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第四十一話 

第四十一話です。

 リックさんに誘われたグリフォン退治の依頼。

 依頼の目標であったグリフォンの討伐には成功こそしたが、その後にニーアの率いる魔王軍の襲撃にあったりして、色々と大変な目にあった。

 リーファのお姉さんは、少し……いや、かなり危ない人だった。

 自分の目的のためには手段を選ぼうとしないし、何より僕をどこかに連れて行こうとしていた。

 ……なんで僕が、ファンタジーで攫われる系のヒロインみたいなことになっているのかは微塵も理解できないけれど、彼女との戦いを経て、僕達も成長できたと思う。


「ヒューズさん。今日まで、お世話になりました」

「おう、色々と災難だったが、無事に帰れてなによりだな」

「ブルル」


 最初に馬車に乗った場所で、この数日間お世話になったヒューズさんと魔馬にお礼を言う。


「ま、この先もお前達とも仕事で関わりそうだしな。その時は、またよろしくな」

「はい」

「またね」

「おーい、ギルドへ行くぞー」


 袋にまとめられたグリフォンとレイジウルフの討伐した証がのせられた荷車を引いたリックさんが、僕達へと声を投げかける。

 その様子を見て苦笑したヒューズさんは、呆れながらも僕達へ先に行くように促してくれる。


「じゃ、行こうか。リーファ」

「うん」


 彼女に頷いた僕は、そのままリックさんと共にギルドへと向かう。

 マイさんとか、きっと驚くだろうなぁ。

 なにせ、リックさんの引いている荷車の中には、何十頭分のグリフォンの爪とか入っているんだから。


「しかし、まさかギルドに話題の勇者がいるなんて思いもしなかったな」


 荷車を引いたリックさんが不意にそんなことを呟いた。


「ごめんなさい。隠してて」

「いや、謝る必要はねぇよ。隠す理由も理解できるからな。……あの姉を止めるために強くなりたいんだって?」

「……うん」

「ありゃ、相当な曲者だぞ?」

「それは、分かってる。でも、それでも私は姉さんを止めたい」


 意志の固いリーファに、リックさんが思案するように顎に手を当てる。

 数秒ほど考え込んだ彼は、僕達へと視線を向ける。


「なら、俺達がお前達を鍛えてやるよ」

「……えっ、いいんですか!?」

「今回の件での罪滅ぼしと、この国の勇者を強くすることは悪いことじゃないからな」

「おおっ、リック殿ほどの実力を持つ者の指南を受けられるとは、やったな! カイト!!」


 リックさんの言葉に、足元を歩いていたシフが喜びの声を上げる。

 僕としても願ってもない話だけど、少し気になる部分があった。


「……あの、俺達ってことはリックさん以外にも鍛えてくれる方がいるってことですか?」

「ああ。俺と同じランクの奴に何人か暇そうな奴がいるからな。カイトに関しては、あっちから会いてぇって言ってたようなもんだが……まあ、あいつなら喜んで受けるだろ。多分」

「その方は……」

「テイマーだよ。お前と同じな」


 僕と同じテイマーかぁ。

 それもリックさんと同じランク・ゴールドの人だろうし、とてつもなく強いんだろうな。


「どんな人なんだろう……」

「変態ではあるが真っ当なテイマーだぞ? つーか、お前みてぇに進んで殴りかかる奴の方が珍しいな」

「うむ、そうだな」

「うん、たしかに」


 シフ、リーファ、二人して同意しなくてもよくない?

 自分が真っ当なテイマーじゃないのは、分かっているけども。むしろ開き直って、自分にできることを色々と試していると言ってもいい。


「リックさんのアドバイス通りに、瞬時にライムを変形させるようになってから、僕の戦いの幅が広まりましたけど…」

「なにか問題でもあるのか?」

「はい。やっぱり、リーファと連携する上で、どっちも近距離での戦いになってしまうのが……」

「あー、なるほど。俺も基本一人でしか戦わねぇから、失念してたな」


 ニーアとの戦いではうまく立ち回ったつもりだけど、途中はどっちかが至近距離で戦っている間は、手が出せない―――そんな状態が何度かあった。


「なら弓はどうだ?」

「弓、ですか?」


 リックさんの言葉に弓を思い浮かべる。

 弓とか扱ったことないから、大丈夫だろうか?

 確か、武器とか売っている店に弓と矢が置いてあったような気がしたけど。


「誰も最初から上手いわけじゃないからな。とりあえずやってみたらいいぞ」

「そう、ですね」


 なんだかやる気が出てきた。

 シフの属性付与と、ハクロを纏わせたりすることができるかもしれないので、試してみる価値はある。


「リーファは弓とか使ったことある?」

「あるけど……普通に下手くそだよ?」

「え、どれくらい?」

「矢が斜め後ろに飛んでいくくらい」


 どういうやり方をしたらそうなるの?

 むしろ、斜め後ろに飛ばす方が難しいまであるぞ。

 しかし、リックさんのおかげで今後の方針が決まってきたな。

 次の目標としては、遠距離攻撃である弓矢の扱いを覚えることと、基礎能力の向上だな。


「リックさん。助言、ありがとうございます」

「何も大したことは言ってねぇよ。さーて、そろそろギルドに着くぞ」


 照れくさそうな反応を返したリックさんが前へと向く。

 すると、見慣れたギルドの建物が見えてくる。

 ようやく帰ってこれた―――そう思いながら、僕達はギルドへと足を踏み入れるのであった。



 結果だけ言うなら、討伐の証の数を見たマイさんはその場で声を上げるほどに驚いていた。

 グリフォンを大量に狩ってしまったこともそうだが、なにより魔王軍の襲撃にあったことにかなり心配をされてしまった。

 その後、色々と説明したりして大変だったけれど、依頼を完了させたリックさんは、僕とリーファに依頼の分け前をくれた。

 ほとんど何もしていないので勿論断ったが、リックさんは「いいよ、受け取っとけ。……いや、ぶっちゃけとんでもない報酬額だから、もらってくれ、頼む」と割と鬼気迫った風に渡され、渋々受け取ることになった。

 そういう訳もあって、なし崩し的に金銭に余裕ができてしまった僕とリーファは、ギルドから帰る途中にいつも装備を購入している武器屋へと立ち寄っていた。


「じゃ、私はいつものところ見てるから」

「おーう」


 ナイフを新調するのか、それらが置いてある場所へと向かっていくリーファを見送った後に、僕も目的のものがある場所へと向かう。

 旅の疲れもあるから、手早く用を済ませよう。


「キュっ、キュー!」

「君はここに来ると、いつも楽しそうだね。ライム」


 腰の水筒の中で喜びを露わにするライム。

 ぐるぐるとあたりを見回しながら、武器を物色しているライムを微笑ましく思いながら、僕も目的のものを探す。


「お、あったあった。……って、色々と種類があるな」


 見つけたのは弓が置かれている棚だ。

 安いのから高いのまで置いてあり、中には桶のようなものに雑にいれられている格安なものまである。


「ふーむ、大きいのから、なにやらぐねぐねとしている弓もあるな。えーと、ろんぐぼう、しょぉとぼう? ……うーむ、分からん」


 ニュアンス的に長い弓と短い弓、的な?

 違いが分からないから、取り回しの利きそうな小さい方でいいかもしれないな。


「とりあえず、練習用にそこそこ安いのを買えばいいのではないか?」

「それもそうだね。さーて、どれにしようか……」

「キュー」


 弓を眺めながら選んでいると、水筒から出てきたライムが僕の肩まで上ってくる。

 何かを伝えようとしているな、まさか―――、


「ん? 弓に変形したいのか? 別に構わないけど、弦とか再現できるのか?」

「キュ!」

「やってみなければ分からない!! ……だそうだ」


 い、意外と熱血。

 まあ、ライムがそういうなら試してみるか。

 購入しようと考えていた弓を左手に取り、右手にライムを乗せる。


「よし、いいぞ」

「キュゥ!!」


 魔力が吸われると同時に、ライムの身体が細長く変形し、一瞬で弓の姿へと変わった。

 銀色の光沢を放つ弓―――曲線と、ピンと張った弦は左手にある本物の弓とほとんど変わりはないように思えた。


「す、すごいな、お前……」

「私が言うのもなんだが、ライムはライムで特異な個体だな」

「キュー」


 弓の状態のまま得意げな声で鳴くライムに半笑いになってしまう。

 本当に僕の使い魔たちは凄い。

 それを改めて思い知らされながら、ライムを水筒に戻して、弓と矢を抱えてカウンターへと持っていく。


「む、購入するのか?」

「ライムに変形だけさせて、何も買わずに帰るわけにはいかないからね。それに、僕としても練習用の弓は欲しいし」

「律儀だな」


 練習するたびにいちいちライムに変形してもらうのも面倒という理由もある。

 手早く、弓と20本ほどの矢を購入した僕は、布でくるんでもらったそれらを抱えながら、リーファを探しに行く。


「あ、カイト」

「ん? どうしたの、シフ」

「近いうちに、女王のいる城へ呼ばれるのだろう? その際に着ていく服などを用意しておいた方がいいのではないか? さすがに今の服装で行くのは不敬に値するだろうかな」

「あー、完全に忘れてたよ。ありがとう、シフ」


 明日か明後日あたりにちゃんとした服を買いに行くか。

 元より、服に執着するような性分じゃないけど、さすがにこの王国の偉い人に冒険者の服装で会いに行くほど、図太い精神していないからな。

 しかし、女王ってどんな人なんだろうな。


ここでようやく弓矢の登場です。


そして、第一章の終わりとなります。

次回は、別視点の閑話を予定しております。

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[一言] 弓矢で殴るんですね
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