42話 寛容とはなにか?
1939年2月
【スペイン内戦、フランコ派がバルセロナを占領! 共和派は崩壊寸前か?】
どうやら、スペイン内戦は史実と似たような結果になりそうですね。hoiのバニラだと、共和派が勝つことの方が多かったのですが。まあ、あれは所詮ゲームであって、なおかつ、バグがあったからなのですけれどね!
【ノーベル物理学賞受賞の、エンリコ・フェルミ博士来日!】
ふぁっ!?
なんで、エンリコ・フェルミが日本に来るんだ? 私が勧誘の手紙を書いた時には、丁重にお断りの返信が届いたのに、なんでだ?
てっきり、エンリコ・フェルミは、アメリカに行くものだとばかり思ってましたので、なんの受け入れ準備もしてないのですけど?
まあ、フェルミ博士の来日の動機はともかくとして、日本に留まる気があるのでしたら、それ相応のポストを用意して遇せねばなりませんね。なんといっても、天下のノーベル物理学賞受賞博士なのですから!
それにしても、フェルミ博士が日本に留まってくれるのであれば、これで、アメリカの原子爆弾開発は、一年以上遅れるのは確実な見込みでしょう。
史実では、オットー・ハーンが核分裂反応を成功させたけど、本人は核分裂だと思ってなかったみたいなので、愛げふんげふん、友人であるマイトナー博士に手紙で意見を求めて、初めて核分裂反応が世界に公表されたのです。
ですが、そのマイトナー博士は日本に居ます。ですから、この世界線では、オットー・ハーンがマイトナー博士に手紙を出すかどうかは微妙な気がしますね。
あと、オットー・フリッシュも日本に居るのですから、フリッシュ=パイエルスの覚書がイギリスで提出される可能性もなくなっていたのでしたね。
もっとも、ルドルフ・パイエルスが単独か、オットー・フリッシュではない別の科学者と共同で、似たような論文といいますか、メモを提出する可能性は否定できないのですが。
でも、フリッシュ=パイエルスの覚書がないと、モード委員会の設立もありませんし、イギリスの原子爆弾開発計画も、かなり遅れる気がしますね。イギリスの開発が遅れれば、それがスライドして、アメリカの原爆開発も遅れるのです。
そう、意外に思うかも知れませんけど、原爆の初期の開発はイギリスとドイツの方が、アメリカよりも先行して研究が進んでいたのです。
アメリカのマンハッタン計画は、イギリスからの技術を引き継いで行われていたのですから。そう考えると、アメリカの原子爆弾開発は、下手をしたら二年か三年は遅れるかも知れませんね。
その方が、日本にとっては好都合なのですから、万々歳ではあるのです。
なんにせよ、核分裂や原子爆弾開発のキーになる人物が、三人も日本に居るのですから、もしかしたら、日本の方が原爆を先に作れる可能性も、雀の涙程度にはありそうな気がしてきましたよ。
ちなみに、エンリコとエリコンって紛らわしいと思いませんか? 私はフェルミ博士のおかげで、エリコンのことをエンリコだと勘違いしていたんですよ……
謝罪と賠償を要求する!
【英仏がスペインのフランコ政権を承認!】
遅まきながらも、ようやく、イギリスとフランスも、渋々フランコを認めたといったところでしょうか? もう既に、スペインの人民戦線内閣は政府の体を成してなかったのだから、外交チャンネルの切り替えは必要ですよね。
これで、完全に共和派が巻き返す余地がなくなりましたね。
1939年3月
【チェコスロバキアから、スロバキアが分離独立を宣言! チェコスロバキアは崩壊か?】
スロバキアにドイツの傀儡である、ティソ政権が誕生しましたか。ハンガリーにスロバキアを食べさせて同盟を結ぶプランや、ドイツが併合して直接統治するプランは却下されてしまいましたか。
といいますか、そんなプランが実際にあったのかな? 疑問に感じますね。
【カルパチア・ルテニアは、カルパト・ウクライナ共和国と宣言!】
欧州って、小国乱立が好きな気がしますね。ウクライナと命名するぐらいなのですから、カルパチア・ルテニアに住む住民の大部分は、ウクライナ人なのかな?
でも、あそこって、カルパティア山脈によって、ウクライナの平野とは分断されていますよね? もしかしたら、山を越えて移住してきたのかも知れませんね。まあ、どうでもいいや。
【ハンガリー軍が、カルパト・ウクライナに侵攻!】
元々、ハンガリーが領土の割譲を要求していた地域ですし、ハンガリーからしてみたら、侵攻に大義名分があるのでしょうね。他国からみたら、?マークが付くのかも知れませんが。
でも、元々は、オーストリア・ハンガリー二重帝国の土地でしたし、ハンガリーにとっては、故地の奪還になるのでしょう。
【ドイツがチェコを保護国化! チェコを事実上の併合!】
大変です! チェコスロバキアが息をしてないの! 残念ながらも、チェコはお亡くなりになりました。
ハーハさんは、無理矢理にでも生き返らされましたけど。ナチスドイツの蘇生技術は世界いちぃぃぃ! といいますか、もう既にナチスはオカルトを極めていたのかよ……
まあ、チェコの死亡期間も、僅か6~7年の休眠期間のはずで、不死鳥のごとく復活するはずなんですがね。
……そうなるよね?
【カルパト・ウクライナが三日で消滅! ハンガリーが併合!】
ちーん。ご愁傷様でした。あ、カルパト・ウクライナが発行した切手は、記念のために後で貰いに行きますから!
もっとも、その切手は結構出回っているみたいなので、あまり希少価値はないみたいなのが、些か残念ではありますけど。
【チェンバレン英首相が、チェコ併合は無効だとし、ドイツを激しく非難!】
まあそうなるわな。あの、ミュンヘン協定の紙切れだか英独海軍協定の紙切れだかを、得意満面の笑顔で振りかざしたチェンバレンは、顔に泥を塗られたのですからね。
ミュンヘン会談で約束した、これ以上、ドイツは領土拡張政策は取らないという協定を反故にされたのですし、そりゃあ、普段温厚?な英国紳士でも、さすがに怒りますわな。
さて、日本もイギリスに同調して、ドイツを非難する声明でも出しましょうかね。
また、私の精神をガリガリと削ることになりそうなのが、玉に瑕ではありますけど……
『ドイツのチェコほごこくかは、じっしつてきには、へいごうであって、めいかくなしんりゃくこういだと、ふじのみやさくらこは、そうおもうのです。
チェンバレンさんがおこるのもむりはありません。この、ドイツのこういにたいして、こくさいしゃかいのみなさんは、いかがおもいますか?
また、人しゅやしゅうきょうによって、人をさべつするのは、よくないとおもいます。
わたしは、おととしイギリスをほうもんして、人しゅもしゅうきょうもちがうローズと、かけがえのないおともだちになりました。
ヴィクトリア女王のじだいに、ベンジャミン・ディズレーリという人が、イギリスのプライムミニスターでした。この人はユダヤ人でした。
これは、イギリスという国の、かんようさ、ふところのふかさを、あらわしているのだと、ふじのみやさくらこは、そうおもいます。
だから、人と人はわかりあえるのだとおもいます。あらそいからは、にくしみいがいは、なにもうみません。
かの、てつがくしゃ、ヴォルテールはいいました。かんようとはなにか? それは人のりょうしんである、と。また、人とはすべからく、けってんやあやまちをもっているのだから、と。そういいました。
つまり、かんよう、ゆうあい、はくあい、このせいしんが大せつだと、ふじのみやさくらこは、おもいます!』
長文は目が滑るじゃなくて、長文を喋るのは疲れる……
『藤宮桜子内親王殿下からのメッセージをお伝えしました。時刻はまもなく、午後七時になります。こちらはJ-AK、日本放送協会東京第一放送です』
うん。ピエロの役を演じ切ったよ…… 私、頑張った。
これはきっと、イギリスへの援護射撃にもなったことでしょう。けして、背後からの一撃では、断じてない!
これで、今年のノーベル平和賞は、桜子ちゃんが当確であります!
でも、私の本心がどれだけ入っているのかは、内緒です。最大級の国家機密なのであります。
嘘で塗り固めた美辞麗句や笑顔って、素敵だと思いませんか?
嘘も百回吐き通せば、誠になるんやで。
自由個人主義なんてクソ喰らえです。AoDのイギリスプレイ時には、真っ先に国策変更してましたしね! ケインズさんは神! 次点で、ヘンリー・フォードさんですね。
自由の庇護者、自由経済重視、個人主義的起業文化。この、三点セットが最強ですしね! つまり、アメリカ合衆国の価値観、社会政策、文化が、世界の覇道には有利ということになります。
国際協調的世界観? リベラル? 寛容さ? 福祉重視? はははっ、ナイスジョークですね! そんなモノは、アカのおフェラ豚にでも食わせてしまえば良いのです。
そんなもんでは、この殺伐とした時代は乗り切れないのですよ。
いかん、これでは、ゲーム脳に染まっていると白状したも同然じゃないですかー。
目も自然に笑えるように、練習しておかなければ……




