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78話 ヒトラー×ヘス ルーズベルト×ハル

連続で台本形式をやってしまった…


 ドイツ ベルリン



「戦争で殺し合うよりも、オリンピックで競い合いましょう。とな?」


「まったくもって正論ですな」


「うむ、余もイギリスとの戦争は本意ではない」


「ということは、プリンセス藤宮の提案は我が国にとっても渡りに船ですな」


「うむ。だが、落としどころが問題ではある」


「エルザス・ロートリンゲンの割譲は当然として、あとはどれだけ取れるかでしょうか?」


「そうなるな」


「フランスはともかく、イギリスは敗北したとは思ってないでしょう」


「やはり、イギリスからは取れないか……」


「あまりふっかけすぎますと、纏まる講和も纏まりませんよ」


「うむむ…… ベネルクス三か国の主権は回復させねば纏まらんか」


「デンマークとノルウェーもです」


「スカンジナビアは、ナルヴィクの港湾租借権と、カテガット、スカゲラック、エーレ、ベルトの、各海峡の通行権は譲れないぞ」


「その程度でしたら、ノルウェーは呑むはずです。海峡はもとから国際水路ですので、デンマークと敵対してなければ自由に通行できます」


「む? そうだったのか?」


「ベルギーとオランダはどうなさいます?」


「オイペンとマルメディは返してもらわんとな」


「併合も宣言しちゃいましたし、住んでる住民もドイツ人ですので大丈夫でしょう」


「先の大戦まではドイツ領だったしな」


「マース川までは、さすがに欲張りすぎですかな?」


「オランダが首を縦に振ってくれれば良いのだが……」


「オランダに非はありませんので、女王は頷かないでしょうね」


「まあ、オランダには、我が国のほうが負い目があるのだから諦めるとするか」


「一応は主張だけしてみて、あとから引っ込めても良いとは思いますけど」


「もらえたら儲けものというヤツか?」


「ふっかけてから、要求を下げるのは基本ですので」


「そうであったな。それで、肝心のフランスはどうしたら良いと思う?」


「エルザス・ロートリンゲンの我が国への返還は当然として、大西洋側の何処かの港の租借権と港までの軍事通行権に、フランスに奪われたアフリカの旧植民地の返還と、賠償金5000億フラン、それと軍隊の制限といったところでしょうか?」


「賠償金5000億フランは、ふっかけすぎではないのかね?」


「最終的には、2000億フラン程度に減額はされるでしょう」


「交渉で誠意を見せた格好に持って行くのだな」


「誠意を見せるふりも必要なことですので。フランス海軍の艦艇はいかがなさいましょう?」


「あまり欲をかきすぎると、フランス海軍がアフリカの植民地に逃げ出して抵抗を続けるかも知れぬ」


「本国を失ってまで、抵抗を続けるでしょうか?」


「ヘス君、可能性の問題だよ」


「では、総統はフランスから賠償艦を取らないとおっしゃるのですね?」


「海軍自体の制限はさせてもらうが、艦艇の引き渡しは必要ない」


「レーダー元帥を筆頭に海軍がむくれそうではありますが」


「我が国の海軍は貧弱だからな」


「ノルウェー相手に艦艇を損失させ過ぎましたよ」


「まったくだ。不甲斐ない」


「海軍はUボートしか仕事をしてないも同然でしたね」


「うむ。しかし、フランス海軍に対して艦艇の引き渡しを強行すれば、先の大戦後に我が国の海軍がスカパ・フローで自沈した二の舞になるやも知れん」


「そうなるよりも、誠意を見せてフランスに譲歩してあげるということでしたか」


「鞭だけでは、フランスも反発するだろうしな」


「我が国に対するベルサイユ条約は、鞭だけのような気もしましたが?」


「だからこそ、我が党が政権を奪取できたともいえるのだがな」


「それもそうでしたね」




 ※※※※※※




 アメリカ ワシントンD.C.



「戦争で殺し合うよりも、オリンピックで競い合いましょう、か。うむ、正論ではあるな」


「ぐうの音も出ないほどの正論でしたね」


「しかし、ここで講和を締結されてしまったら、イギリスやフランスから軍用機の受注が途切れてしまう」


「ドイツに敗北寸前のフランスの分はキャンセルされそうですがね」


「せっかく稼働し始めた工場が、また埃を被ってしまうではないか」


「また失業者が増えてしまいますね」


「失業者が増えるのは困るぞ。秋の大統領選挙に影響が出かねない」


「やはり、三選を目指すのですか?」


「私以外ではナチスドイツの脅威から、我がステイツを守れないと確信した次第である」


「しかし、大統領の任期が二期までというのは、過去に三期目の出馬を拒否した、初代大統領であるワシントン以来の伝統ですぞ」


「だが、合衆国憲法で三期目が禁止されている訳ではないぞ?」


「大統領閣下も、慣例という言葉をご存知でありましょう」


「そうえいば、ハル、君も指名選挙には立候補する予定であったな?」


「そのつもりではあります」


「君で、あのサボテン・ジャックに勝てるのかね?」


「それは……」


「仮に指名選挙でサボテン・ジャックやファーリーに勝てたとしても、本選では…… 共和党は混戦で誰が出てくるのか不明であったな」


「ウィルキーの人気が上昇していますけど、欧州に平和が戻れば、タフトジュニアか若造のデューイではないでしょうか?」


「どうにかして講和を壊せないものかね?」


「難しい注文ですね……」


「欧州が平和になってしまえば、私の三選が厳しくなってしまうではないか!」


「大統領閣下……」


「平甲板型の駆逐艦50隻と、カリブ海の租借権を交換する話も無かったことにされてしまう」


「カリブ海のイギリス権益を奪うチャンスではありましたね」


「我が国が戦争に巻き込まれるのは困るが、ヨーロッパという対岸でドンパチと戦争をしてくれる分には、合衆国経済にとってはプラスなのだから、経済界が戦争の継続を望んだとしても、それは仕方なかろう」


「国益の観点から見れば、それも正論ではありますな」


「うむ、プリンセス藤宮の言うことも正しいのだが、正義とは多面的な側面を併せ持つものでもあるのだからな」


「ドイツの目をソ連に向けさせてみますか?」


「それで、どっちを支援すれば良いのだ?」


「頭を下げてくれば、両陣営に売ってもよいのでは?」


「まるで、ジョンブル顔負けの死の商人だな」


「それが経済界のオーダーですので」


「そうであったな。合衆国の生産力は市場を欲しているのだからな」


「金の前では、イデオロギーは二の次みたいですね」


「それが資本主義というモノだよ」


「とにかく、失業者を減らさなければ、国内の治安も悪くなりますので、他国同士の戦争を歓迎するのも仕方ありませんか」


「綺麗事だけでは政治は務まらんということだよ」


「つくづく政治家とは、因果な商売だと思わされます」


「まったくだ…… プリンセス藤宮のような優しい心根を持った人間が眩しく見えてくるよ」


「それは大統領閣下がアレげだから、余計とじゃないですかね?」


「ハル君、なにか言ったかね?」


「いえ、閣下の気のせいですよ」



ソ連の反応は粛清されました…

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