第二百九十七話
昨日に引き続き二話目の更新です。
前話を見ていない方はまずはそちらをお願いします。
リックさんに協力を取り付けた後、彼を船へと連れていくことになった。
僕達の住んでいる宿舎から影のゲートを介して空を飛ぶ船へ。
一瞬にしてはるか遠くの別の場所へと移動したことにリックさんはとても驚いていたが、それ以上に空を飛ぶ船ということに驚いていた。
「おお、こりゃたまげた。長距離の転移に空を飛ぶ魔具とは予想外どころじゃねぇぞこりゃ」
「操舵室にリオンさん……貴方を誘うように指示した神獣がいますので、今から案内します」
とにもかくにもまずはリオンさんに話がうまくいったことを報告しなきゃな。
当然、知っているとは思うけど。
「リーファ、僕はリックさんを案内するから」
「ん、分かった。ラウンジで待ってる。多分、姉さんもいるだろうし」
一旦、リーファとも別れて僕達はそのまま船の中を進んでいく。
「まさかお前がここまで大きなことに巻き込まれているとはなぁ」
「この船に乗ったのは僕も最近なんですよ。むしろ、僕に関して言えば神獣関連に巻き込まれることが多くて……」
「オロチのいた遺跡の件だけじゃないんだろ?」
隣を歩くリックさんに頷くと、肩に乗っていたシフが代わりに答えてくれる。
「うむ。あの後カイトは3体の神獣と遭遇している。遺跡の件とフィーリヘルトを合わせて5体だな」
「普通の人生送ってりゃお目にかかれねぇ数字だな」
フィリ、メリア、リオンさん、ライザさんにベルンさんかな?
確かに5体だ。
「……大変じゃねぇのか?」
「はい?」
「神獣に関わるっつーことは、生き方を縛られるようなもんと同じだ。ましてやお前は異世界からやってきた人間、思うところがないはずないだろ?」
リックさんも神獣に関わったことがあるのかな? 口ぶりからして僕とはまた別に神獣の事情を知っていそうだ。
……思うところか。
「ある、と言えばあるんですけど考えないようにしています」
「いいのかよ、それで」
「受け入れましたから。それに僕には頼れる使い魔たちが傍にいてくれますし」
「キュ!」
「シャー!」
僕の声に合わせて胸ポケットからユラン、水筒からライムが飛び出してくる。
いつだって僕を支えてくれる頼もしい仲間たちだ。
……ん?
「大丈夫、もちろん君のことも忘れてないよ、メリア」
「い、いえ、そんな……フフフ」
後ろにぴったりとついてきていたメリアにそう言うと彼女は嬉しそうに頬に手を当てて微笑む。
リックさんの驚愕を他所に瞬きと共に姿を消したメリアを確認しながら、前へと向き直る。
「ということで、僕は大丈夫です」
「いや!? お前さらっと流すなよ!? 全然今の大丈夫じゃなかっただろ!?」
……はい?
「なんだよ今の女!?」
「あ、今のがオロチの遺跡にいた神獣のメリアです」
「史上一番あっさりとした神獣の紹介だぞ!? いいのか、それで!?」
メリアも特に気にしないので、大丈夫かと思われます。
「リック殿。カイトは常識と非常識の差異が激しいところがある」
「そ、そりゃ分かっているが」
「なので早く慣れてくれると嬉しい」
「使い魔にも匙投げられてるじゃん……」
シフの言葉にがっくりと肩を落としているリックさん。
しかし……なんというべきか。
「リックさんが僕の事情を知ってくれてちょっと嬉しいですね」
「ん? なんでだよ。リーファやら他の何人かも知ってるんだろ?」
「そうですけど、違うんです」
リーファ、ニーア、チサト、イオさん、セーラさん、マオ、イリスさん。
思いつくだけで何人もいる。
でも、違うのだ。
「男のメンバーがこの船にはいないんです……!!」
「……そういうことかよ……」
「別に肩身が狭いとまでは言わないんですけど、こう……やはり同性の仲間というものが欲しくなってしまってですね……」
「まあ、気持ちは分からないではないけども」
分かってくれますか……!
いや、本当に気にしないようにはしてきたけど、分かってくれる人がきてくれて本当によかった。
感動に打ち震えていると先の通路の扉が開かれ、誰かがやってくる。
「ん? マオ?」
「子供? なんでここに子供が?」
明るい灰色の髪の少女。
扉を閉めてこちらを向いたマオは僕に気づくと、表情を明るくさせる。
「……あっ、お父さん!!」
「リックさんそんな目で僕を見る前に僕の話を聞いてくださいお願いします!!」
理解者が一気に後ずさりして離れていった!?
くそぅ!! マオのお父さん呼びする癖を治してもらわねば……!!
すぐに誤解を解いてリックさんにマオのことを説明する。
「そ、そういうことか。た、性質の悪い勘違いをするところだったぜ……」
「カイトお兄ちゃん、ごめんなさい……」
「いや、いいんだ。誤解もすぐに解けたわけだし」
これが街中で起こったら割とシャレにならないことが起きかねないけれどね。
ドロドロ主従、修羅場主従、仮面主従の次の異名なんて想像もしたくない。
「……つーか、魔王の正体が子供とはなぁ」
「これにも深い事情がありまして。あとで説明しますよ」
「ああ、今はそれほど深く詮索する必要もねぇしな」
マオの魔王関連の話はちょっと複雑だからなぁ。
主にリオンさんのせいだけど。
●
そのままマオとも合流し、リオンさんのいる操舵室までやってきた。
操舵室の空席の椅子の傍にはリオンさんが立っており、僕達の到着と同時にこちらへ振り向いた。
「ようこそ、リック・ケーシング君。私は神獣、フィリュリオーン。気軽にリオンと呼んでくれたまえ」
きらきらと擬音が付きそうな綺麗な笑顔で自己紹介をするリオンさん。
……それ綺麗すぎて逆に胡散臭いという謎の逆効果さを見せるだけですよ? 実際、リックさん引いているし……。
ここは僕からフォローしておくか。
「彼女はリオンさん。基本的に必要なこと以外話さないし明かさない面倒な神獣だけど、善意で動いてくれているから、敵ではないです。……多分」
「おっと、カイト君。神獣だって泣くことはあるんだよ?」
無意識に多分ってつけてしまった。
でもこの人はなぁ……魔王を仕立て上げたときとか、敵みたいなムーブするからなぁ。
「とりあえず胡散臭い神獣だってのは分かったぜ……」
「とほほ、しょうがないとはいえ、君からの扱いが悪いとショックだよ」
……ちょっと根に持ちすぎたかな?
さすがに言い過ぎたから、この後ちゃんとフォローしてあげた方がいいかもしれな―——、
「でもそういう遠慮の無さがちょっと気持ちいいんだよね……!」
「……」
フォローしなくてもいいかな、やっぱり。
頬を染めているリオンさんに普通に引きながら、本題へと移らせる。
「リックさんを船に招いたのはいいんですけど、そろそろなぜ彼をここに招いたのか理由を教えてもらってもいいですか?」
神獣と関わりがある、ということは聞いている。
でもそれだけではないはずだ。
にやりと笑みを深めたリオンさんが人差し指を立てる。
「そうだね。まず彼はこれから向かうイルセイル島の地理に詳しいという理由が一つ」
「まあ、生まれ育った島だからな」
道案内役ってこと?
2つ目の理由はなんだ?
「そしてもう一つ。これが一番重要」
「一番、ですか?」
2つ目の指を立てたリオンさん。
こちらが本題なのか、その表情は先ほどとは違い真剣そのものだ。
「今回の島に降りることができるメンバーは、神獣の力を持つ者ではいけないという点だ」
……。
……、……!?
「これから向かう場所にいる神獣は外部からの影響を受けやすい状態になっている。そんな中に他の神獣の介入があれば、この私でも何が起こるかは想像はできない」
「そこまでの、事態なんですか?」
「だからこそ、イルセイル島の神獣と関りがあり、純粋な実力もあるリック君を仲間に加えたわけさ」
リックさんが仲間になった理由はよく分かった。
彼の実力は本物だ。
幾度の実戦を経て強くなった今でさえ勝てるかどうか分からないくらいに強い。
でも、それ以上に問題だと思うのが———、
「ですが、神獣の力を持つ人がいけないってことは……」
「ああ、君の想像通り。リーファとニーア、そしてイオも向かうことができない。そして……」
リオンさんが僕の肩にいるシフを指さす。
「クルックライザーの雷が授けられたシフと、メリアの加護が授けられたユランも同行することができないということだ」
魔王軍という驚異を倒した次に僕たちが立ち向かう神獣という問題。
その解決に乗り出すための最初の試練は———シフとユラン、頼れる2体の使い魔なしで向かわなければならないことであった。
制限をかけられるカイトでした。
最初からシフが同行できないのは何気に初めてだったりするかもしれません。
今回の更新は以上となります。




