87話 RPG
今話は短めです。久しぶりのお絵かき!
けど、桜子ちゃんと中の人の画力は全然向上しませんw
1940年7月中旬 東京 赤坂 秩父宮邸
「フフフンフンフン~フン♪」
「藤宮様、ご機嫌ですね」
「まあねー」
「今度は何を描いておられるのですか?」
「じゃじゃーん!」
桜子ちゃん特製、RPGであります!
ロールプレイングゲームの略じゃないよ?
このRPGは、ロケットPなんちゃらグレネードランチャーの略で、RPGなのです。
このRPGの絵を、陸軍技術本部のお偉いさんに渡せば、日本の対戦車兵器の進歩も早まるというものですよね。
この夏子さんとのやり取りは、もう既にテンプレ、様式美の極致のような気がしてきましたね!
「RPG、ですか?」
「いま、バルト三国がソ連に攻められていて、大変な状況になっているでしょ?」
「左様でございますね」
「そこで、ソ連の戦車に対抗するために、歩兵が使える携帯型の対戦車兵器が、なにを隠そう、このRPGなんだよ!」
このRPGが開発され量産化できれば、ソビエト赤軍のT-34戦車なんて、バッタバッタとスクラップにしてやんよ!
T-34戦車は、きっとブリキの玩具同然に成り下がっちゃいますね。
ドイツのパンツァーファウストやパンツァーシュレックなんて目じゃない代物ですよ!
でもまあ…… RPGは、パンツァーファウストからの派生ではあるんだけどね。
しかし、小国が大国の戦車に対抗する兵器として、このRPGはコストパフォーマンス、費用対効果が抜群の武器なんですよ。
その事実に、未来においてアフリカや中東の紛争地域で、ゲリラや反政府武装勢力がRPGを使って、政府軍の戦車や装甲車両を撃破したりしていますもんね。
「なるほど、このRPGが開発できれば、歩兵でも戦車と戦えるようになるのですね?」
「まあ、歩兵が真正面から戦車と戦うのは、さすがに厳しいとは思うけどね」
「それでも、素晴らしいアイデアだと思います」
「そうでしょ! そうでしょ!」
よし、いつも一言ケチを付けることが多い、夏子さんも認めてくれたのだから、これはきっと大丈夫でしょう。
「ですが藤宮様、一つだけよろしいでしょうか?」
──大丈夫じゃなかった!
「な、なにかな…?」
なにか嫌な予感がしますね。そう、私も過去の出来事から学習したんですよ。
「このRPGとやらが開発できたとしても、バルト三国へ届けられる頃には、とっくに戦争が終わってませんか?」
「…………」
こ、こまけぇことはいいんだよ!
「それも残念ながら、十中八九はバルト三国の降伏という形で」
「…………」
うん、バルト三国には悪いけど、RPGは日本陸軍の秘密兵器、切り札として開発することにしようそうしよう。
でも、バルト三国の戦争には間に合いそうにないのだから、仕方ないよね!
「そういえば藤宮様、もう一つございました」
「こ、今度はナニかな…?」
またまたナニやら嫌な予感がしますね。そう、私も過去の出来事から学習したのですから。
「いい加減、そろそろクレヨンからは卒業しましょうよ。
藤宮様はもう既に、10歳におなりになられたのですよ?」
「ペ、ペンタブが手に入らないから仕方ないんだよ」
あと60年か70年後、21世紀ぐらいまで待たないと、ペンタブは商品化されないでしょうね。
21世紀だなんて、私はとっくにお婆ちゃんか、下手したら死んでますよ。
もっとも、この時代にペンタブがあったとしても、私の画力が向上するとは限らないんだけどね……
画力は才能か、もしくは絵を描いた回数に比例すると思いますので。
「ペン…タブ? ペンはペンシルのペンなのでしょうけど、タブってなんの略なのでしょうか?」
「タブはタブレットのタブだよ」
「タブレット? 確か石版でしたね。藤宮様は石工職人を目指すのですか?」
あちゃー、この時代でタブレットと言ったら、そっちになっちゃうわなぁ。
液晶のタッチパッドなんて、影も形もないのだから。
「オベリクス桜子と呼んでくれたまえ」
「藤宮様、それを言うなら、オベリスクで、ございます」
つまり、ベネルクスとベネクルスの違いみたいなモノでしたか。
もしかしたら、ルサンチマンとルサマンチンの違いかも知れないけど。
要するに…… 紛らわしいんじゃー!
「……カーペンター桜子と呼んでくれたまえ」
「カーペンターは大工です。石工はメーソンで、ございます」
「…………」
こ、こまけぇことはいいんだよ!
「大人になってから間違えれば、人前で恥を搔くのは藤宮様ご自身ですので、
子供である今のうちに、しっかりと覚え直しておきましょう」
「あい……」
桜子ちゃんのルサンチマン度が+1上がった!
この世界のRPGの生みの親は桜子ちゃんだったらしいw
この後にあるはずの、軍人の論評まで書けなかった… おかしい…




