第二十四話
第二十四話です。
前話を見ていない方はまずはそちらをー。
自分たちの戦い方を確認し、次の使い魔を犬にすると決意したその翌日から、僕達は冒険者として依頼をこなしていくことになった。
一日にこなせる任務は二つか三つほどしかないけれど、それでも内容によっては中々に苦しいものもいくつかあった。
例えば、下水道に巣食う魔物を排除するという依頼。
これはもう大変だった。
嗅覚の鋭いリーファは入った瞬間に白目を剥いて気絶してしまったので、僕達だけでやらないといけなくなってしまったし、遭遇した魔物、ダストスライムは毒素や腐臭を放ち、同族のライムでさえ武器として触れたくないくらいにやばい相手だった。
棍棒に火炎を付与させ振り回す技で駆除することに成功したが、下水道関連の依頼はもう二度と受けないことを涙目のリーファと共に強く誓った。
それ以外にも、魔物討伐とは別に王国に住む人々の日常の悩みなどを解決することにも奔走した。
庭の草むしりから、土木関係の力仕事から、果てはペットの捜索まで。
分かってはいたけど、この世界でも僕の動物に嫌われる体質は健在のようだ。
ペットを捜索するときは、僕の視界内に動物が現れることはなかったので、リーファにかなりの苦労をさせてしまった。
まあ、踏んだり蹴ったりとあれこれしながら依頼をこなしていくこと、一か月。
冒険者としての依頼に慣れ、この世界での生き方に慣れてきた僕は今日も今日とて、相棒のリーファと共に冒険者としての仕事に勤しむのであった。
「リーファ! そっちにいったぞ!!」
王国の街並から外れた森の中。
僕は頭上を見上げながら木々を駆け抜けていた。
肩からは冒険者に必要な道具を詰め込んだ肩掛け鞄、頭には帽子に変身したシフ、腰にはライムが入り込んでいる口の開いた水筒。
冒険者としてお馴染みの装備を掲げ、頭上の木から木へと移るように飛んでいる緑色の個体を見失わないように睨みつける。
「はぁッはぁッ、全く、なんでベノムモンキーの毒を欲しがる人がいるんだ……!」
「致し方あるまい、ベノムモンキーは特定の時期にしか姿を現さない魔物だ、その身に宿る毒も、生息地域により違うので、毒を取って調査せねばならない」
依頼『毒猿の毒を取ってきて!』
この時期に姿を現すサルの魔物、ベノムモンキーの毒を回収してほしいという依頼。
軽い身のこなしで枝を移動していくベノムモンキーの行く手を遮るように、リーファが影から飛び出してくる。
「行かせない……!」
「キィーー!!」
いつものナイフは手に持たず、捕獲用の布袋を手にリーファが迫る。
しかし、小柄なベノムモンキーは容易く袋を避けて、彼女の頭を踏んで飛んで行ってしまう。
「キィ♪ キィー!」
「~~! 屈辱!」
「気持ちは分かるけど、ナイフを抜こうとするな!?」
依頼の関係上、ベノムモンキーを捕まえて毒を取らなくてはならない。
挑発してくるベノムモンキーを見て、ふるふると震えながらナイフを引き抜こうとするリーファを止める。
しかし、あの樹の上であそこまで早く動けると厄介だ。
僕の肉体強化で追いつけはするけど、捕まえようとすれば誤って殺してしまうかもしれない。
「なら、ライム。君の出番だな」
「キュ!」
腰の水筒に右手を差し出し、ライムを纏わせる。
合わせて、シフに肉体強化の支援魔術をかけてもらう。
「リーファ、あのサルの動きには反応できる?」
「勿論。もうヘマはしない」
「よし、なら僕達で隙を作るから、後は頼む」
「ん、分かった」
なら、作戦開始だ……!
感覚を研ぎ澄ませながら、ライムを纏わせた右手を突き出す。
魔力が吸われると同時にライムの銀色の身体を三頭の蛇―――オロチの形状へと変形しながら、樹の上のベノムモンキーへと襲い掛かる。
「オロチアタックだ……!!」
「やっぱり、そのような名前なのだな……」
シフの呆れた呟きはスルー!!
迫る三頭のオロチに、跳ねるように驚いたベノムモンキーは逃げるように枝を飛び、伸びた頭を避けるが———生憎、この攻撃はライムの意志が宿っている生きた攻撃。
ライムは僕の魔力を吸い上げながら、その体を伸ばし、曲げながらベノムモンキーを追いかける。
「キュ!」
「ライム、もうちょっと頑張ってくれ!!」
しかし、伸びる長さにも限界があるし、僕自身の魔力もそう多くはない。
なので身軽で素早いベノムモンキーをこの距離で捕まえるのは無理なので、まずはベノムモンキーが飛び移ろうとした枝を、オロチの頭で噛み潰していく。
「所詮は、リスザル似の身軽さゆえの逃走方法!! 足場さえ崩してしまえばこっちのもんだ!!」
「キィ!?」
「今だ! リーファ!!」
「うん!」
足場へと飛び乗れず地面へと落下するベノムモンキー。
それを確認したリーファは自身の影に袋を持った手を添え、一気に突っ込んだ。
その瞬間、ベノムモンキーの下方に生じた影から彼女の腕だけが飛び出し、見事その広げた袋にベノムモンキーを放り込む。
「捕獲成功……!」
「よぉっし!!」
ズズッと、彼女が影から腕を引くと、暴れるベノムモンキーが入った袋。
それを見て思わずガッツポーズをとった僕は、その勢いのままリーファとハイタッチをする。
「新技、影腕も成功したし、順調だね」
「ああ!」
リーファの新しい技術、影腕。
少し前は、影に飛び込んで視界内の場所に移動していたけれど、この一か月で彼女は自身の身体の一部のみを影と影を通じて移動させることができるようになった。
非常に便利な技らしいけど、片方の影がなくなったら腕が切断されちゃうんじゃ……と、恐々としたけれど、その心配はないらしく、もし片方の影がなくなったとしても質量の少ない方が弾かれ、魔法が解けてしまうとのこと。
……リーファの魔法を見ると、僕の純魔って地味すぎてへこむ。
「それじゃ、早くこの子の口から毒を取り出そう」
「そうだな。群れで襲われると厄介だし」
依頼人の情報の手順に従い、捕獲したベノムモンキーの歯から分泌される毒と、唾液を取り出す。
それほどの量は必要ないそうで、指の大きさほどの小瓶に詰めた後は、ベノムモンキーを逃がして後はギルドに戻って報告するだけだ。
「それじゃ、ごめんな」
「キーッ!」
袋から出されたベノムモンキーは、僕達から離れるとべーっと舌を出した後に、森の奥へと消えて行ってしまった。
その控えめに言って可愛らしい姿を見て、思わずシフに話しかける。
「……シフ」
「駄目だ」
「まだ何も言ってないよ!?」
「言わなくてもおぬしのことならお見通しだ。あれは言うことは聞かないし、使い魔にするには適さない魔物だ。使い魔にするなら、賢く、忠誠心のある魔物にするべきだ」
「ぐ、ぐぐぐ」
頭の上からのシフの言葉に、苦渋の表情でベノムモンキーが消えていった森の先を見る。
そんな僕にシフは大きなため息をつく。
「あのサルの姿ならいくらでもなってやる。それで我慢しろ」
「いや、シフは黒猫のままが一番だから」
「おぬしの感性は、本当にどうなっているのだ!?」
いや、シフが黒猫なのは僕にとって最も重要なことだ。
そんな漫才のようなやり取りをしていると、空が暗くなってきていることに気付く。
ベノムモンキーの捜索に時間をかけてしまったからか、空は暗くなってきており、それも相まって森の中は数メートル先が見えなくなるほどの闇が支配している。
「カイト、暗くなってきたから適当なところで野宿しよう。このまま夜の森を行くのも危ないし」
「そうしようか」
「ふむ、ならば近くに川があるぞ。そこならば水も確保できるし、食料の魚も捕まえられるだろう」
「じゃ、私が取ってくる。カイトは魚捕れないし」
僕は魚にも避けられるので、食料調達は主にリーファの仕事だ。
なので僕は焚火をつけたり薪を集めたりと他のことをする。
「なんとかうまくやれてるな……冒険者」
冒険者として仕事を始めてから一か月。
バイトとは違う仕事、危険の付き纏う戦い、森の中での野宿、色々と初めての経験もあったけれど、僕はなんやかんやで冒険者という仕事を順調にこなしていた。
シフは黒猫が一番。
それだけは譲れない主人公でした。
次回から一日一話更新となります。
更新時刻についてですが16時だと少し早く感じたので、毎時18時へと変更いたします。
急な変更、申し訳ありません。




