12.
「エミリー・ホワイト、今日ここに呼んだのは我が息子との婚約を君に伝えたくてね」
おお~!! きたっ!! ずっとこの瞬間を待ってたのよ! ぎりぎりに着いちゃったけど。
国王様の言葉にエミリーは目を大きく見開いて固まる。セオドアは優しく彼女に微笑んでいる。
まさに物語の王子様とお姫様だ。
彼らを観察していると、セオドアの後ろに立っている従者が視界に入ってくる。
「彼は確か……」
顔を白い布のようなもので覆われていて、目だけしか分からない。ただ、その目に私はかつてないほど惹かれた。
レイ・アシュビー。この小説の中ではあまり出てこなかったが、彼のことを知っている。
右目が薄いグレーの瞳、左目が澄んだ黄緑色の瞳。そのオッドアイに皆が惹かれた。そして、ルイス家が高額で買い取った奴隷だ。
奴隷とは思えないぐらい高貴な見た目だけど。
私はそんなことを思いながら彼をじっくりと観察する。婚約の話どころじゃなくなっちゃった。
全体を布で隠しているのは、火傷の痕があるからだったはず……。
セオドアの元に来る前は酷い虐待を受けていた。一生消えない焼き印を押され、最終的に彼の住んでいる場所は放火されて、彼はその被害を受けた。私も放火で死んじゃったから、似た者同士っ!
あんなにも美しい顔に傷をつけるなんて、私が犯人を見つけて丸焼きにしてやるわ!
火傷さえなければ、世界中の女性が彼を手に入れようと血眼になっただろう。
まぁ、レイ・アシュビーはセオドア・ルイスに忠誠を誓っているから、誰のところへも行かないだろうけど。
ルイス家はレイの潜在能力に最初から気付いていたのか、真っ先に奴隷市場で彼を買ったはずだ。彼らの読み通り、レイは本当に最高の人材だった。全ての能力に置いて、卓越しており、誰もが一目を置いた。
奴隷だと言って蔑む人間を能力で黙らせたのだ。
格好良すぎない!?
私がチミチミと家族に嫌がらせをしている時に、彼は歴史に残るようなことをどんどん成し遂げているのよ。
なんだか自分がどんどん惨めになっていく。自分がしてきたことを考えるのは一旦やめよう。
奴隷市場はこの世界では結構普及していて、別に闇市なんかじゃなくて普通に存在している。
私の感覚だったら奴隷市場なんて断固反対だけど、この国じゃ当たり前だ。コソコソやるなら堂々とする方が潔いけど……、いや、なんか違うか。
「おい、何してんだ?」
私がぼんやりとしているうちに目の前に絶世の美男子が目の前に現れていた。
突然のイケメンに私は思わず間抜けな声を出してしまう。
「え?」
部屋の窓際にレイが立っている。
そりゃ、セオドアの従者だから、危険を察知するか……。いや、でも私は決して危険人物じゃない!
「えっと、鑑賞? ん? なんか違うな。のぞき見? いや、もっと良い言い方ないかな」
「シアラ?」とエミリーの声が聞こえる。それと同時に「お前」と憤った父の声も聞こえた。
「あ、お父様、お姉様! 奇遇ですね! こんなところで一体何をしていたのですか?」
「こっちの台詞だ! お前は一体何をしているのだ!」
私の存在は父親達にとって無いに等しかったから、社交界には出させてもらえなかった。だから、外で彼らに会うのって新鮮だわ。
「大公様の知り合いですか?」
レイが父に尋ねる。彼は少し困った表情で言葉を詰まらせた。




