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高齢単身者 居住支援


3月、今までアパートの住人だった大学生が卒業して引っ越していく


4月、少し前までは大学に近い事もあって、すぐに部屋は埋まっていたのが

少子高齢化なのか、すぐには入居者が決まらなくなった


半年が経過、10月になっても入居者が決まらない部屋を抱えた状態な時


”NPO法人 高齢単身者 居住支援グループ”


とかいう団体の人と一緒に不動産仲介さんが、やってきた



独り暮らしの独身高齢者に部屋を貸す大家さんが減っているので

なんとか貸してくれる大家さんを探しているらしい


 入居している高齢者が孤独死してしまったケース


 亡くなって家財道具を大家が処分しないといけないケース


 アルツハイマーの初期症状で情緒不安定になり

 被害妄想などに囚われ、他の居住者に迷惑をかけたケース


などなど、実際に高齢者へと部屋を貸して発生した問題別に

こういう対処をします。ああいう対処をします

だから、高齢者にも部屋を貸してみませんか?



というような説明をするNPO法人の運営者さん


じゃあ、試しに、1部屋だけ高齢者を受け入れます


と回答すると翌週には入居者が決まった



なんでも


 仕事があれば、仕事が出来るようになれば

 全ては、うまくいく


 何より仕事が大事、職場の人間関係が大事


という生き方をしてきたので



 親戚づきあいを全くしなかったので疎遠になって

 遠くに住んでいる兄弟とも親が亡くなってからは

 全く連絡すらとらなくなり


 元同級生づきあいも顧みなかったので

 そういった知人や友人もおらず


 仕事で関わった同業者団体にも

 利害関係で一緒に仕事をしただけなので

 一切の人間関係などは残ってなく


 定年になって仕事が無くなって

 会社の独身寮を出るのと同時に

 全ての人間関係が消えてしまった



という孤立高齢者になってしまったという事だった。



”NPO法人 高齢単身者 居住支援グループ”


に何故に相談に来られたか聞くと


 不動産屋さんでアパートを借りるのに要求される賃貸保証人

 その人には、賃貸保証人をしてくれる親族や知人がいなかったから


 更に、団体信用保険に加入して賃貸契約をしようにも

 ここらへんの不動産屋で扱っているのでは

 年金額が少なくて信用ランクが低くて加入できないから


という理由でアパートが見つからず

困り果てて、NPOへと相談に来たという事だった



・・・



管理人室にいると、自分と同じように

平日の昼間に暇で部屋にいるのは、その高齢入居者くらい


色んな、はずみで互いの視界に入り挨拶だけはする


でも、何故か世間話をするような感じには、ならない


共通の世間話自体が無いからだ



長年、勤務した会社からは定年になったとはいえ

まだ、同業者団体内で働けるのではないかと

毎日、電話している大きな声が響く


窓を開けて大声で話すので嫌でも聴こえてくる


同業者団体内の専門用語で話しているので

外国語歌詞の洋楽のように聞こえる

何について話しているのか意味は理解できない



たまに怒りの感情や困惑の感情が混ざったような声になる

たぶん無下に断られたりしたのだろう


「まだ仕事が出来るから働かせてくれ」


『いや もう無理だってば やめとけ

 ウチの会社が無能な働き者に

 どれだけ冷ややかで残酷か知っているだろ?』


そんな、やりとりが

電話で繰り返されているようだった


晴れているというのに冬の冷たさが身にしみる

11月の、とある日だった。


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