第百五十三話
自分のツイートを改めて見て、更新通知するだけの人力bot化していることに気付いてしまった。
なんとかせねば……!
第百五十三話です。
セントレアルへの馬車での旅は、思っていた以上に快適なものであった。
色々と不自由さのあるイメージのある馬車ではあるが、セントレアル製のそれはこれでもかと言うくらいに多機能だった。
馬車の内装である椅子の折り畳み機能。
側面に搭載されたシャワー。
反対側に搭載されたキッチン。
夜間での移動を可能にするライト。
その多機能さを旅の最中に目撃した僕とチサトは思った。
キャンピングカーかよ、と。
リオンさん曰く、今の時点の技術の粋を集めて作られたものなので、これらの機能もまだほんの一部にすぎないとのこと。
中には魔物に襲われた際の戦闘形態というのもあるらしく、多少の危険な魔物なら撃退できるほどの力があるらしい。
セントレアルってもしかしてやばい国なのでは?
技術力だけでも相当以上に感じたのだけれども。
そんなことも思いながら、数日ほど充実した旅を送っていた僕達はようやくセントレアルに到着することができたのだ。
「あれがセントレアルかぁ」
馬車から顔を出して目前にまで迫った中央都市セントレアルの全容を眺める。
見た目は真っ白な都市。
ヘンディル王国やフィルゲン王国の首都よりかは小さいけれど、背の高い建物が密集した近代都市っぽい場所だ。
「なんだか刺々しい建物が多いね」
「たしかに。それぞれ高さが違うから、芸術的に見えちゃうね」
リーファもチサトもセントレアルの建物を見てそんな感想を呟いている。
僕の腕の中で同じ景色を見ていたシフも、やや興奮したような眼差しを向けている。
「あちらについたら、すぐに迎えの者がやってくるはずです。今のうちにお荷物の準備をお願いします」
手綱を引いているリオンさんの声に頷いた僕達は、馬車の中に引っ込み荷物をまとめる。
その間に馬車は都市へと進んで行き、多くの同型の馬車が並ぶ広場で停止する。
「到着しましたよー!」
彼女が馬車の扉を開いてそう知らせてくれたので、僕達は肩にかけた荷物を持ちながら馬車の外へと出る。
出てすぐに先鋭的なセントレアルの建物が視界に映り込む。
これまで訪れた場所とは一風変わった景色に目を奪われていると、僕達の元に足先から頭のてっぺんまで真っ白なローブを纏った三人の人がやってきた。
「ヘンディル王国並びにフィルゲン王国の皆さまで相違ないでしょうか?」
「え、あ、うん」
「———お迎えにあがりました。勇者様、従者様」
どうやら、セントレアルに到着した僕達を迎えに来た人たちのようだ。
彼らは恭しく僕達に一礼をすると、他の勇者と従者たちが集められている場所まで案内してくれるという。
出発するというところで、チサトは白いローブの人に話しかけている。
「もう他の勇者は到着しているの?」
「全員ではありませんが、既に到着している方々はおります」
さすがに一番乗りってわけじゃなかったか。
まあ、比較的近い国の人は到着するのが早いんだろうな。
すぐにでも案内してくれるというので、先に進む前にここまで連れてきてくれたリオンさんにお礼をしておこう。
「リオンさん、ここまでありがとうございました」
「ありがとね」
「ありがとうございました」
僕、リーファ、チサトの順でお礼を言葉にする。
お礼を受けたリオンさんは、明るい笑顔を浮かべてくれる。
「いえいえ、貴方様との旅、とても楽しかったです。帰りにまたよろしくお願いします」
それから一言二言ほど交わして、その場を離れる。
先を歩くリーファ達を視界に映しながら前へ進もうとしたところで、ふと僕達を見送ろうとしてくれていたリオンさんへともう一度声をかける。
「あー、その」
「どうしたのですか?」
「カイトよ、リオン殿になにか話でも?」
足元にいるシフが首を傾げている。
そこまで重要なことじゃないけれど、帰りもこの人のお世話になるというなら今のうちに言っておきたいことがあった。
「次は無理して敬語で話さなくてもいいですよ?」
「はい?」
「いや、結構、気を遣っているように思いましたから」
驚きに目を丸くするリオンさん。
リーファとチサトに指摘されてから、ようやく気付けたことだが僕達と話しているリオンさんはどこか無理をしているように思えた。
敬語もしっかりとしている。
態度におかしなところもない。
しかし、彼女の言葉と素振りに漠然とした違和感のようなものを感じたのだ。
言うなれば、本来の自分を押さえ込むようなそんな感覚だ。
「なるほど。これは彼女の気持ちも分かってしまうなぁ。うん、悪くない」
「彼女……?」
フードの奥のその表情はただ嬉しそうに笑っていた。
リオンさんの本当の口調。
どこか中性的な話し方だが、なぜかイメージにしっくりと嵌った気がした。
「少し失礼」
「おっとと!?」
そんなことをぼんやりと思っていると、何を思ったのかリオンさんは僕の肩を掴んでそのまま後ろを向かせた。
彼女の突然の行動に驚く僕の視界の先に、並んで歩いているリーファとチサトの姿がある。
「ここに集まる勇者達は、皆一癖も二癖もある人物だらけだ」
「リオン、さん?」
「その中には当然、君の常識からかけ離れた行いをする輩もいる」
肩に手を置かれ、囁かれたその言葉に目を見開く。
いや、チサトもリーファも一癖も二癖もあるけど、彼女達以外もそうなのか……?
「これは、私からのささやかな助言。———君らしくあれ。ただそれだけで、その内に秘める純魔の輝きは至高へと至るだろう」
「っ!?」
咄嗟に後ろを振り向こうとするも肩に置かれた手は動かない。
いや、それどころか僕自身の身体も動かず、足元にいるシフも金縛りにあったように身体が震えている。
背後にいるのはなんだ?
メリアと似た気配を発する彼女は、何者だ?
ようやく異変に気付けても動くことができない。
「急がなくとも、またすぐに会うことになるよ。その時、君に対して行ってしまった我が非礼を詫びよう」
「っ……」
「名前、呼んでくれて嬉しかったよ。久しぶりの感覚に心が躍ってしまった……だから、ありがとう、と言わせてもらおう」
その言葉を機に、肩に置かれていた手の感覚が消え失せる。
バランスを崩しかけながら後ろへと振り向くも、そこには誰もいない。
すぐ後ろにいたはずなのに、霞のようにどこかへ消えてしまった。
「……シフ」
「……うむ」
唖然とした様子のシフに声をかける。
きっと、僕とシフの心境は同じものだろう。
「これは、やらかしたか?」
「もはや才能だぞ……得体の知れない輩に目をつけられすぎだと思う」
「好きでこうなったんじゃないよ……」
親身に話しかけているから敵ではない。
だが、メリアという前例があるから安心できるわけでもないし、なにより僕のことで何かを知っていた。
確実にセントレアルに関係しているよな、これ。
でなきゃここまで送ってこないし、本人もまたすぐに会うことになるって言っていたし。
「カイト、なにやってんの? 置いていくよ」
「……リーファ」
先ほどまでリオンさんがいた場所を呆然と見ている僕の背後から、リーファが声をかけてくる。
どうやら、立ち止まっている僕を呼びに来てくれたようだ。
「どうやら僕は、本当に騙されやすい男だったらしい」
「……なにがあったの?」
「リオンさん人外説……」
「怪しいとは思ってたけど、なんでちょっと目を離すとすぐに変な人に目をつけられるの……? 笑えないよ……」
ここまで来てもなお、僕の周りに何かしらが起こってしまうようだ。
……今から帰ったら何事も起こらずに済むのかなぁ、と後ろ向きなことを考えてしまうが、もう後戻りはできないのは僕が一番よく分かっている。
「前に進むしかねぇ……! 分かり切ったフラグを踏みにいくぞ、皆……!」
「うん、私も付き合うから頑張って乗り越えよう……!」
「前途多難だな……」
「キュゥ」
「シャァ……」
中央都市セントレアル。
勇者が集められる謎多き場所。
そこで何をするかは分からないが、とりあえず何かしらが起こることは確かなようだ。
他の勇者のカイトへの認識。
・異世界からやってきた人間。
・ヘンディルの勇者の従者。
・フィルゲンの勇者の従者。
・魔物に指示を出して後方で戦うテイマー。




