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中古にまつわる怖い話と奇妙な話  作者: 夏の月 すいか


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10/16

誰のもの

     ―玩具リユース店 店長 涼村(すずむら)さん(仮名)の話―


 店舗のオープン時間前。まだアルバイトスタッフも出勤していないうちに、店長の涼村さんが店内の巡回を済ませようとしていたところ、ガン、ガン、ガン、ガンと何か硬いものがぶつかる音が聞こえてきた。

 音の出どころに行くと、そこはヒーローやロボット、怪獣が並んだ特撮コーナーだった。

 ショーケースに真っ直ぐ並んでディスプレイされているはずの超合金ロボが数体、ガラスの扉にぶつかっていた。後ろから押し出されたように前に倒れていた。

 翌日の巡回中にもまた、特撮コーナーから音がした。今度は落下音だった。

 棚に並んだDXロボが数体、床に落ちてバラバラになっていた。

 その翌日、涼村さんは会議で本部に出向いた。そこで同僚に昨日、一昨日の出来事を話した。

 「それって多分遺品じゃないかな。亡くなった未練っていうか無念っていうか、気持ちがこもってるんだと思うよ」

 そうかもしれないなと涼村さんは思った。

 たしかに心当たりはあった。カタカタと動いたおもちゃはどれも自店舗で買取ったものではなく、本部から送られてきた在庫だった。

 おそらく本部の社員が遺品を買取ってきたのだろう。亡くなった主人が特撮もののコレクターで、遺族の方が買取を依頼したのだろうと涼村さんは推測した。


 会議の翌日に涼村さんが出社すると、前日に出勤だったスタッフから申し送りの書置きがあった。

 ―朝、店内が(かび)臭かったので見回ったところ、ソフビが十数体(かび)ていたので廃棄にしました-

 実際にソフビは湿気ていると(かび)ることもあるが…涼村さんはきっとそのソフビも遺品と関連しているだろうと確信を持った。

 事務所から店内に行くとすぐに特撮コーナーに向かった。

 この怪奇現象を止めるすべを自分は知らない。しかし、亡くなった方の収集されたおもちゃへの愛を思うと形だけでも供養(くよう)のようなものをしてあげたいと思った。

 涼村さんは数珠(じゅず)と清めの塩を自宅から持参していた。

 特撮コーナーの通路で一人、黙祷(もくとう)し手を合わせた。

 「あなたの大切にされていたおもちゃは、あなたと同じようにおもちゃを好きな方の手に渡ります。どうか安らかにお休みください」

 心の中でつぶやくと、それに呼応したのかフックに下げられた怪獣のソフビが揺れてカタカタとぶつかる音が聞こえた。

 「返事をしてくださっているのかもしれない。よかった。伝わったんだ」

 そのときボトボトと何か落ちる音がした。

 黙祷の体勢のまま目を開けると、目の前に子供の顔があった。

 涼村さんのすぐ前に小学校低学年くらいの男の子が立っていた。

 「うわっ」

 驚いて尻もちをついた。

  

 …全部ぼくがもらう約束したのに…


 そう言って男の子はいなくなり、床に落ちた怪獣のソフビと湿った空気が残った。

 本部から送られてきたおもちゃは適当な理由をつけてその日のうちに送り返した。しかしその後しばらくはロボットの箱が濡れていたり、ショーケースに水滴が落ちていることが続いたらしい。

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