↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/12

危険球退場、すなわち処刑

ノーコンになってしまったカナリアは、本来の目的も忘れて投球練習に明け暮れていた。


妃教育をサボることはできないので、空き時間に部屋を抜け出しては一人でこそこそとボールを投げる。


道野龍だった時の感覚を思い出し、心を落ち着けて投げても思い通りにいかなかった。


シャーロット姫も呆れながら練習に付き合ってくれた。姫は転生後も幼い頃から練習を重ねていたようで、ボールの扱いには慣れている。


「なんのために投球練習してるのか、もう分かんねーな…」


やれやれとため息をつくシャーロット姫。


「天才としての矜持がありますのっ!」


カナリアの前世である道野龍は、何でも人並み以上にこなすことができた。


幼少期から真剣に取り組んできた野球はもちろん、ほとんど授業を聞いていなかったにも関わらず、勉強だってそれなりにできた。


カナリアとして生まれ変わってからもそれは変わらず、求められることならなんでもできたのだ。


優雅なふるまいも、妃に必要な知識を身に着けることも、美しくあることも…。


カナリアにとってはこれが初めての挫折であった。


それどころか、前世から考えてもまさに生まれて初めての挫折だったのだ。


「絶対に諦められませんわ…」


カナリアがそう言って投げたボールは、またしてもあらぬ方向に飛んでいく。


シャーロット姫はため息をついてボールを探しに行こうとするが、そこで誰かの悲鳴が聞こえた。


「皇子!」


「大変だ!皇子が何者かに襲われた!」


「何かが皇子の頭に…」


「刺客か?!姿を現せ…!」


カナリアとシャーロットは顔を見合わせてごくりと唾をのんだ。


「皇子!目を覚ましてください!」


「早く医者を呼んでくれ!」


皇太子はどうやらカナリアのボールに当たって気を失ったらしい。


「ああ、皇子…」


カナリアは気が遠くなって、そのまま倒れこんでしまった。


その場に残されたのは、シャーロット姫ただ一人。


「あー…なんか、実にやばい状況な気がする」


姫の予想は的中することとなる。


「そこにいるのは誰だ!」


姫は、降参とばかりに首を振り、ミットを外して両手を上げた。



―――――――――――


カナリアが目を覚ましたのは、次の日の夕方だった。


「皇子…!」


がばっと身体を起こしたカナリアは、目覚めと同時に皇子のことを思い浮かべる。


「なんてこと…わたくし、なんてことを…」


「お嬢様!目を覚まされましたか」


侍女が慌てて駆け寄ってきた。そういえば、つい最近にもこんな光景を見た気がする。


ここ最近、気を失いすぎだ。


「アイラッド皇太子は?!ご無事?!」


鬼気迫る様子のカナリアに、侍女は恐怖を浮かべる。


「皇太子殿下は…まだ目を覚まされていません」


「そんな…!」


わたくしが投げたボールが皇太子殿下を死なせてしまうかもしれない。


そう思うと、カナリアの胸は張り裂けそうになる。


「皇太子殿下を襲ったのは、シャーロット姫ではないかと言われています」


「え…?そんな、そんなわけはないわ」


カナリアは状況が分からず、混乱した。


「何者かに襲われた皇太子殿下のそばで、カナリア様は倒れておられました。そしてその近くにいらっしゃったのがシャーロット姫です」


おずおずと侍女は言う。


「違う…違うのよ…皇子にボールを当てたのは…」


「明日の夕方には処刑が行われる予定です」


「えー?!」


カナリアは、この世界に生まれてから初めて大声を出した。


「行かなきゃ!わたくしを姫のところまで案内してちょうだい!」


「お嬢様、その前に身支度を…」


「そんなことどうでもいいわ!何か適当に外に出られる服を出してちょうだい。今すぐ会いに行かなくちゃ…!」


大変なことになってしまった。なぜシャーロット姫が処刑されることになっているのだろう。


処刑の日程もいくらなんでも早すぎる。彼女は何も言っていないの?


とにかく状況を確認しなくては。


カナリアは着替えを済ませ、顔も洗わずに慌てて部屋を飛び出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。