14.朝とブレナン
私は家に帰るなり、使用人にウマを渡して、部屋へと直行する。
ブレナンが「おい!」と私に声を掛けたが、無視する。私は駆け足で部屋に飛び込んだ。
勢いよく扉を閉めて、その場に崩れる。
「やっっば!! 何あのイケメン! この家族以外の美形に慣れてなさすぎる!」
私は今日見たセオドアとレイのことを思い出していた。
セオドアは正直エミリーと幸せになって下さいって思っているけど、レイが私の心臓に悪い。
私もオッドアイが良かったな。……まぁ、放火されたって共通点があるからいっか!
レイはどれだけの名声や地位、栄光を手にしても決して喜ぶ姿を見せなかった。一度も彼の笑った姿を見たことがない。沢山の者たちが彼の笑顔を見ようと試みたが、セオドアの前ですら一度も笑顔を見せなった。
小説内ではあまり彼の話は描かれていなかったが、レイは私が想像できないくらい壮絶な人生を歩んでいる。
……せめて死ぬ前に彼の笑顔だけでも見たいなぁ。きっと笑った顔は直視できないくらいに眩しいんだろうな。
サングラスが必要だね。
「笑わせてみるか」
私はその場で勢いよく立ち上がる。
笑わぬなら、笑わせてみよう、レイ・アシュビー!!
そうと決まれば、作戦を練らないとね。とりあえず、彼に会うところから始めないと……。
私は机に向かって、紙にレイ・アシュビーを笑顔にする計画を書き始めた。
コンコンッと扉を叩く音が聞こえる。その音で目が覚める。
「お嬢様、ナタリーです」
「なぁあに~?」
まだ寝起きで頭が回転しておらずあくびをしながら答える。両手を上に挙げて、グッと背筋を伸ばす。
「それが、ブレナンお坊ちゃまがお話があると」
少し言い辛そうなナタリーの声。
……ブレナン? 彼が一体私に何の用があるのよ。今まで彼が私と話そうとすることなんて一度もなかった。
どういう風の吹き回し?
「分かったぁ~。すぐ行くって言っておいて~」
私はそのままベッドにもう一度寝ころぶ。朝はゆっくりしたい。ふかふかの枕は最高だ。
「あの、それが、今ここにいらしゃっられて」
……は? この扉の向こうにブレナンがいるの!?
一気に眠気が吹き飛ぶ。私は凄まじいスピードでベッドから飛び出し、扉を開ける。
あ、パジャマのままなの忘れていた。……まぁ、いいよね、兄弟なんだし。
「お前、そのまま出てくるなよ」
ブレナンは眉間に皺を寄せて、呆れた表情で私を見る。ナタリーも「お嬢様、その格好のままは」と声を発する。
しょうがないじゃない。ブレナンが部屋の前にいるなんて、落ち着かなくて着替えている暇もない。
「なんの用?」
「昨日、父や姉と会っただろ?」
「ええ。……それがどうしたの?」
ブレナンの表情が急に険しくなる。……私に怒っているのかしら?
「一体何があった? 帰宅した時のあの二人の顔が暗かった。……原因はお前しか考えられないだろ。一体何を言ったんだ?」
「特に話すようなことではないわよ」
私は笑顔で応える。朝から重い空気で過ごしたくない。
まぁ、もうすでに折角の朝が台無しだけど。




