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88話 桜子さんの新聞斜め読み

サブタイに悩んだ…


 1940年7月中旬 東京 赤坂 秩父宮邸



【イギリス海軍の艦隊がバルト海に進入!】



 ガタッ!



「もしかして、こっちが本命でこれからが本当の第二次世界大戦だったのか!?」



 史実とは違ってこの世界線では、異分子である私がパリで停戦を呼び掛けてしまったから、第二次世界大戦が不発に終わってしまったかと思っていたのだけど、どうやらまだ火種は燻ぶっていたみたいでしたね。

 それにしてもなんで、ロイヤルネイビーがバルト海にまで、わざわざ遠征することになったんだ?


 まあ、バルト三国の運命が風前の灯火だからなのだとは思いますけど。

 詳しくは、新聞の続きを読んでから考えましょうかね。


 なになに……?



【今月の上旬に空母二隻と戦艦四隻を基幹とするロイヤルネイビーの艦隊が、バルト海で作戦行動に入ったとの情報が、イギリス海軍広報部から発表された。

 この艦隊の目的は、今現在バルト三国に侵攻しているソビエト赤軍を牽制するために、バルト海での軍事作戦を展開している可能性が高いと思われる。


 しかし、このイギリス海軍の行動に対して、一方の当事者であるバルト三国は歓迎こそすれ、もう一方の当事者であるソビエト連邦の反発は必至であろうと推測される。

 なお、ベルリンの特派員からの情報によると、この事態に対してドイツのヒトラー総統は静観の構えを崩しておらず、どうやら英ソ両国間における状況の推移を見守る模様だ。】



 連合国とドイツとの戦争が終わったと思ったら、お次はイギリスとソビエト連邦とが一触即発の事態になるとはねぇ……



「さすがに、この展開は予想できなかったよ」



 もしかしたら、これが歴史の修正力とか、反動、揺り戻しということなのかも知れませんね。

 一度動き出した戦争機械という巨大な歯車は、そう簡単には止められないということなのでしょうか?


 それにしても、チョビ髭オジサンは、絶好のポジションを与えられた形になってしまったなぁ。

 イギリスとソ連を両天秤に掛けて、高く売りつけることが可能なポジションだもんね。




 翌日



【英仏がソ連にバルト三国からの撤退を勧告! 最後通牒か?】



 なになに……?



【現在バルト三国に軍事的侵略をしている、ソビエト赤軍が自国領内に撤退することを英仏両国連名で勧告する。

 この勧告が受け入れられなかった場合には、ソビエト連邦のパリ不戦条約違反とみなして、バルト三国への軍事支援を行うとのことである。】 …とな?


 どうやら、イギリスとフランスはドイツとの戦争だけでは、まだ戦い足りなかったみたいでしたね。

 フランスはドイツに敗北してイライラしているし、イギリスは不完全燃焼でイライラしているといったところでしょうか?



「まあ、パリ不戦条約も実質的に、有名無実化しているような気がしないでもないけどねぇ」



 そう、パリ不戦条約は、ドイツのポーランド侵攻や冬戦争を止められなかった時点で、もう既に形骸化してはいるのですよ。


 それにしても、ソビエト連邦はパリ不戦条約の付帯条約である、"侵略の定義に関する条約"これに署名しているのですから、まったくもって何をか言わんやであります。

 この条約には、エストニアとラトビア、ポーランドも署名しているのですよね。


 その条約を批准している国々に堂々と侵略できる神経は、流石ならず者国家ソビエト連邦としか言いようがありません。

 一体全体、どういった建前を前面に押し出して、それを大義にしているのでしょうかね?


 ポーランド東部に侵攻した時には、ポーランド領内に住むウクライナ系住民やベラルーシ系住民の保護が名目でしたっけ?

 もっとも、冬戦争の時は言いがかりや難癖に近い言葉を並べていたような気もしましたがね。


 フィンランドの国境がレニングラードに近すぎるから、自国の安全保障上、見過ごすことはできないとかなんとかかんとか。

 その言い分が大手を振ってまかり通るのであれば、我が大日本帝国は、ウラジオストックや沿海州を日本領にできちゃいますってば。


 まあ、もう既に北樺太は日本領にしちゃったけどさ。

 まさか、私がお父様にポロっと漏らした愚痴から始まった妄想が、実際に結果を伴って実現しちゃうとは思いもよらなかったよ。


 うん、満州の一部とかと北樺太を交換できたこと、そのことに私の妄想も少しは役に立ったのかも知れませんね。

 そして、その時にソ連は北樺太よりも、ハバロフスクやチタの安全を取ったのでしたね。




 翌々日



【ソ連は英仏の勧告を拒否!】



 まあ、当然ソ連としては拒否しますわなぁ。

 バルト三国は帝政ロシア時代には自国の領土だったんだから、帝政ロシアの後継を自認するソ連は、バルト三国を自分の庭だと思っているはずだしね。


 なになに……?



【バルト三国に在住するロシア系住民が迫害されているので、その住民を保護するのが目的で、侵略には当たらないとのモロトフ外相の言葉。

 このモロトフ外相の発言を受け、ソ連と英仏両国の緊張が一気に高まる恐れが濃厚となった。】 …とな?



「すわ開戦か! といった感じでしょうかね?」



 それにしても、ポーランド占領の時と同じとか、建前に芸がないですね。

 もうちょっと捻った嘘を並べ立ててくれたほうが、私の腹筋も鍛えられるというモノなのに。


 まあ、帝政ロシア時代からバルト三国に居住しているロシア人も多数いるだろうし、迫害まではいかなくてもロシア人が優遇されなくて、冷や飯を食わされてるような状況ではあったのかも知れないけどさ。

 でも、エストニアならエストニア人が、ラトビアならラトビア人がみたいに、自国民が優遇されるのは当然の権利だろうしなぁ。


 日本だって本土では朝鮮人や台湾人よりも、日本人が優遇されるのは当たり前ですしね。

 逆に日本本土で朝鮮人や台湾人を優遇なんてすれば、焼き討ち待ったなしの事案ですよ。


 この時代の日本人の中には、自分の気に入らないことがあると癇癪を起して、直ぐに放火に走る輩が一定数存在するのですから。

 ○○大火とかの大火事の半分ぐらいは、放火の可能性もありますしね。


 日本は都合良く木造の家屋ばっかりだから、また気持ち良いぐらいによく燃えるんですよ。

 木造建築というのは、放火魔にとってカモなんでしょうね。


 話がそれた。


 それよりも、英仏連合VSソビエト連邦……

 この戦争が現実となった場合に、戦争の行方を占う鍵を握るのは、やはりドイツでしょうか?


 アメリカと日本も多少は影響を与えられるかも知れないけど、やっぱドイツの動き次第だよなぁ。

 イタリアは…… まあ、イタリアだし、長靴半島で平和を謳歌していたとしても、別に罰は当たらないのじゃないかな?



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― 新着の感想 ―
[一言] ちょび髭さんは、創作活動が忙しいから… 桜子ちゃんが描いた絵に「いいね!」ボタンを押し続けてる限り動かないんだろうなー
[一言] 〉 それにしても、ポーランド占領の時と同じとか、建前に芸がないですね。 〉 もうちょっと捻った嘘を並べ立ててくれたほうが、私の腹筋も鍛えられるというモノなのに。 その言い訳、現代でも使…
[気になる点] ちょび髭さんは桜子ちゃんに従うの?
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