70話 桜子ですけど、ロダってます。
残暑が厳しいから所用は中止!
1940年5月16日 東京 秩父宮邸
【ドイツ軍がロッテルダムを無差別爆撃! 市街地の三割が消失!】
あー、ついに無差別都市爆撃をやっちゃいましたか……
あれ? 市街地の消失は三割でとどまったの?
でも、前世の史実ではこの爆撃によってロッテルダムは、ほぼ壊滅しちゃったような記憶があるのですけど、違ったかな?
それで、イギリスも報復としてドイツへの爆撃をしたはずでしたよね?
まあ、そこまで私も詳しくは覚えていないので、私の記憶違いの可能性もあるのですけど。
ちなみに、我が大日本帝国は、重慶を爆撃していませんので、綺麗な日本軍のままであります!
日中戦争も起こっていませんし、未来の中国人から恨まれる度合いもかなり低くなりそうかな?
……低くなるよね?
日本が恨まれないように、中華を共食いさせ続けなければ!
ついでに、各軍閥に武器を売りさばいて、代わりにバーターで資源を貰うのです。
中国大陸の各地に跳梁跋扈する軍閥は日本から武器を手に入れられてハッピー!
日本も軍閥から資源をもらえてハッピー!
これぞ市場経済におけるwin-winの良好な関係と言えるのではないでしょうか?
これは、日本の国策、国是とも言えましょう。
だから中華は、夷を以て夷を制すじゃなくて、中華という蟲毒の中で永遠に争っていて下さいませ。
切実に、そう願います……
なんで日本を大陸という泥沼に、わざわざ引き込もうとするのかなぁ。
これからの日本は小日本主義で生きていくんだい!
【義勇兵としてイギリスに渡っている元帝国軍人がロッテルダム上空で孤軍奮闘! 現地からの目撃情報では、ハインケル爆撃機を数十機撃墜したとのこと!】
なるほど、ロッテルダムが壊滅しなかった理由はコレでしたか。
でも、よくもまあオランダの防衛のために出撃を許可したよなとか思わなくもない。
といいますか、爆撃機を数十機も撃墜しただなんて、ルフトバッフェは爆撃機に護衛の戦闘機を付けてなかったのでしょうかね?
しかしこれで、イギリスに日本の義勇兵がいることが、正式にドイツに知れ渡ってしまったということですね。
ドイツ在住の日本人に被害が及ばなければいいのですが……
最悪、ドイツからの在留邦人の引き上げも検討しなければなりませんね。
困った時は、お父様に相談しましょう♪
「藤宮様、そんなにしかめっ面して新聞を読んでいますと痕が残っちゃいますよ」
「そんなにも、しかめっ面してたかな?」
でも、欧州では二度目の世界大戦が始まっているから、欧州の戦況が気になって、しかめっ面になるのも仕方ないんだよ。
最新の情報でも日本の新聞に載るには、現地で事が起こってから最低でも一日遅れだし、戦場での情報だったら三日遅れとかザラですしね。
政府や軍が隠したい情報の場合ですと、表に出て来ない場合もありますしね。
つまり、情報というのは、眉に唾を付けて吟味するぐらいが、ちょうど良いのかも知れません。
まあ、私の発する言葉で右に倣えをしてくれる日本人も、それはそれで扱いやすくていいのですがね!
そうか、権力者や為政者というのは、この市井の人々が右に倣えをしてくれるがために、感覚が徐々に麻痺していくんだな。
つまり、権力者に右に倣えというのは、遅効性の毒に似ているのかも知れません。
でも、この時代の日本人って右に倣えも大好きだけど、過激なことも大好きだったような気がしますよね?
軍人のクーデターから、要人の暗殺や、庶民の焼き討ちや打ち壊しまで、物騒な事件も多々ありますもんね。
なんという、二律背反。いや、この場合は二重人格や多重人格に近いのかな?
戦前の日本人の性格、怖いです……
史実の戦後では、よくもまあ牙を抜かれて大人しくなれたものだと思いますよ。
さすがに、焼け野原にされたら、戦争はこりごりだと大人しくもなるのかな?
つまり人間とは、自分が経験をしてみないことには、学べないという愚かな生き物なのかも知れませんね。
しかし、賢者は歴史から学ぶとかとも言うんだぞ。
まあ、これだけ戦争形態が様変わりしてしまうと、あまり歴史からは学べなさそうな気もしないでもありませんので、多少は同情の余地も残されてはいるのでしょうが。
でも、内政に経済や外交とかは、歴史から学べますので、やはり日露戦争か第一次世界大戦以後に日本が取った道筋というのは、あまり褒められたモノではない気がしますね。
まあ、これも帝国主義真っ盛りの時代だったので、同情の余地はあるのですけれども。
日本が虚勢を張らなければ、欧米列強に舐められてしまいますもんね。
本当に、世知辛い時代だと思います。
欧米列強の強欲さが、一番悪いことにしておきましょう。
あれ? ということはですね……
帝国主義→植民地主義→資本主義となるのか?
資本主義が悪いですと!?
うーん、資本主義って共産主義をあまり馬鹿にできない気がしてきたぞ。
それでも、共産主義に比べたら、まだマシだと思いますので、大多数の国では資本主義を採用しているのですしね。
つまり、人間の飽くなき欲望を制御して、それにどう付き合っていくのか? そういう哲学的な問題にぶち当たるのだと思います。
まったくもって、馬鹿な人間のほうが幸せだとは、よく言ったモノだよ。
私みたいに中途半端に小賢しい人間が、思い悩んで苦労するんだろうなぁ。
オマケに私が出しゃばってしまったから、これから先の未来が見えなくなってしまいましたし……
こうなったら、国家資本主義か官僚型計画経済、官僚型社会主義、日本式護送船団方式を打ち立てるしかない!
ケインズも社会主義的な公共投資ですしね。
馬面の革新官僚ってドコに居るのでしょうか?
でも、官僚型社会主義だと、アメリカとイギリスの反感を買いそうですよね……?
欧米列強は敵に回せないのだから、ダメじゃん!
「……藤宮様? ふ じ の み や さ ま!」
「ふぇ!? 夏子さん呼んだ?」
「ええ、呼びました。うんうんと唸って眉間にしわを寄せたりして、考え込んでいましたよ」
「揉みほぐしておく……」
どうやら、ソファに浅く腰掛けてテーブルに新聞を広げて読んでいたから、ロダンの考える人みたいになっていたみたいでしたね。
人間は考える葦である!
これは、別人のセリフでしたか……
でも、ロダンの考える人と考える葦のイメージが、ピッタリと当て嵌まってしまうのは私だけでしょうかね?
いいえ、おそらくは、私以外にも大勢いるはずだと思います。
「ご両親が心配なさいますので、殿下と妃殿下の前では猫を被っていて下さいませ」
「わかった。気を付けるよ」
次話は未定…




