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第二十話 

第二十話です。

前話を見ていない方はまずはそちらをー。

「姉? 君の?」

「うん」

「……それがどうして、君が戦うようなことに?」


 短い沈黙の後に躊躇しながらも口を開く。


「姉は、魔王軍にいるから」

「……!?」

「なんと……!」

「魔物としての力を使って、たくさんの人を苦しめているから……止めたい。勇者なら、魔王軍と関わる機会も多くなるし、それだけ姉と遭遇できる」


 自分の力を扱おうとしたのは、姉を止めるためってことか。

 納得はいったけれど、まさか魔王軍が絡んでくるなんて……。

 いや、これで彼女が勇者という地位を利用しようとしている理由も理解できる。


「おぬしの姉も魔物の力を?」

「……私よりもずっとうまく使いこなしてる。今は魔王軍の幹部にまで上り詰めてるくらいに、強い」

「幹部!?」


 たしかオロチって魔王軍の幹部だった魔物だったはずだよな?

 だとしたら、リーファの姉はオロチと同じくらい強いってことなのか?


「私は姉を止めたい。自分の魔物の力も使いこなさなきゃいけないし、単純に強くならないといけない。でも、悔しいけれど……一人では無理。私は姉のように、一人で強くはなれないから」

「一人で……」


 そう呟くように口にした彼女は俯いたまま無言になってしまう。

 彼女の話を聞いた僕は、どうするべきかと思い悩んでいると、シフがこちらを振り向く。


「カイト、私個人の意見を述べるなら反対だ」

「っ!」

「……君の考えを聞かせてくれ」

「まず、私達は魔王軍と争う利点がない。下手をすれば、おぬしの魔力を狙われる可能性がある。それを踏まえても、魔王軍は強力な力を持つ魔物や魔族がいるはずだ。あまりにも危険すぎる……が―――」


 そこで一旦区切った彼は、僕を見上げたまま尻尾を左右に揺らす。


「おぬしの判断に任せよう」


 え?


「僕が決めちゃっていいの?」

「おうともさ。色々と忠告はしたが、おぬしが戦う道を選んだとすれば、私もライムも全力を尽くす所存だ。正直言うと、どっちを選んだとしても、おぬしと一緒なら面白いことになりそうだ」


 ———僕は、リーファを助けるべきなのだろうか。

 多分、彼女を助けるように動いたのなら、僕はこの国の勇者の仲間として、ここに残らなければならなくなる。

 しかし、彼女の申し出を断ると―――今度は獅子原さんのいる隣国へ向かうことになるかもしれない。

 そうなれば、新しい道が用意されるかもしれないが、それもまた戦う道かもしれない。

 なら、僕は目の前で助けを求めている彼女を救うべきかもしれない。

 現状で、僕だけが彼女の内側にいる魔物としての力を押さえつけられる。僕以外の誰にもできず、彼女も僕だけしか頼れないというならば――、


「リーファ、僕は何をすればいいんだ?」


 僕は、この子の助けになるべきだ。

 それがこの世界で僕に与えられた“使命”なのかもしれない。

 顔を上げた彼女は、見開いた瞳を僕へと向ける。


「……いいの? 隣国の勇者は知り合いなんでしょ?」

「彼女は多分……大丈夫だ」


 獅子原さん、すまん。

 聞いた話、なんか凄い魔法の才能に開花しているし、なんだかんだで元気そうだから、こっちの困っている彼女を手伝うことにする。


「それより、君は家族のために動いているんだろ? なら、力を貸す」

「うん……うん、ありがとう」


 もう一度俯き、目元をごしごしと袖で拭ったリーファは、ここで初めて年相応の笑顔を見せた。


「それじゃあ、これからはコンビだね」

「コンビ?」

「冒険者はチームを組むことが多い。勇者も信頼する人間を相棒にする。だから、コンビ」


 なんというか、不思議な感覚だ。

 しみじみとそう思っている、シフが僕の肩に飛び乗ってくる。


「そうなると、カイトはこのギルドに残ることになるのか?」

「うん、そうなるね」

「ならば、今のうちにベルセ殿に話しておくといい。勇者が関係するとなると、面倒な事態になる可能性もあるからな。適切な判断ができる彼に、まず打ち明けるべきだ」

「分かった。なら、早速行こう」

「私も行く」


 リーファと共に再びベルセさんと面接を行った部屋に足を運ぶ。

 もしかしたらもういないかも、と思っていたけれど、扉の前にやけに疲れたような顔をした、僕達を案内してくれた職員の女性がいるので、まだ部屋にいるようだ。

 女性に話を通してもらい、ベルセさんのいる部屋へといれてもらう。


「———来たか」


 部屋の中には、腕を組んだまま目を瞑っているベルセさんが椅子に座っていた。

 彼は、僕達に気付くとゆっくりと目を開いた。


「さきほど城で君が本物の勇者だという確認が取れた。まさか身分を隠して試験を受けているとはね。しかも、既にカイト君に目をつけていたとは……これには私も驚いたよ」

「すみません。その、特別扱いは望んではいなかったので……」

「そうだろうね。君の能力的にも、依頼を通じて実践と力の扱い方を学びたかったのだろう」


 申し訳なさそうに謝罪するリーファ。

 彼女としては、勇者という立場のみで合格されるのは我慢ならなかったのだろう。


「僕は、ここに残って彼女を助けます」

「いいのかい? 同じ世界から来た隣国の勇者の元へ行けなくなるよ? 勇者である彼女を助けるということは、危険な状況に身を置く可能性もある」

「今はそれで構いません。なんというか……ここにいる彼女が僕の助けを誰よりも必要としているように思えましたので」

「君が、決めたことなんだな?」


 ベルセさんの言葉に頷く。

 元より、僕はこの世界ではなんの目的を持っていないちゅうぶらりんな存在だ。

 そんな僕にできることがある。

 ここにいていい理由があるというなら、やるしかない。


「それに、僕もようやくここの暮らしに慣れてきたので、すぐに離れるのも抵抗がありますからね」

「……ははは、たしかにそうだ」


 お茶らけた風に話すと、厳しい面持ちのベルセさんが肩の力を抜いて笑った。


「君はこちらに残り、ヘンディル王国の勇者に協力することを伝えておこう。多少のやっかみはあるかもしれないが、あちらもそう文句はいえないはずだ」

「何から何まですいません……」

「いや、逆を言えば、君はこの国を代表する勇者に協力する立場になるんだ。ここに住む者としては歓迎するべきことだよ」


 いざ聞くとすごいことになっているけれど、まだ実感がわかない。


「さてさて、本来はこの後に知らせるはずだが、今この場で伝えてしまおうか」

「何をですか?」


 手元の資料をめくった彼は、二枚の文字が記された書類を取り出し、それを僕とリーファに渡してくる。

 文字の勉強はしたので、かろうじて読める文に目を通すと――、


「ごう、かく?」

「冒険者、合格通知? これってもしかして」

「アリハラ・カイト。リーファ・ウルガル。今日を以てして、君たちをギルド所属の冒険者として働くことを認めよう。私達は、君達二人を歓迎する」


 試験の合格の証。

 自分が冒険者になれたことを、十秒ほどかけてようやく自覚する。

 喜びと驚きのあまり、逆に呆然としてしまった僕に、シフが僕以上に喜びながら声をかけてきてくれる。


 今日は色々なことがあった。

 ただ冒険者になるために試験を受けに来たのに、結果を見ればこの王国の勇者に協力することになったり、探し出そうと決意していた獅子原さんの居場所が判明してしまった。

 次に僕がやることは、姉のために強くなろうとするリーファを助けること。

 そのために、まずは冒険者として働いて強くなっていこう。



次回の更新は明日の午前10時を予定しております。


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― 新着の感想 ―
[一言] リーファに付いていく事の説得力が全然無いなぁ 話の都合で動かされている感があからさま過ぎる
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