前へ目次 次へ PR 100/107 楽園の妄想 スコールは突然にやってくる 大粒の雨が撃ち込まれるたびに 海面は刺立(とげだ)ち 夢のように青かった海は 無情のモノクロームと化した 背中は激雨に晒されていた けれども マスク越しの海中は 天国のように平穏だった 地獄は地下深くにある わけではなく 天国は天上高くにある わけではなく ひとりの人間をはさんで 背中合わせに存在していた スコールが去った海は 何事もなかったかのように 凪いでいった あれは 楽園にだけ自生する妄想 だったのだろうか ビーチから眺める 幻のような水平線は 空と海を分かちながら ひときわ青かった