第五十話
もう第五十話ですね。
毎日更新だと話数が増えるのがはやいです。
ちょっとした騒ぎもあったけど、なんとか依頼人のいる果物農園へと到着した僕達。
依頼人の女性は既に農園の前におり、僕達の姿を見つけると表情を明るくさせながら、こちらへと近づいてきた。
よく見ると怪我もしているようで、腕と足には包帯が巻かれていた。
「ああ、助かりました! 来てくださったんですね」
「ええ、早速依頼に取り掛かろうと思うのだが、構わないかな?」
「もちろんです! もうこの時期になると出てきて大変で……今朝も、少し引っ掻かれてしまって……」
「その部分も含めて、説明を」
依頼を最初に受けたセラさんが依頼人から詳しい内容を聞き出す。
軽くまとめると、この農園に実っている果物を食べて地面に蹴落としている傍迷惑な鳥型モンスターがいるとのこと。
収穫する果物を食べられていることもそうだが、食べかけの果物は地面で腐り、そこから植物の病気や虫などを引き起こしてしまうので大変な迷惑を被っているらしい。
依頼人としてはそのモンスターをなんとかしてほしいが、木に実っている果物に被害が及ばないように配慮してほしいとのこと。
モンスターの名は“レイニークロウ”。
群れと共に襲い掛かるカラスの魔物で、集団で行動していることから、中々に厄介なモンスターらしい。
「では、レイニークロウの排除、または追い払うということでいいんだね?」
「お願いします。このままじゃ収穫もままならないの」
「了解。これから私達で依頼に取り組むので、貴女はこの場を離れていてくれ」
依頼人に危険が及ばないように別の場所へ避難させた後、僕達はレイニークロウを相手どるべく武器と荷物の点検を行う。
「まずは君達のお手並みを拝見したいのだけど、構わないかな?」
その腕に鳥の使い魔―――フレイムバードのフィードを乗せたセラさんに頷く。
依頼の遂行が最優先ではあるけど、この人におんぶに抱っこという訳にもいかない。
「はい」
「うん、分かった」
矢筒にいれられた矢を一本ずつ確認しながら、セラさんの言葉に頷く。
「カイト、弓を使っても大丈夫なの?」
「練習はしてるけど、やっぱり実戦で使っていかないと上手くならないと思ってね。ライム、お願い」
「キュッ!」
左手をライムのいる水筒に手を添えると、銀色の身体を変形させ弓の形状へと変化する。
それを握りしめ右手で弦を軽く弾くと、ビィィンッ! という音が響く。
「不思議なスライムだね。色々な個体を見たことがあるけど、ミスリルの特性を持つ子なんて初めて見た」
「頼もしい相棒です」
「私もいるぞ」
「もちろん、シフのことも忘れてないよ」
飛び上がりながら帽子へと変身したシフを被る。
ライムの弓を引くにも肉体強化が必要だ。
狙いを定めるにも集中しなくてはならないが、幸い僕には仲間がいる。
「相手は空を飛ぶ。僕が空を狙うから、リーファは襲い掛かってくる個体を頼む」
「任せて、全部叩き落とすから……あと……」
「あと?」
「レイニークロウって食べられる?」
「お腹壊すからやめなさい」
何言っているのかしらこの子。
思わず口調が崩れてしまうくらいには呆れてしまうが、良い感じに緊張が解れはした。
まだレイニークロウが来る気配はないので、依頼人の女性が育てている農園に入り、襲撃を待つことにしたのだが———、
「羽根がすごいですね……」
「泥かと思ったけど、これ全部羽根なんだ……」
地面のいたるところに黒い羽根が落ちている。
それを一本拾ったセラさんは、それを僕達へ見せてくる。
「レイニークロウは群れで行動する魔物。狩りの時、彼らの翼から舞い落ちる黒色の羽根は獲物の視界を遮り、気づけば全身を啄まれてしまう」
「……恐ろしい魔物なんですね」
「裏の人間は、このモンスターを使い魔にすることが多くてね。暗殺や盗み、その他諸々の犯罪にレイニークロウの習性を利用するんだ」
確かに羽根で視界を遮られるのは厄介だな。
なら、僕も悠長に狙いを定められない。
それならやり方を変えればいいだけだけど。
「この農園は完全に彼らの狩場にされているようだね。しかし、レイニークロウは比較的賢い魔物だ。一度、痛い目に遭わせれば懲りて近づくことはなくなるだろう。なにせ、次は確実に駆除されることが分かってしまうからね」
以前のコボルドもそうだけど、普通の獣より賢い魔物は引き際を心得ている節がある。
一度撃退されると、次は本気で殺されると理解しているからこそ、当分はその狩場に現れることはない。
「さて、カイト君。レイニークロウが来るまで少しだけテイマーの先輩としてアドバイスをしようか」
「お願いします」
ふと、こちらを振り向いてそう口にしたセラさんに、頷く。
凄腕のテイマーさんからのアドバイスだ。
一言一句聞き逃さないようにしなくちゃな。
「まずは君は契約している魔物の力量をしっかりと把握すること」
「力量を把握……」
「何ができて、何ができないかをしっかりと把握してなくちゃ、後々無理をさせちゃうこともある。テイマーってのは、いわば司令塔だ。的確な判断をこなせなければ、使い魔の力を発揮させることもできないし、大切な相棒を死なせてしまう危険もある」
半ば実感の籠ったセラさんの口ぶりに、神妙に頷く。
「君は一般的なテイマーとは違う、前に出て戦うテイマーだ。使い魔に指示を出す以外にも、君自身が戦いを行わなければいけない」
「はい」
「正直に言わせてもらうと、厳しい道のりだ。テイマーにはやるべきことが多い、それに加えて気の抜けない戦闘を行わなくてはいけないからね」
戦いのことに集中しながら、シフ達に指示を送る。
よく考えれば、僕はしっかりとシフ達に指示を出せていただろうか。
まだまだシフ達の力を扱いきれていないのではないか?
そう考えれば考えるほど、自分の至らなさと足りないものが見えてくる。
「視界を広く持て。君の使い魔の力を引き出せるのは、他ならない君だけだからな」
「……はい!」
シフ達の力を引き出せるのは僕だけ、か。
ちょっと分かるような気がする。
「あとはそうだね。君の場合、単純に体力とかを増やすべきだろうね」
「それは、まあ……はい」
「ま、その点なら安心してくれ。近いうちにリックが君とリーファに訓練を施してくれるそうだからな」
「え、そうなんですか!?」
やってくれるとは聞いてたけど、もっと先のことかと思った。
驚きに目を丸くする僕に、セラさんはにっこりとした笑顔を浮かべる。
「ああ、君のことをえらく気に入っていたからね。私を加えたもう一人と一緒に見てくれるそうだよ」
「おおお、やったな。カイト、リーファ」
「大変そうだけどね……」
「楽しみ」
苦笑いする僕だが、リーファはワクワクしている。
ランク・ゴールドの人からの直々の訓練かぁ。
リックさんの凄まじい実力を見る限り、生半可なものではないんだろうな。
「でも、セラさんはいいんですか?」
「私? 全然構わないよ。特定の依頼が来ない限り基本暇だからね。今回も依頼人が切羽詰まっていたようだから受けたようなものだし」
確か、ランク・ゴールドの方たちは依頼の難度も重要度も上がるって聞いたからな。
暇ではなく、多忙にさせないようにしている感じなのかな。
「———カイト」
「ん?」
「気配が近づいてくる」
帽子のシフが僕にそう話しかけると、セラさんの腕にもフィードが降り立ち、翼で空を指示した。
そちらを見ると、遠方から黒い影のようなものがこちらへ近づいてくるのが見える。
「クァー」
「フィードも確認したようだ。二人とも、準備はできてるかな?」
「「はい!」」
空を見上げられる位置に立ちながら、矢を一本取り出しながら遠方を睨みつける。
黒い一塊になって青色の空を進む鳥―――レイニークロウ。
それらは、漆黒の羽根を雨のように降らしながら、僕達のいる農園へと襲って来るのだった。
地味にモンスターの設定とかを考えたりするのが楽しい……。




