を閉じ、全身の力を抜いて魔力衣の維持を静かに解除した。すると、身体を覆っていた純白のキャミソールワンピースが、朝霧が光に溶けるようにスーッと空気中に散り、瞬く間に消失していった。
月光の下、隠すもののない白磁の肌、ふっくらとした豊かな二つの胸、引き締まったウエスト、滑らかな太ももが無防備に露わになる。
「あ……ふぅ……っ……」
無事に初陣を終えて仲間の一員になれたことへの、深くて強い安堵感。
そして――酒場で聴いたあの歌によって、胸の奥底から溢れ出してきた最愛の恋人・拓海への激しい情愛と抱きしめられたい恋しさ。
その温かい感情が胸いっぱいに満ちあふれると同時に、葵の身体の奥底から、じんわりと甘く熱い火照りが静かに湧き上がってきた。
「拓海……っ……拓海ぁ……っ……!」
目を閉じれば、大好きな拓海の笑顔と、無骨で温かい大きな手が浮かんでは消える。
(拓海……っ……どこにいるの……っ? 私……拓海に会いたい……拓海の大きな手で抱きしめられたいよぉ……っ!)
会いたい。あの温かい手で強く抱きしめられ、優しい声で名前を呼ばれ、愛おしそうに頭を撫でられたい――。
胸を突く切ない逢いたさと、身体の底から溢れ出す甘い火照りに突き動かされ、葵は大きな涙を溢れさせながら、震える右手をゆっくりと自らの身体へと伸ばしていった。
扉の向こうで鳴った宴の名残が、まだ耳の奥に薄い火種を残している。
木造の壁は、夜気を吸い取って冷えているのに、葵の背だけが、熱を帯びた扉に預けられている。
安堵は、胸の奥でゆっくりと沈み、代わりに細い脈が、身体の奥で何度も跳ね返った。
木製のベッドの端に沈んだ腰は、まだ討伐戦の熱を隠しきれず、膝だけが不自然に熱い。
月光は、冷たく白いのに、葵の肌の上では、どこか甘く薄い膜のように滑っていく。
魔力衣が散る瞬間、葵は自分の身体から、守りの白が静かに剥がれていくのを感じた。
残ったのは、素肌と、月と、胸の奥で鳴る恋人の名だけだった。
豊かな胸は、呼吸に合わせて小さく上下し、月光に浮かぶ谷間が熱く脈打つ。
引き締まった腰のくびりは、細い影を作り、その下が、じわりと温かい熱を帯びる。
葵は自分の体温に気づき、息を止めた。
けれど、その熱は、拓海を想うたびに、もっと濃く、もっと甘く、奥で揺れた。
(拓海……っ……この熱、どうして……っ……)
恋しさは、切なさと同じ形をして、葵の胸を締めつける。
抱かれたい、と願うほど、自分の手が、自分の身体を慰めることに気づき、葵は頬を染めた。
震える右手は、まだ、誰かの手を待っているように震えている。
それでも、指先は、身体の熱に引かれるまま、ゆっくりと伸ばされる。
掌が、月光に白く浮かぶ腹部を、そっと覆う。
掌の下で、腹の皮が細く震え、熱が指に伝う。
葵は、自分の手で触れているのに、拓海の手を想い、胸が熱くなる。
指の腹が、下腹部の膨らみを小さく押し、その奥で脈が跳ねる。
人差し指が、熱を帯びた肌を探し、吸い寄せられるように滑る。
触れた瞬間、葵は息を止め、自分の熱に気づく。
指先が触れるたび、熱は円を描き、甘い火照りが肌を伝う。
その情愛の温もりは、月夜に混ざり、甘く、切ない。
葵は、自分の身体が、恋に反応していることに気づき、泣きそうになる。
拓海に撫でられたら、自分は泣きじゃくるだろう、と葵は思った。
けれど、その幻は、熱を濃くする。
腹の底から返る熱は、まだかすかに震え、指の腹に伝うたびに、葵は小さく息を漏らした。
人差し指と中指だけが、まだ迷い、細い震えを隠しきれない。
けれど、拓海の名を呼ぶたびに、その震えは、少しずつ熱に溶けていく。
指先は、滑らかな太ももの内側を、ゆっくりと辿る。
触れられた肌は、内側から細く跳ね、葵は自分の反応に驚いた。
「ひゃん……っ……」
まだ日帰り疲れが残る脚は、熱に弱く、触れるたびに、内側から震えを返していく。
葵は瞼を伏せ、頬を熱く染めたまま、愛おしさにそっと触れた。
その指先が、熱を帯びた自らの温もりにそっと触れた瞬間。
「ひゃんッ……!? んあぁっ……っ……! 拓海……っ……たく、みぃ……っ!」
指先から脳裏へと甘い甘い痺れが駆け抜け、葵は自らの手で可憐な悲鳴をあげて腰を跳ね上げた。
熱を帯びた指先で、溢れる恋しさを包み込みながら、自身の体を愛おしそうに優しく撫でていく。
指を動かすたびに、胸の奥から甘い吐息が零れ落ち、全身を熱い火照りと愛おしさが揺さぶっていく。
木製のベッドが、きしりと小さく鳴り、葵は自分の熱さに唇を噛んだ。
(拓海……っ……こんなとこ、見られたら……恥ずかしいよ……っ……)
見ている者のいない部屋で、葵は胸の奥に浮かぶ恋人の目を思い、熱い吐息をこぼす。
指先は愛撫に不器用なまま、けれど拓海の手を想うたび、少しずつ強さと優しさを増していく。
人差し指の腹で、肌のぬくもりを確かめるように優しく撫で、中指の先で円を描くように温もりを深めていく。
熱が溜まるたびに、葵の腰は自然と浮き、木製のベッドがきしりと小さく鳴った。
「ん……っ……あ、ん……っ……」
胸の鼓動が熱く脈打ち、全身の肌が愛おしさに粟立つ。
滑らかな太ももの内側を温かい汗の雫が伝い落ち、葵は涙で濡れた顔を伏せながら、切なさのあまり身体を可憐に身悶えさせた。
拓海の名を何度も、何度も切なく愛おしく叫び続け、あふれる恋しさを鎮めるように指先を夢中で動かし続ける。
「拓海……っ……拓海ぇ……っ……抱いて……っ……抱いてよ……っ……」
指先が肌の上を往復するたびに、胸の奥から甘い吐息が零れ、葵は自分の熱さに気づいて、唇を噛みしめた。
一度、肌を伝った汗が、月の光を弾いて細く光る。葵はそれを見て、また涙をこぼした。
(拓海に……この熱、わかってほしい……っ……)
切なさは、愛おしさと同じ速さで胸を締めつけ、葵の吐息は熱く、細く、震えていく。
指先は、もう迷わなかった。
肌を愛おしく撫でる動きから、そっと温もりを確かめるように指の腹を沿わせていく。
熱い火照りが、葵の指と肌の隙間を包み、触れるたびに、じわり、と優しく馴染む。
「んあ……っ……あぁ……っ……拓海……っ……」
胸の奥が揺れるたびに、葵の腹部が小さく跳ね、胸の谷間に汗が伝う。
指の腹が肌の温もりを捉えるたびに、切なさは体の奥から背へ、背から爪先へと駆け巡った。
身体は、熱く、柔らかく、指の腹の温もりをそのまま受け止めて離さない。
葵は、自分の心が、恋に開いていくような気がした。
指先が触れるたびに、胸の奥はキュッと締めつけられ、葵の腰を揺さぶる。
熱は、拓海の名を呼ぶたびに、体の中で弾けた。
葵は、自分の熱に、何度も息を奪われた。
「あ……っ……っ……! だめ……っ……拓海、だめぇ……っ……」
誰にも届かない声。けれど葵は、恋人を想い、誰にも見せられない表情を隠すように、腕を胸の上へ抱え上げた。
その腕の隙間から、豊かな胸が熱く脈打つ。指先の動きが速まるたびに、胸の鼓動は激しく鳴り、全身の肌は月の光の下でいっそう敏感に揺れていく。
「ん……っ……んあ……っ……もっと……っ……」
自分の言葉に驚き、葵は震える睫毛を伏せた。けれど、指先は止められない。拓海の名を呼ぶたびに、胸の奥から情愛が溢れ、その熱が指先へ流れ落ちていく。
人差し指と中指が、熱を帯びた肌の上で小さく震える。指の腹で押し、離し、また押し、離す。そのたびに、葵は「ひゃん」と息を漏らし、腰を細く跳ねさせた。
想いが深まるたび、葵の吐息は熱く、細く、震えていく。
月光は冷たく、肌は熱く、その差が葵の身体を何度も揺さぶった。
拓海に抱かれたら、自分はもっと素直に泣くだろう、と葵は思った。
胸の奥で、恋人の腕が自分を包む幻が、熱く、甘く、揺れる。
「拓海……っ……抱いて……っ……拓海……っ……」
声は、夜気に溶け、部屋に細く残る。
指先は、肌の上を細かく、細かく震え、そのたびに葵は腰を跳ねさせた。
胸の奥から漏れる熱い吐息は、月光の静けさを掠め、葵の耳の奥で甘く響いた。
熱は、まだ足りない。けれど、もう溢れそうだった。
葵は涙をこぼし、震える睫毛を伏せたまま、恋人の名を呼ぶ。
熱を帯びた肌は、指の腹が触れるたびに、細く跳ねた。
葵は、自分の熱に驚き、そっと庇うように指を伏せた。
胸の奥で、拓海の名が、甘く、切なく鳴り続ける。
涙は、まだ頬を伝い、月光に細く光る。
部屋の静けさが、葵の熱を包み、甘く冷ましていく。
「あ……っ……あぁ……っ……拓海ぃ……っ……好き……っ……大好きぃ……っ……」
甘い痺れが全身を駆け巡り、葵は爪先までピンと伸ばして切ない胸の高鳴りの果てを迎え、はぁはぁと肩を揺らして激しい吐息を漏らした。
その瞬間、指先は熱い肌の上で止まり、葵は全身を細く震わせながら、恋人の名を呼ぶ。
「拓海……っ……拓海……っ……!」
高鳴りの余韻は、静かな部屋に長く残り、葵の身体は熱いまま、何度も小さく跳ねた。
過敏になった肌を、指先がそっと庇うように覆い、葵は涙で濡れた頬を伏せ、肩で荒い息を繰り返す。
月光は、何も知らないように静かに差し込み、汗に濡れた指先を白く照らした。
葵はしばらく、自分の熱を味わっていた。胸の奥に残る切なさは消えぬまま、けれどその熱は、拓海への愛おしさと混ざり合って、甘く、切ない余韻へと変わっていく。
葵は、自分の指が拓海の手でないことを、静かに知っていた。
それでも、胸の奥の熱は、確かに拓海を求めていた。
月光は、何も言わずに葵の涙を照らし、肌を伝う汗を白く浮かび上がらせる。
拓海に会いたい、という想いは、想いが極まったあとも、胸の奥で甘く疼いた。
葵は、静かに、そっと瞼を伏せ、愛しい名を胸に抱く。
拓海の名を呼ぶたびに、胸の奥で愛おしさが波打つ。
葵は、自分の身体に残る熱を、そっと抱きしめるように胸へ腕を添えた。
月光は、静かな部屋に、甘く切ない余白を残していく。
恋しさは、消えない。けれど、その熱は、確かに拓海への愛だった。
葵は、愛しい名を胸に抱いたまま、ゆっくりと息を整えた。
(拓海……っ……また、会えるよね……っ……?)
問いは、誰に向けたものか、自分でもわからなかった。
一筋の月光が差し込む静かな部屋の中で、可憐な少女は涙と汗に身を濡らしながら、最愛の恋人への溢れんばかりの情愛とともに、甘く切ない余韻に包まれて静かに目を閉じた。
第5話をお読みいただきありがとうございました!
初陣を終えて冒険者ギルドの酒場で祝杯を挙げた葵。
そこで耳にしたふと懐かしい旋律――現代日本で最愛の恋人・拓海と口ずさんでいた「思い出の歌」にそっくりの民謡との出会いを通じて、拓海への変わらぬ強い想いと誓いを胸に刻む姿を描きました。
夜の部屋で迎える安堵と拓海への溢れる愛に満ちた甘く切ない一人夜まで丁寧にお届けいたしました!
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