第十魔界 温もりと出会えた時の嬉しさから…… 前編
『時空の扉』に飛び込んだユウナはどこまでも続く長い光のトンネルを高速で進んでいた。何処となく温かい光は懐かしささえも感じられるほどだった。
(何故だか温かい・・・見たこともない人間界に向かっているのに心が癒されていくかのように落ち着くのは何故だろう・・・)
そんな事を思い、感じていると一段と眩しく輝く光が近付いてきた。
(きっとあそこが人間界への出口だ・・・)
吸い込まれるように光の中に入って行く時に意識が遠くなるような感じになった。そして遠くから声が聞こえた。
「・・ですか?・・・丈夫ですか?・・・大丈夫ですか?」
ゆっくり目を開けると女性が心配そうな顔をして声を掛けてくれていた。ユウナは慌てて起き上がると女性の頭にぶつかってしまった。
ゴンッ
「ぁっ!!イッッッタイ!!」
「うぅぅぅ・・・すみません大丈夫ですか?」
「うん・・・大丈夫!!」
(あれ?ここは何処だろう?私は一体どうしちゃったんだろう?)
「倒れてたから心配しちゃったよぉ。でも元気みたいね。」
「あの・・・ここって・・・ジンマカイ・・・じゃないですよね?」
「ジンマカイ?何か楽しい夢でも見てたのかな?」
(私、無事に人間界に来られたんだぁ・・・)
「それより本当にどこも悪くないのかい?」
「はい!大丈夫です。ありがとうございました。」
「それなら良かった。もう起きて家に帰ってから寝なさいね。」
「ご心配おかけしてすみませんでした。」
女性は立ち上がるとユウナを立ち上がらせ、その場から歩いて行った。
「あっ!すみませ~~~ん!!」
ユウナは思い出したかのようにポケットに入れておいたメモを取り出して女性を追いかけた。
「ん?どうしたの?」
「あの~すみませんが、この場所って分かりますかね?」
女性はメモを手に取ると頷きながら言った。
「この場所ならすぐ近くだよ。連れて行ってあげるからおいで。」
「ありがとうございます!お願いします!!」
ユウナは女性の横に並んで歩き出した。色々と女性は話をしてくれたがユウナには初めて見る人間界が新鮮であまり聞いてなかった。
(ジンマカイと人間界ってそんなに変わった感じがしないな。何か普段と同じような感じがするし、人間界も良い人が居て安心しちゃった!!)
ユウナがそんな風に色々考えていると一つのビルの前で女性は止まった。
「着いたよ!ここの三階があなたの探している場所よ。」
「・・・せりざわ?・・・たんてい?・・・じむしょ?」
「探偵事務所に行きたがるなんてやっぱりあなた困ってるんじゃないの?あんなところに寝てたし!」
「いや!ここには知り合いが居るっていうだけで困ってなんていませんよ。案内して下さってありがとうございます!それじゃ失礼します!!」
ユウナは逃げるようにビルの中に入っていった。
(って入って来ちゃったのは良いんだけど、ザルムさんの知り合いって探偵なのかな?何かこういうところに入っていくのって勇気がいる!!怖い人だったらどうしよう・・・)
ユウナは恐る恐るビルの三階まで上るとドアの前まできた。そしてゆっくりドアを開けた。
「・・・すみません」
事務所の中は静まり返っていた。
(あれ?留守中だったかな?)
ユウナは奥へと入っていた。すると置いてあったソファの向こうからいびきが聞こえてきた。
「くぅ~~~すぅ~~~くぅ~~~すぅ~~~」
足音を立てないように近付くユウナだったが、傍に積んであった本の山を倒してしまった。
バタバタバタバタバタバタ!!
その音にびっくりしたソファで寝ていた人が起き上がった。寝ていたのは女性だった。
「あの・・・すみません!!」
「あ~ぁ~依頼らったら午後からにしてくだしゃ~い」
寝ぼけているらしくそう言うとまたソファに倒れてしまった。ユウナはソファの向こう側に移動するとその女性の顔に見覚えがあるように感じた。
(あれ?どこかで見た事あるんだけど・・・どこだったかな?)
「すみません・・・私、芹澤さんって人を訪ねてきたんですけど・・・今日は居られないのでしょうか?」
ユウナがそう尋ねると女性はもう一度起き上がった。
「芹澤は私ですけどぉ~~~」
ユウナは思い出した。
「あ!!看護婦さん!!」
「看護婦・・・?」
女性は横にあったメガネをかけてユウナの顔をじーっと見ていたが何かに気付いたかのようにびっくりした。
「あれ?もしかして・・・ユウナちゃん?」
「はい!ザルムさんに芹澤さんを尋ねるように言われて来ました。」
それを聞いた女性はソファから立ち上がりユウナを抱き締めながらさっきまでの寝ぼけた感じとは違って明るく言った。
「良かったぁ~!ちゃんと無事にこっちに来られたんだぁ~!お姉さん心配だったんだよぉ~!!心配過ぎて夜も眠れないくらいだったのぉ~!!」
「そうだったんですか。」
(ついさっきまでよく眠っていたような気が・・・)
「さっき私の事、看護婦さんって言ってたよねぇ~?間違えるのも無理ないよぉ~!だって私達双子の姉妹だもん!!ちなみに私は看護婦さんのお姉さんで葉瑠香っていうのぉ~!!これからユウナちゃんがこっちにいる間ずっと一緒に居るからねぇ~!!」
「あ、はい!よろしくお願いします!看護婦さんの双子のお姉さんだったんですね。間違えるはずですね!!」
「まぁ唯一違うところといえば私凄く目が悪くってメガネが無いと何も見えないのよねぇ~!だからさっきユウナちゃんが来てても全然分からなくて気付いてあげられなかったの。ごめんねぇ~~。」
「いえ、そんな事は・・・」
「とりあえずユウナちゃんジンマカイからの時空移動で疲れていると思うから私の家に案内するねぇ~。」
ユウナと葉瑠香は事務所から出ると葉瑠香の車に乗った。車中で葉瑠香はユウナにジンマカイの事について色々聞いてきた。
「ジンマカイって今何が流行ってるのぉ~?」
「そうですねぇ~。私そういう事あまり知らない方なのでよく分からないんですけど、最近街に色んなお洒落なカフェが出来てきたみたいで学生の中では人気があるみたいですよ。あとドーナツ屋さんもできましたね。」
「あぁ~!そうなのぉ~!私がいた頃と変わってるんだねぇ~!今度ジンマカイに戻った時は案内してよぉ~!!」
「はい、分かりました!」
そんなあまり重要ではない世間話が続いていたが、急に葉瑠香は改まった感じで話してきた。
「ところでユウナちゃんが魔力を失っちゃたのは、悪魔と遭遇しちゃったからだって聞いたんだけど・・・どんな悪魔だった?」
「悪魔のせいで魔力を失ったっていうのはちょっと違う感じで『許容範囲以上の魔力』を使ってしまったのが原因みたいなんですよね。私自身は友達を助けたいと願っただけなんですが、それが召喚魔法に繋がっちゃったみたいで・・・。悪魔の口から直接聞いた訳じゃないんですけど、その召喚したドラゴンが悪魔の事を皇魔って呼んでました。」
「皇魔!!本当に・・・皇魔って言ったの?」
頷くユウナに葉瑠香は衝撃を受けたような感じだった。そして次に葉瑠香が言った言葉にユウナも衝撃を受けた。
「皇魔はジンマカイを作った初代国王よ!!」
「えぇ・・・!!」
「そして今現在、魔界の王にして最強の力を持つ悪魔!!」
「ジンマカイの王様が・・・なぜ魔界の王様に・・・」
「とんでもない悪魔に出会ってしまったわね。」
葉瑠香の車は一軒のマンションの前に止まった。




