↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/92

69話 とある義勇航空兵の物語

誰が誰とか考えてはいけない。心の眼で読むのだ!


 1940年5月14日 イギリス 東サフォーク州 ウッドブリッジ飛行場



「オランダが手酷く叩かれているようだな」


「ベルギーも叩かれていますよ」


「その次はフランスが叩かれるな」


「フランスではドイツの勢いは止められませんか?」


「おそらくは無理だろうなぁ」


「マジノ線で食い止められませんかね?」


「ベルギーを通ってくるならば、マジノ線は迂回されたということだろ?」


「それでは、マジノ線は全然役に立ってませんね」


「マジノ線はドイツと直接国境を接している場所にあるからなぁ」


「なんでフランスはマジノ線なんか作ったんだろ?」


「ドイツ軍をベルギー方面に誘導したかったんじゃね?」


「ああ、なるほど。ドイツ軍の進撃経路が絞れれば、それだけ迎撃もしやすくなりますか」


「ベルギーにとってみれば、いい迷惑だと思うがな」


「確か、ベルギーは道路にあらずでしたっけ?」


「ベルギーの前国王の言葉だったか?」


「アルベール一世ですね」


「名言だとは思うが、ドイツ軍から見ればベルギーは道路だよ」


「そうかも知れませんけど、それって身も蓋もない言い方ですよね」


「俺は事実を客観的に言ったまでだよ」


「隊長ってば、血も涙もない……」


「軍人は常に冷静沈着でなければならん」


「まあ、そうでなくては戦場では早死にしそうな気はしますが」


「敵を前にして逡巡すれば、先に敵に撃たれるからな」


「見敵必殺の精神ですね!」


「その通りだ。もっとも海軍さんの真似は、あまり好かんけどな」


「即断即決や猪突猛進とかはどうでしょうか?」


「即断即決はともかく、猪突猛進では猪武者と馬鹿にされるのがオチだぞ」


「あはは、違いない!」


「貴様、先任を笑うとは、いい度胸をしているじゃねえか? お前の後ろは守ってやらんぞ」


「いや、先輩が勇敢にも敵に突撃して行く姿が想像できてしまいまして」


「勇敢?」


「はい、先輩にぴったりの言葉だとは思いませんか?」


「ま、まあな! 仕方がないから、これからもお前の後ろを守ってやるよ!」


「はっ! ありがたき幸せであります!」



「先任ってチョロいよな……」


「ああ、西松じゃなくてチョロ松だな」


「それに、アイツの後ろを守ってたら、先任が勇敢に前へと出られないの気づいてないし」


「やっぱり先任はどこか抜けていますよね……」


「腕はピカイチなんだけどな」


「西松は動物的本能に全部持って行かれちゃったんだよ」


「技量と頭の良さは比例しない典型の男だからな」


「あはは、違いない!」


「隊長、連絡士官から情報を仕入れてきました」


「新しいニュースはあったか?」


「連絡士官の話では、オランダ軍の無線を傍受した結果によりますと、どうやらオランダが降伏しない場合にはロッテルダムを爆撃すると、ドイツが脅しているみたいです!」


「ロッテルダムか……」


「ここウッドブリッジから飛び立てば、三十分と掛からない距離ですね」


「立川から浜松に飛ぶ距離と同じぐらいか」


「そう考えると、欧州って狭いですよね」


「日本列島が細長いだけの気もするがな」


「それよりも、ロッテルダムはどうします? みすみす爆撃されるのを指を咥えて対岸から眺めているのも、それはそれで寝覚めが悪い気もしますが」


「指呼の距離だもんなぁ。傍観するのは気が引けるぞ」


「うん、見捨てられて右往左往するオランダ人から逆恨みされそうではあるわな」


「さまよえるオランダ人ってヤツか?」


「それは意味が違う気がしますね」


「しかし、勝手に出撃をすれば、イギリス空軍が文句を言ってきませんかね?」


「俺たちは義勇兵だ。ドイツと戦争に突入したオランダも守るべき仲間になったとの解釈も成り立つ」


「それは拡大解釈だと思いますが?」


「イギリス空軍の指揮命令系統とは違うとでも言い返しとけばいい」


「どうなっても知りませんよ」


「義勇兵というのは便利な言葉だよな」


「それよりも偵察の名目で出撃して、偶然、ドイツ空軍と鉢合わせたことにすればいいんですよ」


「おまえ冴えてるな! よし、それで行こう!」


「ルフトバッフェのお手並みを拝見できるのか」


「ワクワクしてきますよね!」


「遊びに行くんじゃないんだぞ? もう少し気を引き締めねば食われるぞ」


「やはりドイツ空軍は、露助とは違いますか?」


「ドイツは技術大国だから、戦闘機の性能も優れていると考えるのが常識だ」


「露助と一緒にしたら、ドイツ人に失礼だろ」


「といいますか、この九八式ってドイツの工作機械で作っているんですよ?」


「あー、そういえば、そんな話をチラッと聞いたことがあるな」


「設計は中島ですけどね」


「仮に日本製の工作機械で九八式を作ったらどうなるんだ?」


「頑張っても一割から一割五分は性能が低下するでしょうね」


「一割以上の性能低下は厳しいな……」


「あと間違いなく稼働率も落ちると思うぞ」


「九八式の性能はドイツ様々ってことか」


「そう考えると、ドイツ空軍が侮れない相手というのが理解できるだろう」


「九八式の性能を見せつけて、我が国に工作機械を売ったことをドイツに後悔させてやりましょう!」


「大日本帝国陸軍航空隊ここにありと宣伝しなければな!」


「それ無理だから」


「ああ、無理だな」


「なんでさ?」


「だって、この九八式も一応は、蛇の目マークじゃん」


「……」



「やっぱ先任は抜けていましたね」


「まあ、アイツらしいといえばそれまでだけどな」


今週は所用で、たぶん更新できないと思います…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。