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第百四十八話

第百四十八話です。

 金の冒険者への昇格と、勇者と従者としての立場の公表。

 それはまさしく僕達の日常を大きく変化させるものであった。

 次の日からは、もういつものように外を出歩けば注目されるようになってしまったし、納得いかない異名を囁かれるようになってしまった。

 だけれど、ギルド内だけはそれほど驚かれてはいなかったようで、公表された翌日には「やっぱりー」とか「そうだと思ったんだよねー」みたいなノリで納得されてしまっていた。

 ……まるで普段から常識はずれなことをしているみたいな扱いをされているみたいで納得いかなかったけれど、慣れ親しんだギルドを避ける必要もないのがよかった。

 しかし、その一方で城は大忙しだったらしい。

 公表後に、セントレアルの勇者招集のための説明として城に呼ばれた時、ジェシカ様のいる大広間は多くの人が行きかうほどに大忙しだった。


『テイマー系でお土産とか売り出すのもアリね。広報担当を呼び出しなさい! シフの顔を模したあまくるみとかいいと思うの私! ええ! 煙がオオカミの形になる魔具の玩具!? ライムをモデルにした風船の玩具!? いいわねどっちも採用!! リーファ、今忙しいから貴女のは後よ!!』


 私も私も、といった具合に自己主張し始めたリーファを突っぱねながら、ご当地お土産とばかりに僕の使い魔印のナニカを作り出そうとしているジェシカ様に僕は思わず白目をむいた。

 やだ、僕がご当地お土産になっちゃう……?

 売り上げの一部がもらえると聞いても全然嬉しくなかった。

 そんなこんなもあり、忙しそうなジェシカ様から勇者招集について説明されたわけだけど、大まかな内容は伏せられているらしく、分かったのはこの国にセントレアルから派遣された馬車がやってくることだけであった。

 そんな謎だらけの招集に参加してもいいのかという疑問もあったが、相手は各地に勇者召喚術式を配った重要都市、信用もあれど断ることも難しいと説明されてしまった。

 でも、出発前にチサトがヘンディル王国に来るのはいいサプライズだったな。


「カイト、私納得いかないの」

「なんだ、修羅場主従についてか?」


 ギルドの酒場のテーブルでぐでーっと突っ伏したリーファの呟きにそう返す。

 表明から二週間ほど経つと周囲も変化に慣れてきたのか、好奇の視線を向けられることも少なくなってきた。


「いや、それは別にいいんだけど」

「僕はよくないんだけど? 道行く人から『二人の勇者と修羅場ってるのですか』って聞かれる僕の気持ち分かる?」


 なに修羅場ってるって? 新しい言葉を生み出しちゃったよ。

 全然嬉しくないよ。

 そんなワードがこの世に生まれてしまったことを罪に思ってしまうわ。


「修羅場ってるよ。もう水面下の戦いだよ」

「どういうことだ。話が通じていない……!?」

「通じてないのはカイトだと思うの。……納得いかないのは、私の扱い」


 リーファの扱いと聞いて思わず首を傾げる。

 その反応が気に入らないのか、彼女はジトーッとした視線を向けてくる。


「なぜ私よりカイトの方が目立ってる」

「それは僕も納得いってないんだ……。君達もそう思うだろう?」


 リーファの言葉に同意しながら視線を使い魔達へ向ける。

 シフ、ライム、ユラン、ハクロは同意するようにこくこくと頷いている。


「うむ、よもや私の顔をしたあまくるみが売られるとは思わなかった。くっ、自分の顔を食べるというのは誠にッ、誠に奇妙な感覚だ……! あむあむ……!」


 黒色猫の顔の形に作られたあまくるみをもぐもぐと食べているシフ。

 銀色の風船とにらめっこしているライム。

 小さな魔具からふわふわと浮き出てくるデフォルメされたオオカミの形になる煙を見て、微妙な表情をするハクロ。

 そして、唯一商品化されず黄昏るユラン。


「といいつつも、全部買ってるじゃん」

「クッ、売られていたら買うしかないだろう……! この子達の記念なんだぞ……!」

「お母さんじゃん……」


 なんか突然の商業展開には不服そのものだが、それ以上にユラン関連の商品がないのが不服すぎる。


「シャァ……」

「ユラン、ごめんよ!! さすがに蛇の商品化は無理だったみたいなんだ! でも大丈夫、君は僕にとってのオンリーワンだから……!」

「意味わかんないよ」


 黄昏ているユランを慰めている僕を、呆れた様子で見るリーファ。

 周囲からの視線も感じるが最早慣れたものなのでそこまで気にはしない。 


「カイトよ、明日はチサトがここに到着するのだろう?」


 あまくるみを食べ終えたシフがふとそんなことを口にする。

 そうだ。明日、フィルゲン王国からチサトが来るのだ。

 ここで合流して、三日後にくるセントレアルからの馬車に乗って目的地に出発するという予定なので、明日からは少し忙しくなってしまう。


「でもなぜか泊まる場所が、僕達のいる宿なんだよなぁ」

「うん、普通は城の方だよね……」

「うむ、私もそこだけは分からん」


 チサトが泊まる宿だが、なぜかメルクさんの経営する宿となった。

 理由を尋ねると城より安全な場所だかららしいけれど、僕達がいるから安全って意味なのかな?

 いや、メルクさんの作る料理の美味しさに関しては最高ではあるけれども。


「まあ、ジェシカ様がそう判断されたなら、なにか考えがあってのことなんだろう」

「もう決まっていることみたいだし、悩んでてもしょうがないね」


 チサトが明日メルクさんの宿に来る。

 それはもう決定していることらしいので、ここで僕達がなにを言っても変わらない。


「そうと決まれば……」

「ん? どこに行くの? 依頼?」


 金の冒険者になっても普通の依頼を受けることができる。

 報酬などは金の方が十倍以上にいいらしいので、ほとんどの金の冒険者が普通の依頼を受けることが少なくなるらしいのだが、それでも僕とリーファは報酬関係なしにちょくちょく受けることを決めていた。

 だけど、今から僕がするのは依頼ではない。


「ちょっと明日のためにマジックトラウトを釣りあげてくるぜ……!」


 魔力を持つ魚、マジックトラウト。

 この世界では高級魚といってもいい旨味を秘めた魚だ。

 釣道具に関しては、ライムがいてくれるから心配はいらないな。


「マジックトラウト! それはいい! 早速釣りに行こうぞ!!」

「そして帰りに肉屋でたくさんお肉を買って帰るぜ……!」

「おおっ!」


 以前、メルクさんに調理してもらったそれを食べたときは、まさに頬が落ちるほどに美味しかった。

 マジックトラウトと肉と聞いて、シフが目を輝かせてぴょんぴょんと跳ねている。


「んじゃ、私もついていく」

「ん? 君も釣るのか?」


 立ち上がったリーファにそう問いかけると、彼女は首を横に振った。


「ううん、カイトが湖の生態系を破壊しないか見張っておかなくちゃ」

「君は僕をなんだと思っているのかな?」


 そこまで乱獲するつもりはないからね?

 捕まえて精々五匹くらいだから、乱獲するつもりなんてさらさらない。


「あと買うお肉は―――この私自らが厳選する」

「君はお肉のなんなの?」


 そんなこんなで明日、チサトを歓迎するための食材を調達&購入することになった。

 まあ、調理してくれるのはメルクさんなんだけれども、あの人ならなんだかんだで美味しいご飯を作ってくれるだろう。

この世界ならご当地勇者お土産とかありそうですね……。

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― 新着の感想 ―
神獣がいてご飯がめちゃくちゃ上手い宿....安心安全過ぎて逆に怖いw
[一言] 修羅場の語源の インドラ勝てないのに挑み続けるアシュラな意味でもぴったりだとおもったよ まぁテイムオーガはいつか倒してしまいそうだけどね
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