闇をすませば(中)
一
準備に、十日かかった。
金の工面が最も難しかった。金貨五十枚。腹割亭を開いてからの数ヶ月分の稼ぎを全て合わせても足りない。開業前からの貯金——父トルドが漁で少しずつ貯めてくれた金を加えて、ようやく届いた。
店の運転資金が、ほとんどなくなった。
「サエル。金、大丈夫なんか」
ガルドが訊いた。台所で翌日の仕込みをしているサエルの横に立って、棚の壺を見ていた。いつもは干し魚と根菜で満たされている壺が、半分空になっている。
「大丈夫や。しばらく仕入れを減らす。朝粥は続ける。夜の酒は安いのだけにする」
ガルドはサエルの顔を見た。それから壺を見た。もう一度、サエルの顔を見た。
何も言わなかった。棚から干し魚を一本取り出して、包丁の前に置いた。いつもより丁寧に骨を外し始めた。一本の魚から、少しでも多く身を取ろうとしているのだと、サエルには分かった。
「……ありがとな」
ガルドは答えなかった。包丁の音だけが続いた。
✱ ✱ ✱
リーラの調査は、着実に進んでいた。
「温もり処の客は、大きく分けて二種類よ」
閉店後の腹割亭。カウンターに水を置いて、リーラが指を二本立てた。
「一つは、港の労働者や船乗り。安い金で入れる。相手を選べない。あてがわれた部屋で、あてがわれた人間と一晩過ごす」
二本目の指を折った。
「もう一つは、貴族。こっちは高い。相手を選べる。部屋も違う。——で、金を積めば何をしてもいいらしい」
「何をしても、というのは」
「そのままの意味よ」
リーラの声が平坦になった。カウンターの木目を見ている目が、何かを映さないようにしている目だった。
サエルは訊かなかった。それ以上は、今は要らない。
「見張りは?」
「正面に二人。裏口に一人。夜は交代制。深夜二時から三時が手薄になる——ミーシャの報告と一致するわ」
ミーシャが頷いた。膝を抱えて、壁にもたれている。
「……裏口の一人、いつも眠そうにしてた。三日目は座ったまま寝てた」
「使えるわね、その情報」
リーラがミーシャを見た。ミーシャの耳が少しだけ立った。
サエルは両手をカウンターに置いた。
「明後日の夜、行く。正面から入る。客として」
「正面から?」
「ああ。金貨五十枚を持って。レナ——107番の借金を返しに行く」
リーラが目を細めた。
「……あの男が、素直に受け取ると思う?」
「思わん。でも、金を差し出すことに意味がある。断られたら、断った事実が残る。借金を返しても解放しないなら——あそこは『借金の回収所』やなくて『監禁所』や。断った瞬間に、本性が出る」
リーラが黙った。五秒ほど。
「——マスター。あんた、思ったより計算高いわね」
——福祉屋は書類仕事も多いんや。相手の出方を読んで、証拠を残して、行政に持っていく。前の世で散々やった。
「リーラ。お前は裏口の外で待っとってくれ。俺が出てこんかったら——」
「ガルドとソルを呼ぶ。わかってるわよ」
ガルドが台所から顔を出した。
「……呼ばれたら、行く」
ソルが入口の横に立っていた。胸の光が、いつもより強く明滅した。
二
二日後の夜。
サエルは外套の内側に革袋を括りつけた。金貨五十枚の重さが、肋骨に食い込む。
腹割亭の裏口を出た。坂道を下りる。港の方角。
夜風に潮の匂いが混じっている。秋の初めとは違う、冬に向かう夜の鋭さがあった。
温もり処の前に着いた。扉の前に立った。深呼吸を一つ。
叩いた。
覗き窓が開いた。前回と同じ目。
「——また来たんか」
覚えられている。
「ああ。今日は金を持ってきた。元締めに会わせてくれ」
目が動いた。覗き窓が閉まった。
待った。一分。二分。
扉が開いた。前回とは違う男が立っていた。体格がいい。腰に短剣を帯びている。
「ついてこい」
前回の客用の部屋ではなかった。廊下をまっすぐ進み、突き当たりの扉を開けて、階段を上がった。二階。窓がない廊下。薄暗い。壁掛けのランタンが等間隔に並んでいるが、三つに一つは消えていた。
——二階は客を通す場所やない。管理する側の場所や。
廊下の奥に、一つだけ大きな扉があった。
男が扉を叩いた。
「連れてきました」
中から声がした。
「入れ」
低い声。落ち着いている。怒ってもいなければ、焦ってもいない。
扉が開いた。
✱ ✱ ✱
部屋は広かった。
温もり処の他の部屋とは造りが違う。壁に布が張ってある。窓が一つ。鉄格子はない——ここは「外の側」の部屋だ。中にいる人間は、出ていける人間だ。
机の向こうに、男が座っていた。
がっしりとした体格。直立した姿勢——座っていても背筋が伸びている。元軍人の姿勢だ。顔に古い傷跡。鋭い目つき。
ガセイ・タダマサ。
大通りですれ違った、あの男。
ガセイの目がサエルを見た。値踏みするように。上から下へ、靴の先まで見て、また顔に戻った。
「——座れ」
サエルは椅子に座った。ガセイの机を挟んで、向かい合う形になった。
ガセイが片手で顎を触った。
「ロウタ家の小僧か」
「ロウタ・サエルや。腹割亭のマスター」
「知っとる。潮風区で酒場をやっとる没落貴族の倅やろ。名前だけ立派な家の」
サエルは反応しなかった。
——身分の話で挑発しとる。この手の人間は、まず相手を見下すところから入る。乗ったらあかん。
「レナ——107番の借金を返しに来た。金貨五十枚。ここにある」
サエルが革袋をガセイの机の上に置いた。重い音がした。
ガセイは革袋を見た。手を伸ばさなかった。
「……ほう」
目が細くなった。
「あの女の借金を、お前が返すと。——なんでや」
「理由がいるんか」
「いるやろ。金貨五十枚は安い金やない。没落貴族の酒場が数ヶ月で稼げる額とも思えん。親の蓄えか? 漁師の親父が一生かけて貯めた金を、見ず知らずの女一人に使うんか」
ガセイの声には嘲りがあった。でも、それだけではなかった。目の奥に、別の何かがあった。
——不快。俺が理解できん行動をしとるから、不快なんや。
「理由はシンプルや。あの人を、ここから出したい」
「出してどうする」
「あの人が決める。俺が決めることやない」
ガセイの指が、机の上で止まった。
沈黙が降りた。
ガセイの目が、サエルの顔を射るように見ていた。品定めとは違う目。もっと深いところを見ようとする目だった。
「——お前、何者や」
「さっき言うた。腹割亭のマスターや」
「ただの酒場のマスターが、こんなことはせん」
「するで。客が困っとったら」
「客? あの女がお前の客だと?」
「まだ客やない。でもなる。ここから出たら、うちに来たらええ」
ガセイが立ち上がった。椅子が後ろに下がった。
背が高い。サエルより頭一つ分大きい。軍人時代の身体が、退役後も残っている。
「——聞かせてやろうか、坊主」
ガセイが机の端に手をついた。
「ここにおる人間は、外の世界で居場所がなかった人間や。借金で追い詰められた。家族に売られた。街で行き倒れとった。——ここに来る前、全員が路上か、それ以下の場所におった」
「それで?」
「ここは屋根がある。飯が出る。寝る場所がある。外でのたれ死ぬよりましやろ」
サエルの指が、膝の上で握られた。
——出た。この論理。「ここにいるほうがまし」。前世でも何度も聞いた。施設が、虐待が、搾取が正当化される時の定型文や。
「飯と屋根がある代わりに、名前を奪って、番号で呼んで、鍵をかけて、外に出さへん。それを『まし』と呼ぶんか」
ガセイの目が、一瞬、鋭くなった。
「——お前に何がわかる」
「わかる」
「わかるかよ。お前みたいな若造に。二十歳そこそこの小僧が、ドワーフやゴーレムに囲まれて、毎晩あの店で笑うとる——あんな連中に慕われて、それで何かわかった気になっとるんか。ここに来る人間の気持ちが、お前にわかるかよ」
ガセイの声が上がった。怒りだった。でも怒りの下に、別の何かが滲んでいた。
サエルは【共感把握】を使わなかった。使わなくても、聞こえていた。
ガセイの声が「慕われて」と言ったとき、喉の奥が引き攣っていた。「お前みたいな人間」と言ったとき、机の端を握りしめた手の指の関節が白くなっていた。
——この人は、「わかるかよ」と訊いとるんやない。「なんでお前にはそれがあるんや」と訊いとるんや。
「金は受け取らん」
ガセイが言った。
「帰れ。二度と来るな」
「金を受け取らんということは、借金を返しても解放せんということか」
「そうや」
「ほな、ここは借金の回収所やない。監禁所や」
ガセイの目が、完全に冷たくなった。
「——言葉を選べ、小僧」
「事実を言うとるだけや」
ガセイが机の横から出てきた。サエルの正面に立った。近い。息がかかる距離。
「お前の店な。腹割亭いうたか」
声を落とした。
「あの店のせいで、うちの客が減っとるんや。知っとるか? お前が居場所やの何やの言うて人を集めるから、ここに来る人間が減る。お前が『外にも場所がある』いう幻想を見せるから、ここの人間が不満を持つようになる」
——そういうことか。この店が、あの男の商売を脅かしとったんや。居場所がある、と知った人間は、ここに来なくなる。
「お前のやっとることは、秩序を壊しとるんや。弱い人間は、弱い人間の場所におればええ。強い人間が守ってやる。それが秩序や。お前は——その秩序を壊す」
サエルは立ち上がった。ガセイと目が合った。
「弱い人間なんかおらん。名前を奪われた人間がおるだけや」
ガセイの顔に、何かが走った。怒りではなかった。もっと古い、もっと深い場所から来た表情だった。
その瞬間——
建物の奥から、音が聞こえた。
三
悲鳴ではなかった。
悲鳴よりも静かな音だった。何かが床に倒れる音。そのあとに、くぐもった声。短い。途切れる。もう一度。
サエルの全身が反応した。
足が動いていた。ガセイの脇を抜けて、扉を開けて、廊下へ。
「おい——」
ガセイの声が背中に当たった。無視した。
二階の廊下を走った。音の方向へ。突き当たりを右に曲がると、廊下の奥に扉が一つあった。他の扉と違う。金属製。重い。そして——少しだけ、開いていた。
隙間から、光が漏れていた。ランタンの光ではない。もっと白い、冷たい光。
匂いが来た。
薬品の匂いだった。消毒液に似ている。その下に、もう一つ——鉄の匂いが混じっていた。
サエルは足を止めた。
隙間に目を向けた。
一瞬だけ。
白い床。白い壁。排水溝がある。台のようなものが部屋の中央にあって、革の帯が台の端から垂れていた。帯には金具がついている。拘束用だ。台の表面は、洗い流したばかりのように濡れていた。でも床の隅に、拭き残しがあった。赤黒い色をしていた。
部屋の奥に、人が立っていた。白い布の服。こちらに背を向けている。その足元に——。
サエルは目を閉じた。
身体が後ろに下がった。壁に背中がぶつかった。壁に手をついた。指が震えていた。
——見た。一瞬だけやったけど、見た。
こめかみの奥が脈打っていた。胃の底から何かがせり上がってくる。壁に手をついたまま、息を整えようとした。喉が詰まった。口の中に酸っぱいものが広がった。壁に額を押しつけた。石壁の冷たさが、額に食い込んだ。
——あかん。吐くな。ここで崩れるな。まだ、やることがある。
鼻の奥に、あの匂いがまだ残っていた。消毒液と鉄。
三秒。五秒。十秒。
呼吸が戻った。指の震えが残っていた。
廊下に足音が近づいてきた。ガセイの部下だろう。二人分。
サエルは壁から手を離した。
振り返ると、ガセイが廊下の奥に立っていた。腕を組んで、こちらを見ていた。
「——見たか」
ガセイの声は、平坦だった。
「見た」
「ほな、わかったやろ。ここはそういう場所や。お前の金貨五十枚で、どうにかなる場所やない」
サエルはガセイを見た。
ガセイの目。あの目。冷たい目。——でも。
——こいつは、あの部屋のことを「仕方ない」と思っとるわけやない。「そういうもの」として処理しとるんや。見てて、知ってて、「これが秩序だ」と名前をつけて、棚に上げとる。
「あの部屋におる人を、お前はどう思ってる」
「思うも何もない。あいつらはあいつらの場所におる。それだけや」
「場所を選んだんか、あの人らが」
「選ぶ?」
ガセイが鼻で笑った。
「選ぶ力がない人間がおるんや、世の中には。選べん人間の代わりに、選んでやる人間がおらなあかん。それがここや」
サエルの拳が握られた。
——「選ぶ力がない」。前世でも聞いた。「判断能力がない」「自己決定ができない」「本人のために」。全部、同じ論理や。本人の内側を見ずに、外から「この人間には選ぶ力がない」と決めつける。それが、ここで起きとることの根っこや。
「選ぶ力がないんやない。選ばせてもらえんかっただけや」
サエルが言った。
ガセイの目が動いた。
「……何?」
「お前が『選べん人間』と呼んどる人間は——選べんのやなくて、お前が選ぶ機会を奪ったんや。名前を奪って、鍵をかけて、番号で呼んで。選ぶために必要なもんを全部取り上げてから『選ぶ力がない』と言うのは、お前が作った状況やろ」
廊下の空気が変わった。
ガセイの表情が動いた。怒りが薄くなった。代わりに、もっと硬い何かが浮かんだ。
「——帰れ」
低い声だった。
「帰れ。今すぐ帰れ」
「金は置いていく。レナの——セラの借金の返済や。受け取るか受け取らんかは、お前が決めろ。ただし」
サエルが一歩、前に出た。
「俺は、また来る」
ガセイの部下が二人、サエルの腕を掴んだ。引きずるように廊下を戻された。階段を下ろされ、正面の扉から外に押し出された。
石畳に膝をついた。
扉が閉まった。鍵がかかる音がした。
革袋は、ガセイの机の上に置いたままだ。
四
立ち上がった。
膝が震えていた。腕にまだ、掴まれた痛みが残っている。
路地を歩いた。裏口の方へ。
暗がりから、影が動いた。
「——マスター」
リーラの声だった。
「リーラ。……大丈夫や」
「大丈夫な顔してないわよ」
リーラがサエルの横に立った。月明かりの下で、サエルの顔を見た。
「顔、白いわ。何があったの」
「……中を見た」
それ以上は言わなかった。リーラも訊かなかった。
二人で坂道を上った。腹割亭の明かりが見えた。二階の窓。
裏口を開けると、ガルドが立っていた。
サエルの顔を見た。それからサエルの手を見た。震えている手を。
ガルドは何も言わなかった。台所に行って、湯を沸かした。白湯を椀に注いで、サエルの前に置いた。
サエルが椀を受け取った。両手で包んだ。温かかった。指の震えが、少しだけ収まった。
「……ガルド」
「うん」
「あそこは、あかん場所や」
「……うん」
ガルドはサエルの隣に座った。何も訊かなかった。ただ、隣にいた。
ソルが入口の横から動いて、サエルの反対側に立った。胸の光が、ゆっくりと、温かく明滅していた。心臓の鼓動のように。「ここにいるよ」というリズムだった。
ミーシャが二階から降りてきた。サエルの顔を見て、耳が伏せた。何かを言おうとして、やめた。代わりに、サエルの隣——ガルドの反対側——に座った。
四人が、サエルを囲んでいた。
——一人で全部やろうとするな。
ヨシエの言葉が蘇った。
サエルは白湯を啜った。
「……明日、もう一回行く」
ガルドの手が膝の上で動いた。叩かなかった。膝の上に手を置いたまま、サエルの横顔を見ていた。
リーラがカウンターに肘をついた。
「一人で?」
「いや。——みんなで行く」
ガルドが膝を叩いた。
ぱん。
強い音だった。いつもの「ええやん」のリズムではなかった。もっと深い、腹の底から来る音だった。
——「行く」という音だった。
✱ ✱ ✱
全員が二階に上がった後、サエルはカウンターに一人で残っていた。
白湯の椀が空になっている。手の震えは止まっていた。でも、こめかみの奥にまだ痛みが残っていた。
あの部屋で見たもの。一瞬だけ開いた扉の隙間から見えたもの。
——見たのは一瞬やった。でも、あの一瞬が、頭の中に焼きついとる。
サエルは目を閉じた。
閉じた瞬間、あの白い光が瞼の裏に蘇った。白い床。白い壁。台の上の——。
目を開けた。
こめかみが脈打った。痛みではない。もっと奥の、頭蓋骨の内側を指で叩かれるような感覚。
——これは、【共感把握】の反動やない。
反動なら、使った直後に来る。さっきはガセイの前で使っていない。あの部屋の前でも使っていない。それなのに、温もり処にいる間じゅう、頭の奥が鳴っていた。
——あの建物に染みついた感情が、勝手に入ってきとる。
前に来たとき、客用の部屋で一回【共感把握】を使っただけであれだけの反動が来た。今日は使っていないのに、頭が痛い。あの建物自体が、感情の塊になっとるんや。
あの場所に長くいると、使わなくても——スキルが勝手に拾い始める。
サエルは手を見た。指が、微かに震えていた。止まったと思ったのに。
こめかみの奥で、何かが脈打っている。
——明日、あそこに行く。みんなで行く。セラを出す。あそこにいる全員を出す。
——でも、あの建物の中で、【共感把握】が暴走したら。
考えないようにした。椀を洗った。カウンターを拭いた。いつもの動作。手を動かすことで、頭の中のノイズを押し戻す。
窓の外に月が出ていた。
——セラ。
河原石を握っているだろうか。
——待っとけ。明日、行く。
灯りを消した。
階段を上がる途中で、こめかみが一度、強く脈打った。
足が止まった。手すりを掴んだ。
三秒。
脈が収まった。
——大丈夫や。まだ、大丈夫。
二階に上がった。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます! まっとんです。
第四章・中巻をお届けしました。三部構成の真ん中、最も緊張感の高いパートだったと思います。
この章で書きたかったのは、ガセイ・タダマサという人間です。「弱い人間は、弱い人間の場所におればええ」——あの台詞を、ただの悪役の台詞にはしたくなかった。サエルに「慕われて」と言ったとき、喉の奥が引き攣る。あの一瞬に、ガセイという人間のすべてが出ています。踏みつけることでしか自分の価値を確かめられなかった人の、いちばん深い場所にあるもの。
もう一つ大切にしたのは、「選ぶ力がない」という論理への反論です。福祉の現場には「本人のために」という言葉があります。善意から出る言葉です。でも、名前を奪い、鍵をかけ、選択肢を全部取り上げてから「この人には選ぶ力がない」と言うのは、状況を作った側の論理です。
サエルの「選ばせてもらえんかっただけや」は、障害福祉の世界で長く議論されてきた「自己決定支援」の核心でもあります。
こうした背景を知らなくても、サエルとガセイのやりとりを追いかけてもらえたら、伝わるものがあると信じています。
下巻「夜明けの戸締まり」では、物語が一気に動きます。サエルが、仲間が、そして腹割亭という場所が、初めて本当に試される夜になります。
感想やブックマーク、とても励みになります。率直なご意見も大歓迎です。
それでは、次回もお楽しみに!




