水晶
昔、とある銀河の天の川のほとりで、カレロは中心が赤く熱く業火のように燃え上がっている水晶の玉を拾いました。触っても熱くはない。だけれども、何か心にはその熱さが伝わってくるような気がしていました。
カレロは気になりました。もし今この天の川にこの水晶をつければどうなるのか。
恐る恐る水晶をつけてみました。しかし業火は消えるようなそぶりも見せませんでした。カレロは少し安心しました。
大事そうに抱きかかえてカレロは家にその水晶を持って帰りました。そしてお母様、お母様、と台所に急いでゆっくりと持っていきました。
「お母様、ご覧。とても綺麗な水晶を川で拾いました。僕はこれを大事にします。どうですか、こんなに燃えている。なぜか心まで燃えてくるようです。」
「まぁ、なんて赤々とした水晶でしょう。美しいですね。大事に大事にしなさい。そうだ、お母さんがこしらえた、ケンタウルスの皮でこしらえた巾着袋がありますのでそれに入れておきなさい。」
「いいのですか。ありがとうございます。」
「お父さんが帰ってきたら水晶の磨き方を教えてもらいなさい。きっといっそう輝きを増して美しくなるわ」
「そうします。お母様、ありがとうございます。」
その夜。カレロのお父さんは夜遅くまでお仕事が続いたので、帰ってきた頃にはカレロは眠ってしまっていました。お母さんからお話を聞いたお父さんはそうか、そうか、とうなずいてソファで眠ってしまったカレロの頭をそっと優しく撫でました。カレロに抱きかかえられた水晶は赤々と燃え上がっていました。
翌日。お父さんはお仕事が休みだったので朝から水晶磨きの道具を納屋から持ってきていました。カレロは眠たい目を擦りながら水晶を抱えてベッドから起きてきました。
「お父様。昨日は遅かったのですね。待っていたのですが眠ってしまいました。」
「すまなかったな。星雲が上手く流れなかったのだ。一つ一つ丁寧に整えたのだけれども、やはり難しいものさ。」
「今日はお休みですか。」
「あぁお休みだとも。けれども明日はしし座の流星群がこぼれる夜だからね。遅くなってしまいそうだよ。」
「では今日のうちに水晶の磨き方を教えてくださいね。僕はすぐにできるようになると思います。」
「そうかいそうかい。ではまずクジャクの羽で水晶を払うんだ。そうしたら次はこのこの水で磨いてごらん。輝くよ。」
「この水はいったい何なのですか?」
「これは水瓶座の足下にある湖から汲んできた水だよ。」
「わぁお父様。ご覧、とっても輝いてきましたよ。」
「それは良かった。」
カレロはそれから毎日毎日水晶を磨いていました。しかしいつ頃からか中の業火は小さくなっているような気がしていました。