第十一魔界 温もりと出会えた時の嬉しさから…… 後編
「さぁ~着いたわよぉ~!とりあえず何事もなく無事に済んだんだから今は考え込むのはやめましょうねぇ~!ユウナちゃんがこうやって居てくれるだけでお姉さんは嬉しいんだからぁ~!!」
「・・・はい!」
(どうしてジンマカイの王様が悪魔に・・・それも悪魔の王様に・・・しかもジンマカイを滅ぼそうとしている・・・)
葉瑠香の家はマンションの最上階に位置していた。周りには高いビルも無く見晴らしも良さそうな感じだ。葉瑠香は家のドアを開けると
「どうぞぉ~!入ってぇ~!今日からここがユウナちゃんと私のお家だからねぇ~。私はちょくちょく仕事で出ちゃうけど、家の中にある物だったら何でも使って大丈夫だからねぇ~。」
「ありがとうございます・・・あの・・・こんな事聞いて失礼だとは思うんですが、葉瑠香さんて何者なんですか?」
「あっ!やっぱ気になるぅ~?だけどそれはまた明日ねっ!!今日はまだ仕事が残っているから事務所に戻っちゃうけど、明日ゆっくり話してあげるから今日はとりあえずユウナちゃんはゆっくり休んで。」
そう言うとユウナを奥にある部屋に案内した。
「ここがユウナちゃんの部屋ねぇ。一応、クローゼットに似合いそうな服を用意しておいたから好きに着てちょうだい。あとこれ何かあった時にいつでも連絡してね!それじゃ私は戻るね。」
ユウナに携帯電話を渡すとまた玄関の方に戻って行ってしまった。その後をユウナは追いかけた。
「あの・・・色々ありがとうございます!」
「良いわよぉ~。ザルムにもしっかり面倒見るように言われてるしね。」
「あと・・・それと・・・」
「ん?何かなぁ?」
「お仕事頑張って下さい!行ってらっしゃい!」
葉瑠香は何だか嬉しそうな表情をした。
「何かこうやって『行ってらっしゃい』って言われるのも良いわね。ずっと一人で暮らしてきたからちょっと嬉しいなぁ~・・・それじゃ行ってきます!!」
そう言って葉瑠香は事務所に戻っていった。ユウナは葉瑠香が言った言葉に寂しさと嬉しさが感じ取れた。まだ葉瑠香の事は何も分からないが、看護婦と双子の姉妹という事は葉瑠香もジンマカイの人間だと言う事だけは分かった。だが、どうして一人ジンマカイを離れ暮らしているのか?そうして皇魔について詳しく知っているのか?きっと明日には全てを話してくれるだろう。そう考えながらユウナは眠りについた。
(ユウナ・・・ユウナちゃん・・・)
(私の事を呼ぶのは誰?)
(・・・必ずユウナが帰って来るって信じてるよ!!)
(・・・私達にユウナちゃんを心配させてよ!!)
(チサ・・・マホ・・・)
(私達の絆はどんな事があろうとも『途切れる事のない絆』だからね)
(うん。いつまでもずっと一緒だからね。)
(ずっとずっと途切れない・・・途切れない・・・途切れる・・・永遠なんて無い!!)
(・・・!!)
(全てを滅ぼしてやる・・・お前らに希望などない・・・『必ずまた戻ってきて今度こそお前らに地獄を 味あわせてやるからな!』)
「皇魔!!」
ユウナは目が覚めた。周りを見渡し夢だという事が分かり安心したようだった。どんなに忘れようとしてもユウナや他の二人の脳裏に焼き付いて離れないのだった。
(人間界に来ているのにあの時の場面がどうしても浮かんでしまう・・・ジンマカイは本当に大丈夫だろうか?こうしている間にまた皇魔がやってきて滅ぼされたりしてないだろうか?)
色々考えていたユウナの耳に玄関の開く音が聞こえた。ユウナはあの時の恐怖心を思い出した。
(そんな・・・こんなところまで・・・嫌だ・・・怖いよ・・・葉瑠香さん・・・)
足音は近付き部屋のドアが開いた。
「あれぇ~?起きてたのぉ~?」
「葉瑠香さん!!」
ユウナはベットから飛び出して目に涙を浮かべながら葉瑠香に抱きついた。驚いた感じだったが優しくユウナの頭を撫でながら言った。
「どうしたのぉ~?何か怖い夢でも見ちゃったかなぁ~?でも大丈夫!!私が付いてるし何が起こってもユウナちゃんを守ってあげるからね。もう怖がらなくて大丈夫だよぉ~。」
「夢の中に皇魔が出てきて・・・全てを滅ぼすって・・・私達に希望はないって・・・」
「怖い夢を見ちゃったねぇ~。でも皇魔にジンマカイは滅ぼされたりなんかしないよぉ!ザルムと同じような称号を得た魔法使いがたくさん居るんだから皇魔の好きなようには出来ないよぉ。あとねぇ~これは秘密なんだけど、ジンマカイには昔から守り神様がいるんだよぉ!どんな時でも国の平和を見守っていてくれているらしいんだよねぇ。それにユウナちゃんの笑顔がある限り希望が無くなる事は決して有り得ないからねぇ。だからユウナちゃんにはずっと笑顔で居て貰いたいんだよねぇ。私が守っているから安心して笑ってて大丈夫だよぉ!!」
不安や恐怖を癒すかのようにユウナの事を強く抱き締めながら話した。その温もりのおかげでユウナの恐怖心も和らいだ感じだった。
「どう?少しは落ち着いたかなぁ?」
「はい、もう大丈夫です!ありがとうございました!」
いつものようにユウナは笑顔で答えた。そして何気なく時計を見ると午前二時を回ったところだった。
「あれ?私、何時間寝ちゃったんだろう・・・?」
「よっぽど心も身体も疲れていたんだろうねぇ。まぁ昨日は色々あったみたいだし、たくさん寝て元気になってくれたらお姉さんは嬉しいよ!!」
「葉瑠香さん今帰って来たんですよね?」
「うん、ちょっと仕事が立て込んじゃって遅くなっちゃったぁ~。」
「私が眠っている間ずっと仕事していたんですか?そんな疲れているのにすみませんでした・・・」
「大丈夫!大丈夫だよぉ~!時間は遅くなっちゃったけど、そんなにハードワークしちゃってた訳じゃないからねぇ。それにユウナちゃんに甘えられたから癒されちゃったよぉ~!」
ユウナは恥ずかしくなった。その表情を見て更に癒されたような感じの葉瑠香だった。
「・・・葉瑠香さん!」
「ん?」
「遅くなりましたけど、お帰りなさい!」
その言葉に今度は葉瑠香が照れた。
「もう~そういう事言われたらもう一度抱きしめたくなっちゃうよぉ~!」
「本当なら帰って来た時に言いたかったんですけど、タイミングを失っちゃって・・・」
「言って貰えるだけでも嬉しいよぉ~!」
葉瑠香はとても嬉しそうだった。テンション上がりまくりの状態だった。
「よし!今日はお姉さん一日休みだからユウナちゃんとゆっくり過ごしちゃおうかなぁ。とりあえず朝まで一緒に寝よっかぁ!!」
「一緒にですか?」
「お姉さんとは嫌かなぁ・・・?」
「いえ!そんな事は!ちょっと恥ずかしいだけです・・・」
「照れないの照れないの!!じゃあユウナちゃんのベットで寝ようかなぁ~!!」
ユウナのベットに二人で入った。ユウナはもちろんの事照れていたが、言い出した葉瑠香も照れていたがどこか嬉しそうな笑顔のようにも感じられた。見上げた天井は何処までも遠く高い夜空のようだった。ずっとお互いに口を閉ざしていたが葉瑠香が切り出した。
「ユウナちゃん・・・寝ちゃったぁ?」
「いえ、まだ起きてますよ。」
「何かこうして人の温もりに触れながら寝るのって嬉しいね。誰かが自分の隣に居てくれるってだけで嬉しくなっちゃう。」
「私もその気持ち分かります。人が与えてくれる温もりって本当にかけがえないと思います。心までも優しく包んでくれているような感じでついつい嬉しくなっちゃうんですよね。」
「お姉さんねぇ・・・ユウナちゃんが来てくれて本当に嬉しいんだよぉ。ユウナちゃんにとっては魔力を無くしてしまって仕方なく人間界に来た感じかも知れないけど、一緒に居て寂しさを感じなくなったんだぁ。家を出る時とか帰って来た時に声を掛けてくれる人が居るって嬉しいもんだよぉ。仕事してても家で待っててくれる人が居るって考えると元気が出る。」
出会ったばかりのユウナをこんなにも優しく受け入れ、こんなにも感情を表に出してしまうのは葉瑠香がずっと寂しい思いをしてきた事の証拠なのかもしれない。ユウナはそんな葉瑠香の寂しさを包むかのように話す。
「私も葉瑠香さんが傍に居て貰えて嬉しいです。両親は私が物心つく前に事故で亡くなってしまって、母方の伯母に引き取られたんですが迷惑を掛けたくないって思いから中学に入ると同時に一人暮らしを始めたんです。私が自分で決めた事とはいえ、やっぱり一人は寂しかったです。家のドアを開けて『ただいま』って言っても誰も『おかえり』って言って貰えないですもんね。人に迎えられる事も迎える事も出来ないなんてやっぱり寂しいです。でも葉瑠香さんに『行ってらっしゃい』って言えたり、『おかえりなさい』って迎えてあげたり出来て何か心がくすぐったかったです。でも嬉しくてニヤニヤしちゃいました。」
そう言って隣に居る葉瑠香を見たユウナの顔は自分で言って自分で恥ずかしくなって照れているような感じだった。自分だけじゃなく相手も同じように嬉しいと感じてくれた事がお互いにとって嬉しく思えた瞬間だった。
「ユウナちゃん・・・ありがとうね!本当にユウナちゃんが優しい子で良かった!」
優しい笑みを浮かべながらユウナの頬に触れた。不意に葉瑠香も自分の言った言葉に照れたのか
「さぁ、早く寝ないと起きれなくなちゃうぞぉ!」
「私はずっと寝てたので大丈夫ですけど、葉瑠香さんの方が仕事してて疲れているから起きれないかもですね!」
「あ、そんな事言うんだぁ・・・じゃあ私が起きるまでユウナちゃんをベットから出さないように抱きついて寝てやるんだからぁ~!!」
「そ、そんなに引っ付かれたら、寝れないじゃないですかぁ~!!」
すぐ傍に誰か居るという事がこんなにも嬉しく、こんなにも温かいものだと二人は感じていた。小さい事のように思えるが、その小さい事がとても大きな事である。楽しい時間がずっと続けばと思いながら二人は眠りについた。




