第二百九十八話
本当にお待たせしてしまい申し訳ありません。
殴りテイマー、今年初めての更新となります。
第二百九十八話です。
イルセイル島はここから遠く離れた場所に存在する島だ。
船を用いての大陸との交流を行っているらしいが、それはほぼ月に何回あるかないかの頻度で行う程度でしかなく、謎に包まれた場所らしい。
そんな場所に向かうらしいのだが、まさかシフたちをそこに連れていけないとは……。
「リーファ、そんな不貞腐れた顔しない」
「むん」
そして僕の主であり、相棒のリーファも神獣の力を持っているため島に連れていくことができないので、今は船のラウンジのソファーで不貞腐れてしまっていた。
その隣では姉のニーアが苦笑いを浮かべている。
「しょうがないじゃん。神獣の力を持つ私達じゃ無理なんだから」
「私たちも納得できないが、件の神獣が不安定な状態にあるのならば、他の神獣の影響を受けさせたくないというリオン殿の懸念も理解できる。リーファ、ここは我慢だ」
シフも納得してくれているようだけど、僕としても不安だ。
「君たち、安心するといい」
すると、つい先ほどフィルゲン王国からこの船にやってきたチサトが僕のすぐ隣のソファーに腰を下ろす。
そのまま足を組み、立てた親指を自身に指さした。
「この私がカイト君と一緒にいるからね」
「……まだ誰を連れていくかは決まってないじゃん」
「ふふん、甘いね。アル」
マフラーから黒猫の姿になったアルの言葉に
どこかドヤ顔のチサトはなぜか変装時にかけていた伊達メガネをチャキッとかけると、僕の肩に手を置く。
「私は神獣の力を持たないパンピー。ただ魔力が多くて才能に溢れただけの一般人なのです。そしてなによりカイト君と同じ世界の住人。これで選ばれないはずがない……!!」
「人選は僕に任されてるけれども……」
「ねっ、カイト君っ!!」
まあ、チサトは来てくれたら心強い。
彼女は神獣の力とは関係がないけれど強い。
その強さの根本の部分は、黒の冒険者とほとんど同じものだ。
でもちょっとからかおう。
「イリスさんか、セーラさん。どちらにしようか悩むな……」
「あっ、ごめんなさい! 調子に乗りました! 私を捨てないで……捨てないでぇ……」
「弱すぎだろ……」
「カイト君に見限られると、私なにをするか分からないよ……? 具体的には病む」
なんかすっげぇ人聞きが悪い状況を作り出してしまった。
いや、怖いよ。冗談かどうかすら判別できないのはやばいって。
涙目で僕の肩を揺らすチサトに誤解を解いていると、リーファが無言で僕の座っているソファーに移動していることに気づく。
「ん? どうしたの?」
「ちょっと手を挙げて」
「……?」
言われたとおりに膝に置いていた手を上げると、何を思ったのか彼女は僕の膝に頭を乗せてきた。
……??? 膝枕?
とりあえず、リーファの頭に手を置き撫でながら、チサトの方を向く。
「で、人選だけどやっぱりイリスさんはこの船に必要かなって——」
「ちょっと待っておかしい! おかしいことが起こってる!!」
「おい、駄妹!! なにしても怒られないからってやりすぎだよ!!」
チサトとニーアがリーファを指さす。
当の本人は……。
「スゥ……スゥ……えへへ」
「眠ってるじゃん!?」
「カイトの純魔の魔力で一瞬で睡魔に誘われたのだな……」
ああ、なるほど。
この世界に色々とあったから膝枕に対する認識がおかしくなっていたかもしれない。
「そうか、フツウ、久しく忘れていた言葉だ……」
「カイト君、とりあえずリーファの頭を撫でる手を止めようか」
「……この子もシーナさんが恋しいんだろう。これぐらいは許すよ」
「解釈違いがすごい……」
そうだ、この際シーナさんをこの船に呼ぶのはどうだろうか。
あの人は僕達の事情もよく知っているし、なにより危険な遺跡調査を行っていた実績がある。
なにより、リーファもニーアも安心するはずだ。
「ニーア、今度この船にシーナさんを呼ぼうと思う」
「え、わ、私、なにか悪いことした……? あ、謝るからやめて……?」
謝られてしまった。
それからラウンジで過ごしていると、また新たな人物がこの場にやってくる。
「やっほー、久しぶり……って感じはしないわね!」
「……なにを、しているのですか? リーファ様」
セーラさんにイオさんだ。
この船とヴィンガル王国の影のゲートが繋がったということなので、ようやく次の目的へ移れるということになるな。
●
「さて、この船にいる面々に集まってもらったわけだけど……」
リーファを起こした後、僕達はリオンさんのいる操舵室へと呼び出された。
リックさんは一旦、ヘンディル王国に戻っているので、この場に集まったのは先ほどラウンジに集まった面々と、イリスさんにマオ、そしてメリアだ。
「次の目的地となる島。イルセイル島へ向かうメンバーについて決めたいと思う」
「私と姉さんは無理だって聞いたけど……」
「ああ、その通り。原則的に神獣の力を持つ者は島に向かうことができない」
今回はそれがネックだ。
神獣の力を持つのはリーファ、ニーア、イオさん、シフ、ユランだ。
相棒を連れていけないのは精神的にも不安になってしまう。
「イルセイル島にいる神獣は弱っている。今、他の神獣の力が干渉すれば状態が悪化する可能性があるので、島に向かうメンツはカイト君とリックに加えて二人から三人となる」
「二人から、三人……」
「そう。人選はカイト君に任せる。私の方で決めてもよかったけど、君は私の主だからね」
「私“の”?」
「私たちの主だからねぇ!!?」
メリアのドスの利いた声に慌てて言い直すリオンさん。
……人選って言っても、ほぼ限られているようなものだけどなぁ。
イリスさんはこの船に必要な人だから連れていけないし、マオはまだ子供だしな……。
「セーラさんとチサトの二人で……いいかな?」
「勿論オーケーよ」
「私はかつて島人と呼ばれていた」
君、確か僕と同じ都会育ちって言ってたよね?
真顔でまた変なことを言っているチサトをスルーし、リオンさんの反応を見る。
「それじゃあ、島に向かうのはカイト君にリック。そしてセーラとチサトの四人ということで」
「はい」
人選としては問題ない。
チサトは純粋な制圧力、セーラさんは優れた状況判断能力。
二人がいれば大抵の状況はなんとかできるはずだ。
あとは依頼を受けるだけだけれど……。
「リオンさん、リックさんと受ける依頼はどのような内容なんですか? あくまで島に行くための建前のものだとは分かっているのですが……」
「島の生態系の調査だね。……まあ、その内容も金の冒険者が必要と判断するくらいのものだ」
「そのリックって人の故郷ってそんな危険な場所なの?」
セーラさんの質問にリオンさんは悩まし気に腕を組む。
これは、言おうと迷っている顔か?
「危険といえば危険だけど、君たちの実力ならそれほど心配はいらないと思うよ。島の魔物の強さ“は”それほど脅威でもないし」
「なら心配はいらないわね」
……強さはってことはそれ以外の要素が厄介ってことか?
うーん、考えすぎかな。
なんだかリオンさんと僕達で重大な認識の違いが存在しているような気がしてならないけど。
でもメンバーが決まったわけだし、明日リックさんと合流して依頼を受けに行くか。
メンバーは、カイト、リック、セーラ、チサトの4人に決まりました。
チサトが相変わらず不安定すぎる……。
次回あたりでイルセイル島編突入となります。
次回の更新は明日の18時を予定しております。




