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未来のお嫁さん6

「ぐじぐじと嘆いているのは、ティナに嫌われたくないっていうだけでしょう。」

「そりゃそうだろう。結婚相手だし、死ぬまで一緒にいるんだ。良好な関係がいいじゃないか。」

「良好な関係ね、貴方がティナに一目惚れしたのに、彼女は冷静だから拗ねてるだけじゃなくて。

相手にも同じような気持ちを返して欲しいとすぐに思うなんて、なんて図々しい男だこと。」

「っう…。同じとはいわなくても、好意位は欲しいじゃないか…」


リンティナがクーンと結婚しなかった未来や、リンティナがこの国の産まれじゃなかったら。

リンティナの母達が作戦を実行しなければ、そもそもクーンの両親が裏切りなんてしなければ。

リンティナはもっと逞しくて優しくて格好いい男性と出会えたかもしれない。

もしくは、好きな勉学をもっと極めて女学校の講師や、学長になっていたかもしれない。

ふいに出会ったモノに影響され、旅に出て冒険家になったかもしれない。多分。


もしかしたら、で浮かぶ沢山の楽しそうな道があったのに、

クーンのせいで、リンティナの道は選択することも出来ずに決められてしまったことが申し訳ない。


「そうだよ。恋愛や親愛なんて出会った後にいくらでも育めるものさ。僕とリーヌの婚姻だって政略の一つって知っているだろう?」

「レイン達は子供の頃からの付き合いで、後始末のためじゃないだろう…。」


クーンの目の前でいそいそとカトリーヌのお世話をしている青年は、今は大国パールの時期王配だが

元は、クーンと同じ大国に属する同盟国の貴族の一人だった。

フィン国と同じ位の国土だが、豊富な果実が特産の観光客に人気な国だ。


「リーヌは産まれる前から、婚姻させられる国がある程度は決まっていた。僕が選ばれたのは候補の国の貴族だったからで、カトリーヌが女だったから、王配が必要で、年齢が近い貴族の男が他にいなかったから。ただの偶然。否も何も言えないし、選択肢をもらえることもない、ハイ決まり。の政略結婚だよ。」


同盟間の結束を高めるために行われる大国と同盟各国の婚姻関係。

血が濃くなりすぎないように、計算して行われるその結婚は確かに逆らうことが出来ないものの代表かもしれない。

フィン国とパール国の婚姻は、一世代前であるカトリーヌの両親が行った。

数ある同盟国を一巡するまでは順番は来ないため、しばらくは周辺国家や国内との婚姻が続くだろう。


「はじめて出会った時から僕はリーヌの虜だよ。可愛いくて我が儘で少し意地悪だけど、為政者として立派になろうと努力してて、人を大事にしているからね。リーヌが自分以外を大事にするから、僕がリーヌを一番大事にすると決めたんだ。」


息を吐くように惚気ていくのはいつものことだ。

カトリーヌの前髪を整え、肩にかかる毛先をくるくる遊び、カトリーヌの好きなチョコレートを口ものまで運び、しっかりと握られた指を取りおり撫でたり口づけながらレインが教えてくれる。恋愛は一人ではできない。出会った年齢ではない。時間ではない。

心意気や接し方だと教えてくれるのは嬉しいが、自分と話している時くらいは、自分をみてくれとも思う。

今まで当然のように見せられていた好意だが、目に毒だし口から砂糖やら砂やら色んなものが零れていきそうだから、もう少し抑えてほしいとも思う。恐らく控えてくれていると思うが。


「クーンが気にしている事も多少は理解できるわ。

今回、始まりが貴方のご両親が犯した罪であっても、その責任を取らされているのは子供の貴方と、巻き込まれた形となったリンティナだものね。罪悪感があるのも当然だと思うの。でもね、こうなってしまったことは覆せないことだわ。そうでしょう?過去の出来事が原因なの。どうしようもないわ。

考えてみて欲しいの。このままリンティナがクーンとは別の人と、となった場合、幸せになるかもしれないけど、不幸せになるかもしれないじゃない。」


あの天使のような娘が不幸せに。なんて非道な事を言うのか

想像しただけで意識が遠のいた後に、その原因に対して報復したくなるだろう。


「なんて顔してるのかしら。だってそうでしょう?貴方とティナはたまたま年が近いけど、相手によっては後妻や親子という年齢だってあり得るし、政略なのであれば相手の性格などはある程度見逃されるは…。被虐体質や愛人を匿っていたり…もしくは、家から一歩も出さないような窮屈な生活かもしれないわ。」

「だっ、ダメだ!カトリーヌなんて事!!」

「可能性の話だわ。よく聞く話じゃない。」

「だとしてもダメだ!彼女には幸せになってほしいんだ!」


しどろもどろないい年したこんな自分と楽しく話してくれた。

可愛くて眩しい笑顔を向けてくれた。楽しい話も真面目な話も綺麗な声でいつまでも聞いていたい。

よく手入れされた滝のような白金の髪がバサバサの短い髪になって、

つやつやしててすべすべしそうな指先や爪がガサガサになったり、

体調を崩して綺麗な声が失われたりしたりするかも、だなんて!



「だからこそよ。」

「え…?」

「だからこそ、貴方がティナを娶り幸せにするの。まだ見ぬいるかも不明な相手に任せるのではなく、今までの罪滅ぼしでも、初恋の下心でも良いから彼女のために動こうと思える貴方が良いの。そうでしょう?どうなるかわからない相手よりも、貴方はティナに無体な事をするわけないんだから。」

「た、たしかに。」


自分はこれからもリンティアに惹かれ、最終的には愛する人。最愛な人になるだろう予感がする。

いやもうなりかけているのかもしれない。

そんな自分が彼女を不幸せにしないと思う、多分。幸せにしようとは努力すると思う。実かわからないが。

そう思うと、結婚相手が自分でも良い気がしてきた。



「それにしても、お母様達にも困ったものよね。お母様達の杜撰な計画のせいで、その子供が振り回されているというのに…。自分達の努力が報われた、なんて喜んじゃって。

確かに婚約破棄されて利用されたくないって逃げたリリ様の気持ちはわかるわ。国が心配だから備えておくのもわかるわ。でもたった三人で決めるなんて有り得ないと思わない?」

「その話も聞きたかったんだ、カトリーヌは女王陛下から何か聞いているのか。」


件の婚約破棄騒動から始まり、今ようやく話が終わろうとしている。

かかった時間や手間を考えると大きな計画のように感じていたが、カトリーヌの話ぶり的には違うようにも聞こえる。


「簡単にしか聞いていないけどね。お母様の話し的に、若い頃の勢いで始めた事っぽい感じがするのよね。

元王妃候補と、宰相夫人と時期王妃の立場の三人がよ。三名とも素晴らしい方だけど、やっぱり勢いってだめなのよね。」

「どういうことなんだ、わかりやすく教えてくれよ。」

「考えてみてよクーン。お母様達の中では、リンティナを育ててダメダメに育つであろうクーンのお嫁さんにすることが計画だったのよ。その間、クーンに婚約者や候補が出てきたら、なんて対策はされてなかった、知っている人が少ない秘密の計画だったの。」


もしかして自分がモテないのは秘密があるんじゃ。なんて思っていた小さな希望は木っ端微塵だ。

そうか、やはり普通にモテないだけか。なんて悲しく辛い事実だ。


「クーンは将来ダメダメになるって決まってたけど、三人の中である程度はまともになるかも、なんて期待もあったのよ。まぁ、私やレインが傍にいたし、クーンは毎回同盟のお茶会に参加していたでしょう。

そこで変わっていく貴方をみて考えすぎだったかもしれない、って思い始めてたらしいの。」


毎回カトリーヌやレインにはボコボコに自尊心を折られたうえに、年上や年下の同盟各国の子供達にも

慰められたり、馬鹿にされたりしたあの日々。

行きたくなかったが、逃げるのは嫌だったから毎回参加しては泣きながら帰っていた日々。

父親は子供の内は、たまに参加する程度で十分。なんて甘やかそうとしてくれていたが、

負けたばかりが嫌で、通っていたらいつの間にか楽しい場所となっていた。


時折、お茶会を抜けだしてカトリーヌとレインとお忍びで街中で遊んだ。

お忍びといってもバレバレで護衛もしっかりいたけど。

参加していた男子達の憧れだった、お菓子作りが趣味のおっとりとした侍女が、結婚が決まって宮殿を去るということを聞いて、男子達皆でひっそりと悔し泣きパーティーをした。

遠くから見ていた女子達に冷たい目で見られてまた泣いた。


護衛の騎士に憧れて、お願いしてお茶会の最中に稽古をつけてもらう時間を設けた。

練習試合で怪我をして母親にもう行かないで欲しいと言われても、お茶会が楽しくて通っていた。



「だから、もし本当にクーンと相思相愛で、相手がまともなご令嬢ならリンティナは別の人と、なんて思った時もあったらしいけど、クーンがあまりにもご令嬢方から不人気だから、お母様達も人間性に不安になっちゃってね。探りをいれたらしいの。そしたら、お母様達の計画が少し漏れていたらしくて。」


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