53話 We must be…
ダンツィヒか戦争か?
1939年9月2日 東京 秩父宮邸
【ドイツがポーランドに侵攻! 欧州大戦へと発展か?】
第二次世界大戦キター!
さて、ドイツ第三帝国の終わりの始まりということですね。バトルオブブリテンまでは、精々、欧州の覇権を、我が世の春を謳歌していてください。でも、戦争って勝ち逃げが非常に難しいのですよね。
戦争を終結せるのが難しいともいいます。
といいますか、人類史上最悪の、地獄の釜の蓋が開いたのだから、戦争キター! なんて、無邪気に喜んではいられなかったのでしたね。
ある人曰く、『人が死んでんねんで』こんな感じでしょうか? まったくもって、おっしゃる通りであって正論であります。
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ。とは、まったくもって、その通りなのだと思います。
だから、いたずらに首を突っ込んではならないのですけど、日本の立ち位置的には、中立は許されないのでしょうね。
だから、勝つ方に付く。勝ち馬に乗るのは処世術の初歩ですしね!
【日本政府は、ドイツのポーランド侵攻は、パリ不戦条約に違反すると、ドイツを非難!】
お前が言うなとか、ドイツに文句を言われそうですけど、自分のことは棚に上げてこそ、それが、国際政治というモノなのですから。お前が言うなは、欧米列強の十八番ともいいます。
日本は真似っ子だから、欧米列強の真似をしただけなんだよ!
まあそれでも、この早い段階で、ドイツを非難したことには、意味があると思います。後々の国際社会では、評価されるべき項目となるはずでしょうし。
9月3日
【英仏はドイツに対して最後通牒! ドイツ軍のポーランド領内からの撤退を要求!】
もう既に、イギリスとフランスも腹は括っているのでしょうから、これは、国際社会のルールに則って、ちゃんとした手順を踏んでいるという儀式にしかすぎませんよね。
事ここに至って、ドイツがポーランドから兵を退くなんて考えられませんし。
【イタリアが中立を表明!】
へー、イタリアって、この時点では中立を表明してたのね。まだ、ドイツの勢いが本物なのか定かではないから、見極めようという腹積もりなのでしょうか?
んで、来年にフランスがあっけなく負けそうになってから、慌ててドイツの勝ち馬に乗ろうとして、英仏連合国に宣戦布告したのでしたね。
でも、フランスに返り討ちに遭ったような気がしたのですけど、私の気のせいでしたかね?
まあ、イタリアですから、仕方ないのでしょうね。
【日本政府は、ドイツの防共協定違反によって協定は形骸化したとして、防共協定の破棄をドイツに通告!】
これです。これを待っていた! これで、日本は気兼ねなくイギリス寄りの立場を、鮮明に打ち出すことができるというものです。
まあ、いきなりドイツに宣戦布告するのではなくて、イギリス寄りの中立という表明なのですがね。
来年には、オリンピックも控えていることですし、日本は参戦できないのですよ。
といいますか、オリンピックは中止にならずに、無事に開催することができるのでしょうか? 少し不安になってきました。
9月4日
【英仏豪新印がドイツに対して宣戦を布告!】
第二次世界大戦キター!
ここからが、本当の第二次世界大戦の始まりの、ゴングが鳴ったといって正解なのでしょうね。
もっとも、連合国も枢軸国も来年の春までは、ドイツとフランスの国境で睨み合ったまま、両陣営ともに、ファニーウォーを決め込むのでしょうけどさ。
それにしても、カナダと南アフリカが入ってませんね。どうしたのでしょうか? まだ、ドイツに宣戦布告する手続きの最中なのかも知れませんね。
【アメリカ合衆国が中立を表明!】
まあ、アメリカがこの段階でいきなり参戦なんかすれば、それはそれで怖い気がしますし、モンロー主義の引き籠もりで良かったのかな?
支那に対しての干渉は、少しづつ強めてはいるみたいですが。日本がとばっちりで、巻き添えを喰らわないように気を付けねばなりません。
【我が大日本帝国も、欧州での戦争に中立を表明!】
へー、日本も中立を表明したんだ。それにしても、中立を表明した国々は、その後こぞって参戦しているのですけど、中立って言葉は一体全体なんなんでしょうかね?
その場しのぎの、時間稼ぎの方便ですかそうですか。
9月5日
【英客船アセニア号、アイルランド沖でドイツの潜水艦に撃沈される!】
おー、なんてこったい! ルシタニア号の悪夢ふたたびといったところでしょうか? しかし、ドイツがいきなり警告も無しに、無制限潜水艦作戦をしてくるとは思いもしませんでしたよ。
もしかしたら、戦闘艦艇と間違えて撃沈してしまったのかも知れませんけど、撃沈された側のイギリスからしてみれば、そんな言い訳は通用しないでしょうしね。
これから日本も、ブリテン島に支援物資を輸送しますので、ドイツには釘を刺しておかねばなりません。
え? 中立法違反じゃないかですって?
世の中には、建前という言葉がありましてね…… 戦車を農業用トラクターと言い張ったら、それが通用したりもするのが国際社会というモノなのですよ。世の中には、不思議が満ち溢れていますよね?
さて、言の葉は剣よりも強しというところを示さねば。
『大日本てい国しんみんのみなさま、こんばんは。ふじのみやさくらこでございます。今日はみなさんに、かなしいおしらせをしなければなりません。
民間人しかのっていないはずの、イギリスのアセニア号という船が、ドイツのUボートによってしずめられてしまい、多くの人が亡くなりました。
ドイツのせん水かんにげきちんされた、アセニア号にのっていて亡くなられた、じょういんじょうきゃくのみなさんに、あいとうのまことをささげます。
しかし、かなしいことですけど、せんそうは、人が死にます。でも、死ぬのが兵たいさんですらない、民間人であっていいわけがありません。亡くなられた方の中には、わたしと同じぐらいの、年の子どももいたかも知れませんよね?
ドイツの人々に問いたい。子どもは兵たいさんなのでしょうか? あなたの息子さんや娘さんが、むじひに殺されてしまったとそうぞうしてみてください。きっとゆるせないと思うのです。
だから、ドイツのヒトラーそうとうにおねがいします。民間の船をこうげきするのは、止めてください。
アセニア号をだほするならまだしも、げきちんするこのドイツの行いは、ハーグじょうやくの海せんほうきいはんだと、ふじのみやさくらこは、そう思います。
わたくしこと、ふじのみやさくらこは、ドイツのヒトラーそうとうにたいして、せんそうのそく時ていせんをよびかけます。せんそうからは、なにも生み出しません。ただ、はかいがあるのみだと思います。
このねがいが聞きとどけられなかった場合には、わが大日本てい国は、みんしゅしゅぎを守るための、小さなしえん工場になることでしょう。
We must be the small arsenal of democracy
いじょう、ふじのみやさくらこからのおしらせでした』
『藤宮桜子内親王殿下からのメッセージをお伝えしました。時刻はまもなく、午後七時になります。こちらはJ-AK、日本放送協会東京第一放送です』
うむ。ルーズベルトの台詞をパクってしまった気もしますけど、気にしないでおきましょう。
世の中、先に言った者の勝ちであります!
それに、ここまで言っておけば、民主主義や正義といった言葉が、大好きなアメリカ人にとっては、強烈な抑止力になる気がしますね。民主主義を守ると宣言した日本をアメリカが攻撃でもすれば、それは民主主義の否定に繋がるのですから。
仮に、ルーズベルトが日本を殴りたくても、おそらくは、アメリカの世論がそれを許さないでしょうね。
これで、保険としての価値も成立したのであります。
もっとも、民主主義も、全体主義や共産主義に比べて、多少マシな程度の政治形態でしかない気もしますがね!
困りましたね……




