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第七十話

第七十話

 やるからには本気で。

 この王国での僕達の評価が関わってくるとなれば、僕も本気で行くしかない。

 そう今一度決心し、深呼吸をした僕は足元にいるシフに声をかける。


「行けるか?」

「勿論だ。私達の力を見せつけてやろう!」


 飛び上がったシフが肩を踏み台にして、跳躍。

 そのまま帽子に変身し、頭へと被さる。

 次に水筒にいるライムへと手を伸ばし、弓の形へと変形してもらう。


「ライム」

「キュ!」


 腰の矢筒から矢を取り出し、構える。

 硬質な音を立てる弓矢でしっかりと狙いを定める。


『使い魔を、纏っている?』

『テイマー、なのか?』


 肉体強化で鋭敏化された感覚が観客の声を捉えるが、目標に集中するように努める。


「ハクロ、シフ」

「電撃付与だな!」

「ウォン!」


 ハクロが風となって矢に纏い、シフが雷撃付与が施すと同時に指を離し矢を放つ。

 電撃を纏いながら突き進んだ矢は、白い的に突き刺さり、強烈な電撃をまき散らす。その威力に周囲の人々は驚きの表情を浮かべているが、まだそれでは終わらない。

 僕は白い的に掌を向けて、叫ぶ。


「爆ぜろ!」

「ワォォン!」


 僕の声に応えて、矢に纏われていたハクロが内側から解放され、的を内側から真っ二つにした。

 そのまま空高く空中へと打ち上げられた的へ攻撃するように指示を出しながら、僕自身も弓のままのライムをさらに変形させる。


「大鎌形態……!」


 先端の刃に比重を置いた武器形態。

 本来は草刈り用のものだが、こういう時にこそ力でものを言わせる武器が相応しい……!

 ブゥン、とそれを大きく振るい風を切った僕は腕に力を籠める。


「キュー!」

「シフ、全身に肉体強化!」


 くるりと回した大鎌を後ろへ流すように構え、空中でハクロの超高速の追撃を受け続けている白い的を見上げる。

 僕の動きに気付いたハクロが、もう一度白い的を空高く打ち上げると同時に、こちらへ戻り大鎌の刃へと吸い込まれるように纏い、大鎌の刃を強化してくれる。

 これで地上にいる人たち攻撃が及ぶ心配はない!

 それに加えて―――、


「火炎付与……!」


 シフの支援魔術により炎に包まれた刃が、ハクロの風の力によりさらに燃え上がる。

 煌々とした輝きを放つ大鎌を力強く握りしめたまま、空高く打ち上げられた的を睨みつける。


「オラァッ!」


 雄叫びと共に、全力の肉体強化による人間の限界すらも超えた刃を振るう。

 それにより、赤く燃える三日月状の風の刃が空高く放たれる。

 地上から放たれたそれは、空の白い的に引き寄せられるかのように突き進み―――大きな爆発を引き起こした。


「スライム闘法、炎刃ハクロ斬……!」


 大鎌という大きな武器を用いての一撃。

 僕の持つ技の中で威力の高く、殺傷能力が高いその技は、見事、空高く打ち上げられた白い的を粉々に破壊することに成功した。


『『……』』


 リーファの時と同じく、周囲で僕達を見ていた人たちは、驚きの表情を浮かべている。

 フッ、これぞリックさん達にボコボコにされ続けた成果よ。

 ギルドの訓練場では、同情と憐憫の眼差しを向けられてきたが、今は違うぞ……!


「決まった……!」


 ちょっとだけドヤっとしながら振り切った腕を戻し、ライムを水筒へと戻す。

 すると、帽子から黒猫の姿に戻ったシフが僕の肩へと降り立つ。


「カイトよ。大鎌でやる必要はなかったのでは?」

「……」


 け、けけけ、決して普通の剣よりも大鎌の方が目立つという理由では断じてない。

 より威力が乗り、強いと思ったから選んだのだ。

 そこのところを間違っちゃあいけない。

 あと、これでも少しは自重した方なのだ。


「シフよ。実はもう一つ技の案があったんだ」

「そうなのか? なぜそちらを試さなかったのだ?」


 小さな頭を傾げたシフに、笑みを浮かべる。

 聞くのかい? 聞いちゃうのかい?


「案では、あのまま空中に浮かんだ的に掴みかかり、ハクロの風とシフの電撃を合わせたパイルドライバー……名付けて電撃螺旋式ツームストンパイルドライバーを繰り出していたところだ」

「カイト、今のは良い技だった! 頼むからその技は封印してくれ!」

「ああッ、これは極めて危険な技だからな……!」

「私とおぬしでは危惧している事態が違いすぎると思うのだが!? 本当になにをするつもりだったのだ!?」


 これはとてつもなく危険な技だからな。

 自爆の危険性も少なからずあるし、何より的が相手だからといってやっていい技じゃない。


「カイト」


 慌てるシフに苦笑していると、近くで見ていたリーファがこちらへ駆け寄ってくる。


「リーファ、どうだった?」

「派手すぎ。私の印象が薄れる」

「まさか責められるとは思わなかったぜ」


 やや不満そうに口にするリーファだが、本心から言っているわけじゃないのは分かっている。

 とにかく、僕達の全力は見せた。

 あとはそれを見て、セルジ様と周りの人々がそう思うかが気になるな。

 そう考えていると、観客席のある方向から拍手のような音が聞こえてくる。そちらを見ると、立ち上がったセルジ様が、笑みを浮かべて僕達へと拍手を送っていた。


「素晴らしい。素晴らしいな、良いものをみせてもらった」


 すぐさまセルジ様へと膝をついた僕とリーファ。

 セルジ様に合わせて、周囲にいる人々も拍手を送ってくれた。


「ヘンディル王国の勇者リーファ、そして従者カイト。おぬし達二人は、疑いようもない確かな力を実力を備えている。試すような真似をしてしまった己の浅慮さを恥じるばかりだ。ハッハッハ」


 セルジ様は、ものすごくご満悦そうな顔をしている。

 騎士達も、最初の時のような疑惑の視線はなくなり、僕達の力を認めてくれたようだ。

 気になるとすれば―――、


『みんな、解散次第すぐに話を聞きに行くわよ』

『銀色のスライム……』

『半透明のオオカミ……』

『先輩! 知識欲が分散して統率がとれませぇん! あ、私は喋るシェイプシフターが気になります!』

『調べるのは純魔の魔力に決まってんでしょ! バカなのぉ!?』


 遠くからギラギラとした目で僕を見ているローブを着ている集団だ。

 え、なにか言い争いを始めたぞ。

 しかも、こちらを指さしながら何かを言っている。

 なぜか身の危険を感じるので、近づかないようにしよう。



 僕がローブの集団に危機感のようなものを抱いている間に、セルジ様は話を終えてしまったようだ。

 この後、リーファは本来の役目であるチサトとの交流ということになるのだが……まあ、それには当然、従者である僕もついていくことになる。


「おつかれ、リーファ、カイト君」


 国王として多忙なセルジ様が城に戻っていったところで、チサトが僕達の元へと歩み寄ってきた。

 勇者であるチサトが来たことで、僕に突撃してきそうなローブの人達は苦渋の表情で足を止めてくれる。

 その様子にホッと安堵していると、チサトが話しかけてくる。


「二人とも、凄かった」

「えっへん」


 誇らしげな顔のリーファにチサトは苦笑する。

 僕としては、自分だけの力ではないので、曖昧な笑みを返す。


「僕はシフ達の力があってこそだからね」

「何を言う。私達使い魔をうまく使っているからこそ、先ほどのような技を繰り出せるのだ。おぬしはもっと誇るべきだ」

「キュー」

「ウォン!」


 シフ、ライム、ハクロの三体の使い魔の声に頷く。

 改めて使い魔たちの存在の大きさを再認識していると、チサトの視線がハクロへと向けられていることに気付く。


「カイト君」

「ん?」

「この子、撫でさせてもらっても、いいかな?」

「え? 構わないけど……」


 とりあえずハクロにおすわりをお願いすると、しゃがみこんだチサトはハクロをわしゃわしゃと撫で始める。

 ハクロは半透明のオオカミではあるが、その毛並みはまごうことなきひんやりわさわさの本物だ。

 しかし……なんというか、色々と追い詰められたのだろうか?

 目が色々とマジだ。


「前に、カイト君の偽物を装った犬が来ててね。……強敵だった」

「ちょっと待って意味が分からない」

「カイトを装った犬? どういうことだ?」

「カイトは、犬なの?」


 僕だけではなく、シフとリーファまでもが混乱している。

 その後、チサトから僕の偽物が大量に出た話と、その偽物達から本物を見つける面接のようなものを数えきれないくらい行ったことを聞いた。

 その中には僕の名を騙る褐色肌の女の子から、僕の名を騙るサーカスの集団などが現れたらしい。

 ……いや、テルアさんから聞いていたけども、実際に本人から聞かされると想像以上だ。

 もうこの国で名前が広がっているどころの話じゃなかった……!


「こ、こうなったら、ジェイコブ・ライジングと名乗って……」

「名乗らなくていいから」

「じぇ、ジェイコブ?」


 ぴしゃりと僕の偽名を否定するリーファと、困惑するチサト。

 なぜか、勇者二人よりも色々な意味で追い込まれている僕であった。


電撃螺旋式。

電撃で痺れさせ、空中できりもみ大回転しながらパイルドライバーします。

多分、仕掛けた本人もダメージ受けます。

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― 新着の感想 ―
いやいやいや。新技人間の域超えてるて。空中で連撃してる攻撃シーン。俺は呪◯廻戦と◯ラゴン◯ールと◯ンパンマンと転◯ラとウサトくらいでしか見たことないんだが?ちなみに俺はゲームでできたが?できたが?技名…
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